婚約解消
あれから数回ソフィアさんに絡まれはしたが無事春休みに入った。30日間の休みの後、新学年が始まる。私は4年、リュカ様は最高学年の5年。休み明けには新入生歓迎会のパーティーが行われる。昨年まではリュカ様がドレスを選んでくれたが今年は何の連絡も無い。まあ予想はしていたので別に構わないが。
学院が始まる1週間前になってお母様がたずねてきた。
「サラ?今年のドレスの用意は終わってるの?」
「はい。休みに入る前にマーガレットと一緒に選らんできましたから、明日か明後日には届くかと。」
「マーガレットと?」
この長い休みの間リュカ様がうちへ訪ねてくることも無かったのだ、察しのよいお母様がなにも感じ取らないわけがない。もし歓迎会で断罪イベントなんてされたらたまらない、休みの間にケリをつけるには丁度いいタイミングだな。
「はい。お母様、新学期が始まる前にお話しと言うよりお願いがあるので、お父様と一緒に話を聞いていただけますか?」
「わかったわ。レオにも伝えておくわ。」
そこからお母様の行動は素早かった。直ぐにお父様に連絡を入れ、夕食の後に話をする事になった。
「サラ、ドレスはマーガレット嬢と見に行ったって?」
「黙っててごめんなさい。」
「それはいい。リュカは?」
「ここ最近では学院でもチラッとお見かけするぐらいでしたので。」
本当はお見かけするどころじゃない、ソフィアさんと共に何かと文句を言いに来るので、しょっちゅう会話はしている。あれを会話と数えていいならだが・・・。
「そうか、ミュラーに先日会った時『今年のドレスは今までとタイプがちょっと違ったが可愛らしかったぞ。サラによく似あいそうだ。』と言っていたんだがな。あれはサラにではないのだな。」
「違うと思います。」
「ハリーからここ最近のリュカの学院での事を聞いてはいたんだが、そこまでサラの事をコケにしているとは・・・。」
あら、昼間のお母様以上に握られた拳がわなわなと、すごく力が入ってますわ。怒り100%超えですかね。
「お父様、お願いがあります。学院が始まるまでにリュカ様との婚約を解消させて下さい。」
「わかった、今すぐノヴィック家に婚約解消の手紙を出そう。」
そういうとお父様は部屋を出て本当に直ぐ手紙を書きノヴィック家に持って行かせたのだった。
そして翌朝、リュカ様の父ミュラー様が慌てて我が家までやって来た。
「レオナルド、サラ、本当に申し訳ない。」
頭を床に擦りつける勢いで謝ってきた。
「あのバカ息子がまさかサラ以外の娘にいれあげ、まさかパーティードレスまで作っていたとわ。あのドレスもサラに送るものだと私は疑いもしなかった。・・・何を言っても言い訳になるな。ちゃんと息子を見れていなかった私が・・・本当にすまない。」
「おじ様、顔をあげて下さい。リュカ様の心が他の方にいってしまったのは、私がいたらなかったからです。でも、このまま他の方を心に思われているリュカ様と共に歩くのは・・・、リュカ様との婚約解消をお認め下さい。」
「サラ・・・、ホントにアイツはバカだ。一時の感情でサラを手放すなんて。・・・婚約解消を受け入れるよ、レオナルド本当にうちの愚息が申し訳ない。今から正式な婚約解消の手続きを行ってくるよ。」
「おじ様、ありがとうございます。そして、ごめんなさい。」
「サラ・・・、本当にすまない。・・・・・レオナルド、今回の事でうちとの・」
「ミュラー、リュカの事は本当に腹立たしく許せないが、君と私の間とは別だ。君と縁を切ったりはしないよ。私たちの代の間は領地で何かあれば今まで通り助け合おう。その後の事は子供たちがきめればいい。」
「レアナルド、ありがとう。・・・あいつは本当にバカだ・・・。」
そう嘆きながら何度も何度も頭を下げミュラー様は帰って行った。
約束通りその日のうちにサラとリュカの婚約は正式に解消された。