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閑話 バレンタインデー

時間軸はよくわかんないです。パラレルワールドくらいの気持ちです。

 バレンタインデー。もともとは異界の行事だったらしい。本来のものとは異なるらしいが、この国では花束や手作りチョコレート、その他プレゼントを身近な人に贈る日になっている。祝日扱いなので、今日は休日にされている。

 何やら朝からエルザとメイド達が騒がしく厨房に向かっていたので、女性陣はきっとチョコレートを作ってくるんだろう。


「よし、諸君。俺様達からも彼女らに何かを贈ろう」


 朝っぱらからコックや文官のうち、暇な者が集まっている。ここに務める人達は魔族としてはまだ若く、所帯を持たない人が多い。


「でも厨房は貸し切りですよ?」

「なければ作れば良いのだ」


 そう言って二つ目の厨房を迷宮の力で作る。何かと便利だ。


「さて、ライン君」

「えぇ、既に用意しております」


 そう言って彼が取り出したのは大きな袋である。中にはカカオマス、砂糖、ミルクパウダー、ココアバター…要はチョコレートの材料である。それぞれが中くらいの袋に分けて大量に入っている。


「大陸各地から仕入れたものです」

「うむ、ご苦労であった」

「でも魔王様、原料から直接チョコレートは出来ませんぜ?」

「今からチョコレートにするのだよ」


 コックの質問にドヤ顔で答える。


「これがホントの生チョコってな!」

「な、なるほど」

「よし、諸君。混ぜるぞ。魔法障壁で容器を作りたまえ。水槽みたいな感じで」


 彼らは文官や料理人ではあるが、エリートであるため魔術の勉強はばっちりだ。それにこの迷宮には凄まじい霊力がある。それの補助を受ければ余裕であろう。


 かくして、大きな障壁の箱ができた。それの角の部分に外から修正を加え、球体を作る。


「魔王様はマジで規格外だよな…他人の術を維持させたまま書き換えるって」


 そんな声にしたり顔を向けつつ、ドボドボと袋の中身を箱に突っ込む。計量は既に済んでいる。最後に生クリームとブランデーを加える。


「さて、今から俺様が全力で練り上げる。三日分練るのを三分で終わらせるから覚悟して障壁を維持してくれ」

「え、あ、へぇっ!?」

「さぁいくぞ、フレア!スターストーム!」


 諦めた顔で衝撃に備えていたライン以外は必死の形相で維持作業に移る。容器の中を加熱し、嵐を巻き起こし、練り上げる。やばい速度で練る。

 ギシギシと音を立てる障壁の中で、しっかりと混ぜるために上から障壁を下ろしていく。液面と障壁がほぼ重なり、トロリとしたチョコレートが練られ始める。


「温度維持と障壁維持、おまけにミキサーにかけるなんてめちゃくちゃだ!」

「ふはははははは!諸君、まだ耐えてくれよ!」

「もう無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 泣き言を言いながらも彼らはしっかりと耐えている。そうしているうちに、三分が経った。


「よし、終わりだ。諸君、魔術を解いていいぞ、あとは俺様がやる」

「死ぬかと思った…」

「なに、チョコレートがすごい勢いで飛んできて体が潰されるだけさ」

「そんな死因は嫌だ!」


 へたりこんだ彼らとそんなことを言いつつ、混ざったチョコレートを二重になったボウルの上の方に落とす。霊力で馬鹿でかいボウルを作るだけなので迷宮は便利だ。


 冷水を二段目のボウルに加える。一段目のボウルが冷えるまで、上から一段目のボウルを抑えながら下のボウルを冷やす作業をした。


「よし、諸君。しばらく休憩していい。あとは再加熱したものを型に流して冷やすだけだ。まとめて面倒を見てやる、家族とか友人とか恋人とかの分も用意していいぞ」


 安堵の息をつく彼ら。そのあとは冷蔵する魔法を維持する魔道具を迷宮の一室に付けるだけだ。厨房を縮めてそのまま冷やせばいいだろう。


「にしてもこの量は多いんじゃないっすか?」

「あぁ、それにも理由があるんだ」

「な、なるほど?」




 夜。予想通り、プレゼント交換会となる。女性陣はホワイトチョコを贈ってくれた。お互いがお互い、全員分のチョコを渡していく。


「はい、最後はアンタね。見て、アンタを作ったの」

「凝ってる」

「ふふん、凄いでしょ。こういうの得意なのよ」


 エルザが手渡してくれた可愛くラッピングされた袋には、真っ白にデフォルメされた俺を模したチョコレートが入っていた。


「ありがとう。こちらもお前が最後だ」


 そう言って、スライム状態のスイを模したチョコレートを渡す。ふわっふわである。白い砂糖が茶色いチョコを彩る。


「スイちゃん!可愛いわねぇ!」

「あぁ、可愛くて可愛くてしょうがないな」

「スイちゃんも手伝ってくれのよ、ねー?」

「ねー!ママたちとがんばった!」


 そんなスイの頭を撫でる。甘えるように撫でた手を取ってきた。今の彼女は人の姿である。


「スイの分はこれだ!」


 ドーン!と音がなりそうな程、大きなタッパーを出す。作る際に残った生チョコを丸々固めている。


「おぉ!いっぱい!!」

「これなら分裂してみんなで食べても平気だろ?」

「なるほど!じゃあ、いただきます!!」


 スイはタッパーに飛び込み、大量のミニサイズのスイに別れる。ものすごい勢いで生チョコを食べていた。


「「おいしい!おいしいよ、パパ!」」


 魔術を通して魔物状態のスイの声が聞こえる。


「そうだろう、そうだろう!ふはははははは!」

「「あはははははは!!」」



「私もスイには甘いけど。アイツの親バカ具合はイカれてるわね」


 そのエルザのつぶやきに、死にかけた男性達は疲れた顔で、ドン引きしている女性達は引きつった顔で同意したのだった。

ウチのバレンタインデーは明日なのです。更新が途絶えたらそういうことですね…

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