新入生歓迎会
リュカとの婚約が解消された数日後、新学年が始まった。基本クラス替えも無いのでお友達との楽しい1年がまた始まる。
「さら、そのドレスよく似合ってる。さすが私の見立てだわ。」
と、どや顔のマーガレット。
「ありがと。それでね、みんな親から聞いて知ってるかもしれないけど報告!リュカ様との婚約が正式に解消されました。」
「おめでとう!」
「婚約解消でおめでとうって可笑しな話だけどサラには『おめでとう』であってるわね。」
「ふふふ、ありがとう。」
「でっ、いつ話したのご両親に。」
「ん?つい数日前よ。お願いしたらお父様もハリーからリュカ様の事聞いてたらしくって、その日のうちに手紙を出してくれたの。そしたら翌朝にはおじ様がいらして『愚息が申し訳ない』って、その足で手続きに行って下さったの。」
「ほーっ、すごい早さね。」
「だから今日あの顔なのね。」
マーガレットの目線の先を見れば会場に入ってきたリュカ様とソフィアさんの姿があった。いつもの様に寄り添う2人であるがリュカ様の顔をよく見れば頬が少し腫れている。
ありゃー、これはおじ様に一発?いや二発ほど頂きましたわね。こんなに離れた場所からでもわかるくらいだ、あの日の次の日なんて凄い事になってただろう。
「さすが噂好きね、みんな。もう半数以上があなたたちの事知ってるんじゃない?」
回りを見渡せばリュカ様の顔を見て見ぬふりをする人、私に何か聞きたそうにチラチラと様子を伺う人達がいる。リュカ様から話しかけられた人も頬が引きつっている、そんな事も気にせず今まで通りの行動、凄いですわリュカ様。
パーティーが始まり暫くするとダンスが始まった。婚約者や相手がいる者は次々とフロアの中心へ集まる。マーガレット達3人も『サラちょっと行ってくるわ』とダンスをしに行ってしまったので、私はみんなが戻ってくるまで壁の花となりみんなを待つことにした。
「ハーボット嬢、一曲踊っていただけますか?」
急に声をかけられ顔をあげると、手を差し出したクラスメイトのジャック・グルーバーがいた。この会場で婚約解消してすぐの噂の中心にいる私に声をかける人などいないと思っていたので、驚き返事を返すことができない。
「相手が僕では不満かな?」
ニコッと笑い眉を下げるジャック・グルーバー。
「いえ、不満なんて。ただ、私と一緒だ・」
「僕は君と踊りたい。」
そこまで言われて断れば無礼に当たる『私でよければ』と彼の手を取った。
1曲踊り終えみんなの所に戻ると
「サラ、勇者ねー。グルーバー様と踊るなんて。」
「命知らずね。」
「うっ・・・、やっぱり?踊ってる間もズバズバと刺さる視線が・・・。」
「そりゃそうでしょ、彼の事狙ってる人も多いもの。」
「未来の公爵様で顔よし、頭よし、運動よしでちょっと遊び人だって噂があっても『私が本当の愛を教えてあげるわ!』なんて思ってる人もいるしね。」
「それなのに今日のファーストダンスの相手がサラとなっちゃ、2倍いや3倍増しで睨まれるわよ。」
この3人、気心が知れてるからホント容赦ないな。
「だって、あの状況でお断りする勇気は私にはございません。」
「そうよねー、私も同じ状況だったらムリだわ。」
ウンウンと頷くみんな。
「でも今日に限って何でサラ?」
エレナがふとつぶやいた。確かにそうである、今まで一度もグルーバー様からダンスに誘われたことなど無い。リュカ様がいたとしても他の男性からお声がかかれば社交として踊っていたのに。特に今日なんて周りの雰囲気を見ても分かるように、私とリュカ様は腫物を扱うような感じで近づくことも無く遠巻きで様子を伺っている状況である。実際グルーバー様と踊り終えた後は誰からも声はかからない。
「あまりにもひとりでいるのが可哀そうに見えたとか?」
と返せば
「サラ・・・」
となぜか大きなため息をつかれた。
「サラ、熱で休んでから性格変わったわね。前のサラも好きだけど、今のサラの方が自然で好きよ。」
マーガレット、さすがサラの親友。鋭いです。
でも『だって私サラじゃないし、沙良だし。』とは言えないので、とりあえず笑っておくか。
「私もマーガレットの事、大好きよ。」