仕返し♪
──9月下旬某日
──カランコロン
「いらっしゃいませー。今日は現場の仕事じゃないんですね」
「あ、また会ったね。──あれ? 今日学校は?」
「今日は体育祭だったので、体調不良という事にして休んじゃいました♪ そろそろ上杉さん、来られるかな~って昨晩ふと思ったら、ズバリでした♬」
「まーた嬉しい事、言ってくれちゃって~。俺おだてても何も出ないよ、ほら、俺貧乏だし」
「そんなんじゃないですってば~。あ、今日は占いの仕事ですか?」
「あ、今日は勉強しようかな~って思ってね。──ほら」
「──! 微分・積分のチャート式? えっと……何で?」
「ちょっと大学受験しようかな~って思って──というのは嘘で、家庭教師の仕事が入ったから、ちょっと、ね」
「え? 家庭教師までやってるんですか?」
「たま~に、ね。週1で2時間5000円。時給自体は悪くないけど、事前の予習とかしなくちゃいけないから、実質的にかなり大変だよ」
「……ホント、何でもやるんですね。ただ──本当の目的って違いますよね♪」
「──え?」
「上杉さんの言ってたプロファイリングってヤツから推測すると、占い師や現場仕事がリテールの観察だったから、家庭教師は……若い子の生態観察、いや、それだけじゃないな……数学のブラッシュアップの為かな? では上杉さんの本当の仕事は、というと──色々な人をターゲットにして数字を用いる仕事、FPってところでしょうか」
「──な、なんで……」
「あ、その反応はズバリ──でしたね♪」
「ま、まさか俺が同じ事をやられるとは──」
「♪♬♪ こないだの仕返しですよ~」
「す、凄いね──君、何者?」
「私は単なるバイトしてるいち高校生に過ぎませんよ♪ あ、私の事はこれからユキって呼んで下さい」
「あ、あぁ……ユキさんだったね、今後そう呼ぶ様にするよ」
「それで、本業の方はどうなんですか?」
「それなり──って言いたい所だけど、それで食べていけるなら他事やってないよ。色々カッコいい事いってるけど、色々やらないと食べていけないから、というのが真実だよ、情けない事に──ね」
「そうですか……上杉さんセンスありそうだから、いい線いってると思ったのですが……」
「ま、現実は厳しいって事だよ。喫茶店だってホントは毎日でも来たいくらいだけど、今の収入じゃ1カ月1回くらいが限度で、ね──」
「た、大変なんですね。あ、今日はコーヒーサービスしますので、どうかゆっくりしていって下さい」
「お、ありがとう! じゃ、ちょっと勉強するね」
「頑張って下さいね♪」