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それぞれの決意②

「突然訪れて申し訳ない。」


 そう言った2人の顔は少し怖いぐらいであった。




「ジャックとサラ嬢の婚約が解消され、ジャックはタージル国オリヴィア姫と婚約する事になった。」

「はい。昼過ぎサラから手紙をもらいました。婚約を解消する事になったとは書いてありましたが、でもまさかオリヴィア姫と婚約するために、サラと婚約解消するなんて。」

「これはタージル国が国益を盾に陛下に話を持ちかけたものだ。タージル国とは夏ごろから色々とあったからな。」

「マーガレット嬢、ジャックもこの話は寝耳に水なんだ。今もサラ嬢が修道院に入ることを決めたと聞いて憔悴しきってる。」

「なぜ、あの子だけがこんなつらい目に何度も合わなければならないの・・・。」

「マーガレット嬢、あなたにお願いがあります。」

「お願い・・ですか?」


 

 ジャックはいつも一緒にいたチャーリーとアンドレアにもずっと心を許すことは無かった。公爵家長男に取り入ろうと幼少の頃より、多くの野心を持つ人間が周りにいた。成長すれば彼の端正な見た目で多くの女性が取り巻くようになった。しかし誰もが『公爵家の』と言う肩書を付けたジャックに近づく者たちだったため、彼はいつも鎧をまとい心を許すことは無かった。サラはジャックを個人としか見ず、彼を受け入れてくれた。ジャックもまたそんなサラに惹かれ変わっていった。そしてあの教室での出来事をきっかけに自分たちの事も友として信用し受け入れてくれたような気がする。しかし完全に心を開き信用しきっているのはサラただ1人だけだろう。今、この状況のまま2人を引き離せば確実にジャックはまた心を閉じる。しかも今まで以上に。

 理不尽な理由によって引き離される事となった2人。彼らが共にいるためにはジャックとサラが共に家を捨てるしか方法がない。家を捨てたとしても王命に反する事をするのだ、見つかれば罰せられる可能性がある。本人たちだけではなく家にも、そして2人を逃がそうとしている自分たちも罰せられるかもしれない。それでもあの2人を何とか救ってやりたい。誰にも心を開かず鎧をいつも着ていた昔のジャックに戻したくはない。

 ジャックの意志はまだ確認していない。完全に見切り発進だが時間がない、王が婚約解消を命じた期日までは後3日しかないのだ。ジャックが家を見捨てることが出来ないと判断すればそれまでだが、直ぐに動けるように道は作っておきたいという事だった。


「わかりました。ジャック様のお気持ちが決まればお知らせ下さい。指定されたところまで必ずサラを連れて参ります。私も友を修道院になんて行かせたくないですから。」






 マーガレットの協力を得たチャーリーとアンドレアはグルーバー家に引き返した。もちろんジャックの気持ちを確かめるため。





 チャーリーとアンドレアが帰り自室に戻ったマーガレットは手紙を握りしめ涙を流していた。


  親愛なるマーガレットへ

  あなたにお知らせしないといけない事があります。

  ジャック様との婚約が解消される事となりました。

  あなた達がすれ違った私たちの事を心配し頑張ってくれたおかげで

  また一緒にいれるようになったのに、ごめんなさい。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  それともう一つ、私は修道院に入ることに決めました。

  また一人で決めて怒ってる?ごめんね。

  いつまでも、あなた達の事は忘れません。

  大好きよ、マーガレット。

                   サラ


 手紙を読み何も出来ない自分を責めていた。そこへの来訪者、彼らは友のために危険を冒してでも2人を救おうとしている。マーガレットに迷いは無かった。同じくサラに会えない状態になるなら、修道院ではなく遠い何処かで笑って暮らしてくれる方がいい。彼女には幸せになってほしい。







 グルーバー邸へ戻って来た2人はジャックの自室に通された。そして部屋に入り目にした友の姿に驚愕した。ジャックは虚無感に苛まれ部屋の隅で蹲っていた。そんな友に近づき声をかける。


「ジャック、今の生活を全て捨てられるか?」


 ジャックは力なく顔をあげ友を見た。


「お前がサラ嬢以外の全てを捨てる覚悟があるなら協力してやる。お前たちの事を誰も知らない土地で苦労もするだろうが自分で幸せをつかみ取れ。」


 目を見開き2人を見つめたまま動かないジャック。自分たちの声はジャックに届いているのだろうか、不安になりかけたその時、弱々しい声が聞こえた。


「サラ以外いらない。地位も名誉も何も。サラと共にいられるなら・・・」

「よし!分かった。俺たちが準備を全てしてやるからサラと逃げろ!」

「しかし・・・王命を破ることになる。それに手を貸すお前たちも・・・」

「大丈夫だよ。今回は俺たちも腹が立ってるんだ。貴族だからって俺たちの事を国の駒としか見てないのかってね。」





 ジャックが心を決めた事は直ぐにマーガレットにも伝わった。

 マーガレットはサラへ手紙を書いた。


   親愛なるサラへ

   お手紙ありがとう。

   あなたが予想したとおり私は怒っています。

   でも、ちゃんと私に知らせてくれた、

   内緒にしないでいたから今回は許します。

   でも会わずに行こうとしてるのは許せないわ。

   明日、2人でお別れ会をしましょう。

   カフェ モントレー で10時に待ってます。

                マーガレット


 明日の朝ハーボット家へ届けるよう侍女に手紙を預けた。

 これで手はずは整った。

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