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十一日目

「なぁお前の妹すっげぇめんどくさいんだが」

「あん?」

思わず頓狂な声で返してしまった。

「いやごめん。今補聴器つけてなくてさ。妹ってまさかぼくの?」

「それ以外に誰がいんだ。ああ、女タラシのお前のダチにもいたなそういや。補聴器充電終わってたぞ」

「おっけ」

彼女が言っているのは以前テレビに出ていたぼくの妹の事だろう。話したことはなくとも見たことはある程度だったはず。

「えーと……それで、妹がめんどくさいっていうのは」

「あいつ、俺に詰め寄って自分の言いたいこと言うだけ言ってギャン泣きし始めたんだよ。俺が泣かしたみたいで居心地最悪だったぜ」

「あ、え?えっと、ごめん?」

「いや、お前は謝る必要ねーだろが」

彼女の話をまとめればこうだ。

大学からの帰り道に寄り道をしようとして店を物色していたら、ぼくの妹に声をかけられて適当なカフェに入って話をしていたら突然妹が泣きだした。

「ぶっちゃけぼくでも意味が分からない……ぼくの前では基本無口無表情無関心の無の三段活用の塊だったからさ」

そう、普段の妹を知ってるぼくだからこそわからない。自分の感情を表に出そうとしない妹が泣き崩れるなんて想像できない。

「私の兄をずっと探しています。少しでいいので情報をください、だってよ。お前の話を聞いてた俺は正直面食らった」

「そ、そうだよね……しかし、なんでまた急に?」

「そこんとこはようわからんが……お前に謝りたいとか言ってたな。」

「おん?」

ぼくからしたら何言っちゃってんのお前???なんですけど。

「なにそれ?いなくなってから大事さに気づきましたってオチか?笑えねーな」

無意識に素が出始めてる。危ない。あんまり素が出ると彼女を傷つけかねないかも……

「そう……そうだな」

彼女は少し口ごもって肯定した。あれ、どうしたの……って、彼女にはぼくの家族の事あんま話してなかったんだっけ?そうだっけ?

「それにしても馬鹿だよねあいつも。今更ぼくを見つけたって何ができるってんだよ。ふざけんなよって、なあ。」

ああ駄目だ。今日のぼく、とことん機嫌が悪いのかな。どんどん口調が荒くなっていってる気がする。

「虫が良すぎるんだよ。散々ぼくのこと無視しといてさぁ。あ、これは洒落じゃあねーからな。いなくなってから探してます協力してくださいつって泣きついてきたの?君に?やめろよ畜生反吐が出やがる。大丈夫だった?何もされなかった?もうぼく君があいつに何かされたって考えるだけであいつを殺しそうだよねぇ本当に大丈夫だったんだよね?」

するすると罵倒の言葉が出てきてしまうのを抑えようと首に手をやれば彼女に止められた。

「やめろ。何度も言ってるが、俺の前では素のお前でいい。お前が自粛する必要なんてどこにもねーだろが」

「……うん。でも、ごめんね。八つ当たりしちゃった」

「別にかまわん。お前は望みが低すぎるんだよ。もっとわがまま言えよ」

「それは無理」

「即答かこの野郎」

思わず笑ってしまって、そのまま彼女を抱きしめた。彼女は抵抗せずに抱きしめ返してくれる。しあわせ。

「あの、それでさ。どう返したの?」

「俺は何も知らない。他当たれって言っといた」

「そっかぁ……」

「さすがに恋人の俺が何も知らないのはおかしいとか言われたけどな」

「デスヨネー」

「しかし……ある意味あいつを相手にしたのはまずかったかもしれん」

「えっ?」

「なぁ俺の愛しの彼氏さんよ。あいつぁ、お前の言ったとおりかなり頭の切れる奴だぜ。もしかしたら俺の嘘に感づいてるかもしれん」

「そ、そんなぁ」

「安心しろ、安心しろよお前さん。お前をあいつらに渡さないためなら俺は人殺したっていいんだからな」

「さすがに君がその手を汚すのは見たくないんだけどな」

「ほぉ。じゃあ汚さないように消せばいいんだな」

「多分それ答えになってないね?」

たまに話が通じなくなるのちょっとヒヤヒヤするけどちょっぴり馬鹿っぽく見えてそこがまた可愛いんですよ。

「お前が何も言わなくても、もう誰にも渡したりなんかできねぇよ。そんなことするくらいなら、お前と無理心中だぜ」

「ぼくの合意があるから無理心中じゃあないね」

「そうかよ」

そんな馬鹿馬鹿しいやりとりをしながらいつものように揃ってベッドに倒れこんだ。

ああ、そういう雰囲気の様に見えるけどちがうよ。ちょっといちゃつきたいだけだよ。ぼくは絶対襲ったりしないよほんとだよ!

無遠慮に胸に顔を埋めるぼくの頭をなでる彼女はまさにマリア様。処女のままぼくの子供を産んでほしい。

調子に乗って頬ずりしていたぼくの顔を両手で包んで、キスされる。

ぼくは抵抗せずに受け入れた。寝そべったままスキンシップを楽しんでいるうちに彼女の眼がとろんとし始めた。眠いみたい。

「もう寝ちゃおうね」

「……いや、まだ……」

「疲れてるんでしょう。明日も講義、あるんだから寝なきゃダメ。」

眠たげにしてるのに託けていいこいいこしてると小さな寝息。

可愛いなぁ。ぼくにいいこいいこされて眠っちゃう彼女可愛いなぁ。薄い本書けそう。画力ないけど。書く気もないけど。

さらさらで滑らかな彼女の髪をいじりながら、気が付いたらぼくも寝ちゃってた。

明日のぼくもきっと君に恋してる。

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