五日目
「今日から私と風呂入るぞ」
「ヘァッ」
思わずスペシウム光線撃ってくる宇宙人みたいな声が出た。
「今君なんて言った?」
「あ?だから今日から私と二人で風呂はいんぞって言ってんだ」
「お前は何を言ってるんだ??」
いや本当にどうしたの?確かにいちゃついてて服が肌蹴るくらいには遊ぶから半裸に抵抗はないんだけど、全裸だよ?
だってモロだよ?チラリズムとかそういう問題じゃあないんだよ?
何?まだそういうことしたこともないのに過程をすっ飛ばしすぎじゃない?頭打ったの?
「裸気にしてんのか?今更気にすることでもねーだろ」
「気にしまくってるんですけど?」
そうだった、彼女たまに人の話聞かなくなるんだ。これはまずいぞ!
「おら行くぞ」
「待って待って待って!?」
あああ首根っこ掴んで引きずらないで!ただでさえ力が落ちてきて凹んでるのに!しっかし君相変わらず力強いな!?
「とっとと往生しな」
「いやああああお代官様あああああ」
あれよあれよと言う間にぼくは呆気なく服を脱がされて生まれた時の姿になってました。悔しい。
もうお嫁に行けない……と嘆きながらふと彼女の方を見ると、すでに上半身を脱ぎ捨てていた。
「ああああああうわあああああ!!!!」
「なんだ、やかましいぞ」
「だから君はああああ!!」
思わず体を覆っていた手を瞬時に目の上に被せる。見えてない。大丈夫。ぼくは何も見てない。
「おい。何してんだ。見慣れてんだろ?とっとと入れ」
「あぅんっ!」
意図せず女の子みたいな声出た。最近ぼくの株大暴落してない?見放されたりしない?
「せめてタオルまいて!タオル!」
「うるせーな。別にいいだろ」
「君ぼくが童貞なのわかってて言ってる!?」
もう3年以上もお預け喰らってるのにいきなりそれはないよ!嘘だと言ってよバー○ィ!
なんなの?逆に弄んでるの?ぼくの純情を弄んでいるの??
「いいから巻けッ!」
「うおっ」
目を閉じたまま無我夢中でタオルを巻かせた。これ以上はぼくが(羞恥で)死んでしまう。
少し時間を飛ばして。
「……おい。そんなに離れるこたねーだろ」
「やめてください死んでしまいますお願いだから近づいてこないでッ!」
今ぼくは彼女と少し狭い湯船で縮こまっています。いや下の方は元気になりつつあるんだけど。
結局自分で洗うって言ったのに無理やり体の隅々まで洗われるし、かと思えば「次は私な」とぼくの目の前でタオルを取り去ろうとしてきたりで一気に疲れた。
で、今。ぼくはせめてもの反骨精神で彼女から体ごとそっぽを向いて自分の欲と悪戦苦闘している。
正直ヤバい。あともうちょっとの所で耐えてるが、これ以上行くと戻れなくなる。
「やーれやれ。そう恥ずかしがるこたねーだろ。本番はしてねーが、それに近いことはいつもヤッてるんじゃあねぇか」
「ペッティングは……うわ言っちゃった!とにかくそれとこれとは話が別なんですぅ!」
「わかんねーな……どう違うんだ」
「はわわわわわ」
む、胸!おっぱいが!ぼくの背中にィ!あれこれ前も似たようなことなかったか!?
殊更に縮こまってしまうぼくに追い打ちをかけるように彼女が後ろからぼくの胸元に腕を回してきた。待って。死ぬ。
なんか変だぞ?具体的には監禁生活が始まったあたりから何かがおかしい気がするぞ?
あれ?君ってそんなに積極的な子だったっけ??
「おい、そろそろこっち向けよ」
「ふえぇ……ぼくの恋人が怖いよぉ……」
顔をむんずと掴まれて無理やり向かされると同時に熱烈なキスをされる。
「むっ!?んん、んーっ」
ちょっと、ぼく。そろそろ本当にやばいかもしれないです。
気を抜いてたらぼくは近いうちに彼女に殺されるかもしれない。どうすればいいんだ!?
なんとか引き剥がそうとするも、彼女の腕の力が強くて中々動かない。えっ嘘?
ふおおめっちゃはむはむされてる。ハム○ロサァン……じゃなくてっ!
「んんぐっ!むぅううっ!ううーっ!」
ちょっと待って冗談じゃなく息が苦しい。何これ濃っ厚だよぉ!
必死で彼女の二の腕をタップして訴える。でも全然離れてくれない!なんでや!!
涙目になりながら彼女の様子を伺おうと半目を開けて、唖然とした。
あの、わかる?上手く言えないんだけど…………エロい。
目を閉じてはいるものの、なんとなく蕩けてる顔って言うの?なんとなくわからない?そっか……
とりあえず言えることは……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……
ここまで言ったら察してください。もう限界です。ぼくは明日死にます。
最終的に動けなくなったぼくの唇を思う存分堪能してから彼女はようやっと離れてくれました。
あのね……眼鏡、外してて……よかった……あのトロ顔を直視してたら多分ぼく人として終わってた……
「っはぁ……ん……あ?お前……」
「…………もう、何も言わないで……」
その後どうしたかって?ひたすらいかに自分のやってることがぼくの心臓にとって悪いことなのかをみっちり説教した後お詫びとして抜いてもらいました。
うるさいっ!彼女に嫌われるくらいならぼくは一生童貞でもいいんだよッ!