ネカフェに呼び出され……
──明後日、ネカフェ内ドリンクバー前
「あ、やっぱりジュンさんだ~。どうしたんですか~?」
「──! ユキさんに呼ばれて来たんじゃん! 何を偶然出会った事にしようとしてるのさ!」
「え~、私は友達との待ち合わせで時間潰しにここに来たんですよ~」
「……あくまでも偶然出会った事にしたいのね。分かったよ、合わせるよ。──へぇ、奇遇だね、俺もそうだよ。ちょっとお客さんが予定より遅れそうでね、2時間ほど時間潰す予定」
「という事は、2時間は暇なんですね。丁度良かった、私の部屋に来てくださいよ~」
「──は?」
「あ、部屋じゃなくてブースで話相手になって下さい。友達来るまででいいですから♪」
「ん? いいけど──話相手だったらネカフェの隣の喫茶店でもいく?」
「い~え、ネカフェの中がいーんです」
「いや、ネカフェのブース内でしゃべっていいの?」
「小さな声でなら大丈夫です。みんなそうしてますよ?」
「って、ブースって一人掛けのリクライニングシートじゃん。どうやって?」
「あ、私のブースはフラットシートですから大丈夫です♪」
「でも……狭くない?」
「大丈夫ですから来て下さい♬」
──ブース内
「──フラットシートのブースは初めて入ったけど、やっぱ2人じゃ狭いじゃん……」
「え~、そんな事ないですよ~。喫茶店の椅子より広いじゃないですか~」
「い、いや……普通喫茶店とかいったら隣に座らないし」
「今時の子はみ~んなネカフェ内でこうやって話してるんですって~」
「へ、へぇ……今の若い子はそうなんだ、初耳だよ」
「そうですよ~。あ、そうそう! ジュンさんにどうしても聞きたかった事、あるんですよ」
「──ん? 何?」
「あのトップモデルみたいな方とどんな関係なんですか?」
「えっと……誰?」
「ほら、例の! アタッシュケース持って来た──」
「──あぁ! 佳代さんの事ね。ビジネスパートナーだよ。かれこれ10年くらいの付き合いかなぁ」
「それだけ長い付き合いだったら、そろそろ結婚を考えているとか?」
「──! いや、違う違う。仕事上の付き合いで10年って事。そもそも佳代さんも結婚してるし、俺だって妻子持ちだし」
「──え? ジュンさん、結婚されてたんですか?」
「ん? そこまで驚く事じゃないと思うけど。俺、38歳だし、この年齢で結婚してるのは普通じゃない?」
「あ、いや──その通りなんですけど、ちょっと意外で……」
「ん? 何が?」
「あ、いえ……あのトップモデルみたいな人、佳代さんでしたっけ? 一緒にいる時、何かいい雰囲気だったので、そういう関係なのかな~って」
「何がいい雰囲気なのか分からんけど、ま……あんな取引してたからさぞかし緊張感は漂っていただろうね……」
「正直、あんなキレイな人と一緒に仕事して、変な気持ちになりません?」
「ん? どういう事?」
「いや~、付き合いたいとか不倫したいとか略奪愛したいとかないかな~って」
「ん~、そういう感情はよく分からないなぁ。仕事仲間だし、いわば手駒……これは言い方が悪いか。上手い言葉が見つからないけど、メリット見出せないしね」
「よく分からないですが……要するに商品に手を出さない、という事ですか?」
「まぁ、語弊ある気するけど、そうかな。ビジネスの世界ではこれが当たり前でしょ、多分」
「へぇ~、そういうものですか」
「矛盾する様だけど、そういう色恋は時に武器になるから、彼女を利用する事もあるし、その逆もあるかな。……ちょっと難しいか」
「女性好きな人には佳代さんを、逆のケースではジュンさんを、という事ですよね? 平たく言うと」
「そう! 結果的に成約に結びつくならどちらが契約とっても同じ事だし。お互い似たような考えだから、長い付き合いになっているんだろうね。恐らくリタイヤするまで変わらないだろうね」
「へぇ~、恐らく半分くらいの理解だと思いますが、何かいいですね、そういう関係。ちょっと憧れます」
「ユキさんだって、いずれ見つかるよ。望めば──ね」
「え~、ホントですか~? 私はちょっと思いつかないなぁ。一人のがラクですし、私より頭がキレると思った人、正直出会った事ないですし」
「ま、いずれ出会うんじゃない? 自分が認められる人。ま、正直恋人見つけるより大変かもだけどね」
「──え?」
「ほら、首元、キスマーク着いてるじゃん。昨日は彼氏とお楽しみだった?」
「!!! ちょ! ホントですか?(アセアセ)」
「wwwwww 嘘だって。カマかけただけ」
「!!! バカーー!!」
「wwwwww」