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ネカフェで偶然の再会

──10カ月後の9月中旬某日



──とあるネカフェのカップルシートの一席


「取りあえず人目に付かない場所という事で、ネカフェのカップルシートを選んでみましたが……場違い感半端ないですよね」

「私、初めてネットカフェという所に入りました。今の若者達はこういう所で逢引しているのですね。ちょっとイケナイ事しているみたいでドキドキしてきました♪」

「ま……ある意味イケナイ事しますけどね、これから……」

「──そうですね。じゃ、早速やりましょうか♪ ──では、こちらが報酬になります」

「あ、ありがとうございます。って、ホントにやるとは──シャレで報酬、手渡しで~といったらまさか佳代かよさんがノッてくるとは思いませんでしたよ」

「えぇ、冗談だとは理解していたのですが、実際にやったら面白いかな、という好奇心が勝ってしまいました。当たり前ですが、手渡しは今回が初めてですよ。……一度、やってみたかったんですよね♪ 本当はスクランブル交差点のど真ん中か駅のホームが理想だったのですけどね、ドラマのワンシーンみたいに♬」

「いや……それは流石にリスクありすぎですよ。ネカフェ内がギリギリですって……ここでも十分、何か凄い悪い取引している気分になりますよ。マフィアか何かの取引みたいで……」

「(クスッ) そうですね。せっかくですから、アタッシュケースの中を確認してみて下さい」

「はい──ぅお!(パタン) こ、これは……ホントにヤバイ取引している気分になりますね、中をみたら更に……」

「♪ その驚いた顔を見れただけで、わざわざ香港から来て報酬を手渡しにした甲斐がありました」

「いやぁ……緊張しますね。家に帰るまで、強盗に合わないかドキドキものですよ」

「大丈夫ですよ、誰もこのアタッシュケースにそんな大層なモノが入っているって分かりませんから。私なんて、これ持って空港から電車を乗り継いで来たのですよ♪」

「ま、仰る通りで。自分の場合、ここから駐車場までの間ですからね」

「──では、私はこれで失礼します。次の飛行機の便に乗りますので」

「……ホントにこの為だけにここまで来たんですね。何といっていいのやら──」

「十分価値ありましたよ♪ 現在の若者の文化にも触れる事出来ましたし、これだけの高揚感も味わえましたし、ジュンさんの驚く顔もみれましたので♬」

「ま、まぁ……自分も非常に希少な経験出来ました。ありがとうございました、でいいのかな?」

「どう致しまして♪ では、またお願いしますね。今度は──スクランブル交差点のど真ん中で♬」


──5分後


──フゥ~~~~

(何かどっと疲れたよ。まさかネカフェで報酬を手渡しとは……しかもよりにもよってこんな額の時とは……ま、ここなら誰にも見られないから、問題ないか──)


「(コンコン)あのー、ちょっといいですか?」

「(ビクッ!)は、はい?」

「(ガラ!)やっぱり! ジュンさんじゃないですか~。お久しぶりです、ユキです。分かりますよね♪ ここで……何をなさっていたんですか?」

「え? な、何もしてないよ……」

「またまた~、あ~んなキレイな女性とさっきまで一緒にいたじゃないですか~。彼女ですか? やりますね~」

「──って、ユ、ユキさん。な、何でここにいるの?」

「それはこっちの台詞ですよ~。何か聞いた事ある声だな~っと思ってそっと覗いてみたら、ジュンさんいるんですから」

「……」

「あ、大丈夫ですよ、ちょっとだけしか見てませんから♪ 2人のお楽しみなところはプライバシー侵害ですからね。ただ……ちょっと早くないです? あれじゃ彼女満足出来ないと思いますよ♪」

「──は?」

「いや~、ちょっと言いにくいんですが、部屋に入ってから20分くらいですよね。入ってすぐイチャイチャしたとしても、ちょっと早いんじゃないかな~って。ちゃんと前戯してます? 女心的にもうちょっと──」

「ち、違うって! ここで取引してたの! 人目に付いちゃいけない金額のやり取りだったから、ここが最適かなっ──」

「ふふふ、ひかかりましたね♪ 私はちゃ~んと聞く耳立ててましたから知ってましたよ♬」

「うっ──」

「それで、そのアタッシュケースに入っているのが……報酬なんですね。……見・せ・て・く・だ・さ・い♡」

「え……そ、それは──ダメだよ!」

「……叫びますよ! そうしたらどうなるか分かりますよね? (スゥーー)」(絶叫モード突入間近)

「ちょ、ちょっと! 中見せるから、叫ばないで。──ほら」

「ど~れ──!! な、何ですか、このお金……一体いくらあるんですか?」

「え? 確かxxxx万だったと思うけど……」

「これ……何のお金ですか?」

「え? だから報酬、先月分──あ、じゃなくって年しゅ──」

「先月分? って事は、これがジュンさんの一カ月の稼ぎ?! え~~、何これ~!? 年収でも驚く額ですよ、これ!」

「ちょ、あまり大声出さないで……」

「あ、ごめんなさい。あまりに驚いてしまって、つい……って、何が ”俺は稼げないFPだよ” ですか! アホみたいにメチャクチャ稼いでいるじゃないですか!!」

「あ、いや……た、たまたまに過ぎないから、先月なんて。普段はあまり稼いでないから……ね?」

「例の彼女、”またお願いしますね♪” って言ってたじゃないですか! わざわざ香港からこんなところに来るくらいジュンさんは重要な人って事ですよね!」

「……全部盗み聞きしてるし──」

「今まで色んな人に会って、それなりに成功している人を見てきましたが、ここまでそれを隠す人、初めて見ました」

「いや、別に自慢する事でもないし……チヤホヤされる云々は興味ない、というか嫌いだし。目立ってもいい事もないし──恨み買うだけだから、日本じゃ」

「そんなんじゃモテませんよ。少しくらいアピールしてもバチ当たらないと思いますよ」

「……興味ないかな」

「またまた~、愛人の1人や2人くらい、囲ってるんじゃありません? それだけ稼いでいたら」

「ん~、ホント興味ないかな。そんな時間あるんだったら、まだ占いとか現場に出ていた方が有意義かな」

「今日はもう私、これから用事あるので話出来ませんが、今度じぃっくり色々話聞かせてもらいますよ! いいですね!」

「え……よく分からない展開なんだけど……」

「明後日の同じ時間、またここに来て下さい! ドリンクバー前! 分かりましたね!」

「あ、あぁ……」

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