別の冒険者
一応戦闘がありますが雑魚処理です。
「やっと街を出れたわね。ここからは暴れるわよ!」
「弱い獲物は放置でいい。ある程度より強い奴をもし見かけたら倒すでいい」
しばらく歩いているが、問題になりそうなモンスターはいない。そこそこ強いのを間引きしつつ林に入る。
のんびりと林を歩く。虫の音、鳥の声、木々のざわめき。川のせせらぎも聞こえる。
「のどかなところね。魔物が大発生しているなんて感じないけど、あんたの探知がヘタクソだったってことない?」
「俺様は魔王様だぞ。それに…探知が下手なのはお前の方だ。耳を澄ませろ」
「あら?」
言いつつ剣を抜く。戦闘音が聞こえた。音の数からして冒険者のパーティが戦闘に入ったのだろう。
エルザも気付いたようだ。手甲を取り出している。二人で急いで音のほうへ向かう。
冒険者八人が、大量のモンスターに囲まれている。狼や猪の姿をしたもの、蜂の姿をしたもの、巨人のような姿をしたものもいる。二人は負傷して動けず、その看護に一人回っているようだ。
「クソっ、手が回らねぇ!」
「数が多すぎる!」
見ればわかる劣勢だ。厳しそうに見える。これは思ったよりマズい。急いだ方が良さそうだ。
「助太刀してやる!伏せろ!」
「えっ!?」
突然頭上から響いた俺様の声に驚いたようだが、そこは冒険者。しっかりと伏せの体勢は取る。
大きく跳び、そのまま魔術を発動させる。前に構えた俺様の手の先には青紫をした炎がある。
「ヘルファイア!」
完璧な制御で炎を吹き付ける。冒険者に当たらないように、周りに向かって出した魔力の炎は破壊の円を広げ、広範囲のモンスター達が種族関係なく燃え尽きる。森が燃えないように魔力の炎を使っているが、その熱量は凄まじい。
炎が消えた時には、巨人を盾にして生き残った数体のモンスターのみが残った。
「あはははははは!暇な生活で溜まったストレス、纏めてぶつけてあげるわ!」
そこにエルザが跳びかかる。突き出された拳が魔物の頭を爆散させる。拳圧が産む風が強すぎてその体液も彼女にはかからない。
数発の鉄拳でその場は静寂を取り戻した。
「すげぇ…」
「これが白金か…ありがとう、助かったよ。ほんとにどうなることかと…」
「別に構わんぞ。それよりそこの奴らにこれを飲ませてやれ。回復薬と解毒薬の効果が合わさっている」
「いいのか?凄く助かる」
それより今は急がなくては。思ったよりやばそうだ。
「他の冒険者はいないか?」
「いや、俺達はそこの四人以外は見ていない」
「こっちもお前ら以外は見てないぞ」
リーダー格の男二人は銅だった。かなりの実力を持っているはずだが、二人とも剣士なのも相まってあの量相手には分が悪い。
「そうか。悪いが俺様達は急ぐ。この量は異常だ、発生源を潰しに行く。早めに帰っておいてくれ」
そう声をかけて、人との触れ合いを拒否する姿勢に入った―木の影で縮こまっているエルザと共にさらに東にある洞窟を目指す。
「流石に多いな…掃討で相当の素材が出るし、こいつらは他の冒険者に任せよう」
「なによ、シャレでも言ったつもり?人格だけじゃなくギャグセンスまで壊滅的なのね」
「そんなつもりはない!」
しょうもないことで罵られつつ、最速で洞窟にたどり着いた。門番代わりのモンスターが入口を守っている。
「走査」
魔術を発動し、洞窟内部の構造を確かめる。大量のモンスターがひしめいているが、外ほどでは無い。奥に石室があるようだが鉄扉で閉じられている。
「奥に部屋がある。それ以外は丸々ぶっ壊すぞ」