異端児同士
「取りあえず、例の募集掲示板を使ってフェチさんを募集するのは分かったのですが……ジュンさん、女の子の文章ってかけます? 役割分担として、ジュンさんにアポ取り任せたいんですけど」
「ん? 多分大丈夫。チャットレディもやった事あるし」
「──は?」
「いや~、悪徳サイトとかでやり取りするだけでアホみたいにポイント消費する所とかってあるじゃん? こういう所って実際に会うまでには至らず、みんなサクラでしょ? 実は儲かるんじゃないかな~って思ってやった事ある訳」
「……ま、もう驚きませんけどね。だいぶ、ジュンさんの性質が分かってきました」
「ま、そこは潰れちゃった訳だけど、一応ログは残してあるよ。ほら、見てみて──」
「──! こ、これは……まさかの設定資料?」
「そ! いわゆるペルソナ戦略ってヤツだね。出来るだけ細かくキャラ設定して、性格も言葉遣いも言い回しも完璧に、ね」
「うわぁ……この文とか、誰がみても女の子が書いたとしか思えないですよ。ここまで徹底してやるのは、ある意味凄いです!」
「っと、そんな反応が返ってくるとは予想外だ。ネカマおっさん、キモイw という笑い話のつもりだったから、さ」
「いえ、どんな事でも本気で真剣に取り組んで努力する人って想像以上に少ないですから、ジュンさんは尊敬に値します!」
「……ありがと。ま、どんな事でも全力で取り組むからこそ面白くもあり、成果も出る訳だからね。ユキさんの援ビジネス案だって、本気で取り組んだ結果でしょ?」
「そう! その通りです! 真剣に本気で取り組むからこそ、面白いんですよね。スポーツや勉強だけが評価されて、こういう事は評価されないで批判されるのはおかしいと思いません? 私にとってはどちらも同じに思うのですけどね」
「ま、それが世の中だからね。例えば悪徳商法というだけで悪と決めつけて何から何まで否定するのはおかしいと思う訳。中には凄い斬新なアイデアや手法だってある訳で、良いものは良いと認めて学んで取り組む姿勢って必要だと思うんだよね」
「ホントですよね! そんなジュンさんを見込んで、ちょっと相談に乗って下さい」
「ん? いいよ」
「私の場合、あるアプリに募集かけてやってるのですが、実際に来てくれるのはやり取りした人の10%くらいですので、見えない労力も大きいんです。どうやったら効率よくアポ取れると思います? こないだなんて250人にアプローチかけて来たのはたったの8人だったんですよ」
「えっと、やり取りちょっと見せて。──ん~、俺だったらかくかくしかじか、こんな感じにするかな。後、単純にスマホでやり取りするよりPCでやった方が例え同じ量やるにも作業時間は1/3には出来るかな」
「なるほど。後、ネカフェに誘導するまでで失敗する事も多いのですが、何か改善点ってあります?」
「これは実際やってみないと何とも言えないけど、最初からネカフェに来てくれ! ではなく、駅前とかコンビニ前とか普通の待ち合わせ場所を設定して、当日何か理由付けて結果的にネカフェに来てもらう様にとかすればある程度改善するかな?」
「なるほど~。ではこのケースの場合は────」
──決して人から褒められる事はない、むしろ批判される事でもやるからには全力でやるという姿勢の異端の2人は、さらに計画を加速させていく。