二日目
「おはよう!!おかえりのキスは!?」
「うるさい」
「ああんっ!」
……と、昼寝から起きて早々容赦なくお腹に熱烈なキス(こぶし)を貰いましたが、ぼくは元気です。
昨日、彼女の突飛な一言により、奇妙な監禁生活が始まったわけですが、ひとつ聞きたい。
「軟禁」と「監禁」の線引きってどこまでなんだ?
一応監禁とは言ってるけど、ぼくからしたらこれはまだまだ手ぬるい分類に入るんじゃあないかな……
気絶させられたときは足に手錠っぽいのを繋がれて身動きが取れなかったけど、今は家の中なら自由に行き来できる。
それもこれも、彼女がドアに大量の鍵をかけたからだが。
ドアに増やした鍵は外側からかける物で、当然内側から開けることはできない。
窓の方は?おいおいここはマンションの4階なんだよ?普通に考えて死ぬ。
というわけで、ここがぼくと彼女の家兼ぼくを閉じ込める檻なわけだが、いかんせん問題が出てくる。
暇すぎる。
毎日大学に行って必死に勉強していたのを急に引きこもりみたいな生活になったものだから、体がついていけてない気がする。
家にあった本は彼女の物も含めて全部読んでしまったし、元々ゲームが好きでたくさん持っていたが、ほぼすべてやりこんでいるので今更また始める気にもなれない。
だから今まで以上に彼女に甘えることにしたのだが、どうやら彼女もまんざらでもないらしい。あまりしつこくしてると鋭い腹パンを貰うが。
今だってソファに座る彼女の腹に顔を突っ込んでその柔さを感じているのだが、彼女は特に気にした様子もなく、それどころか時折頭を撫でてくる。
やだ、幸せすぎる……ぼく明日の朝になったら死んでない?大丈夫?
お腹だけじゃなくて、引き締まった二の腕も、ゆるく曲線を描く頬も、むっちりとした太股も、彼女を構成するもの全てがぼくを癒す要因になってる。これを神と言わずしてなんと呼ぶのか。
変態みたいだって?いやいやぼくは元からこんな感じだ。
そんなわけで、暇で仕方なかったぼくは現在進行形で彼女を抱きしめて癒されているわけだが、こうなるとどうしてもある欲求が首をもたげるのだ。
うん、もうこの際だから言います。抱きたいです。
ぼくと彼女は付き合って3年ほどになるが、未だにぼくらは清い関係を保っている。
つまり、どちらも純潔。言ってしまえば童貞と処女。
ぼくはともかく彼女のカミングアウトを聞いたときは嘘だろ、って思ったよね。
彼女みたいな美人を、世の中の男が黙ってるわけもなくて、常日頃から彼女は男によく絡まれていた。
付き合い始めてからはそれを口実に逃げてるみたいだけど、たまに実力行使しようとしてくる輩もいるわけで。
そのせいなのか、いつの間にか彼女はぼくよりも力をつけてしまい、男として大変情けない思いをしている。
男を一瞬で沈めるために空手教室に通っているらしい。
とは言え、彼女は普通の人と比べて気が長い方で、いつもは単なる口喧嘩だけで済むのだが、たまにうっかり「プッツン」させるとヤバイ。
どれくらいヤバいかって言うと危険が危ない。なんというか語彙力が死ぬ勢いでやばい。
一度プッツンした彼女は本気で手を出す。その本気が大変危ないのだ。
確かにあれほどの威力なら大抵の人はぶちのめせると思う……経験者は語る。
話が逸れた。つまりはぼくたちはまだ肉体の関係を持ったことがない。
ぼくとしては機会さえあれば彼女を抱きたいとは思っている。実際そういう雰囲気に何度かなったこともある。
でも、その時の彼女は期待しているような、しかし怯えているような目でぼくを見るから、ぼくは何も言えなくなって、結局お互いの欲を吐き出して終わるのだ。
古い言い方になるけど、AとBは通ったがいまだにCに行けてないって感じかな……
そんなことを考えながら、不意に彼女と目線を合わせるように起き上がり、ゆっくりソファに押し倒した。
その間も彼女は眉一つ動かさずに、その落ち着いた目でぼくを見ていた。
そのまま少し見つめ合って、ぼくの方から彼女に口づけた。
でもなんだか恥ずかしくなったのですぐに離してしまった。わかるかなぁこの気持ち……
そしたら彼女が「へたれ」と煽ってきたのでカッとなってその日もなんかそういう雰囲気になるとこまでいったが結局今日も何の成果も挙げられませんでしたァ!
いいんだよ……彼女の豊満なおっぱい好きなだけ触らせてくれただけでも…………人類の大きな一歩なんだよ……
因みにこの後何気なく「暇すぎて死にそうなんだよね」と言ったら次の日最新ゲーム機とゲームソフトを5本くらい買ってきてくれました。
「いや、あのさ……とてもうれしいんだけど、そのお金、どこから出したの?バイト、してなかったよね……?」
「…………臨時収入だぜ」
「だからなぜそこで目を逸らすッ!尊い!もっかいさっきのしよ!」
「嫌だ」