21話 ヤーデル家大号泣事件
今日で夏休みが終わり、明日からまた授業が始まる。今日はいよいよハンドクリームを奥さんに渡そうと思うのだが、大変な事に気がついた。そう、旦那さんへのプレゼントがない。これは一大事だ。やばい。ていうか、旦那さんに何を渡せば良いんだ。などと、つらつら考えていると、奥さんが来た。今日は皆で遊ぼうということらしい。え、どうしよう。もう、旦那さんもハンドクリームでいいか?しょうがないよな。多めに作っておいて良かった……今度ちゃんとした物を渡そう。奥さんと、使用人さん達に渡して旦那さんにだけ渡さない訳にはいかないからな
とりあえず、今は渡すタイミングないし、後で渡そう。今はゲームを楽しむぞ。チェスにトランプにオセロをするらしい。チェスはルールが、よく分からんな。と思ったら、ルールを説明してくれるらしい。ありがとう奥さん
……また勝ってしまった。奥さん弱いな。いや、つい熱くなってしまった俺も悪いが。どうしようか。ここは負けた方が良いのか?いや、わざと負けるのさやめた方が良いな。なんか気まずいし、充分遊んだ気がするので、部屋行きたい。ダメかな。とりあえず「部屋に戻りたい」「失礼します」って感じの言葉だけ言っとこう
部屋に戻って気づいた。ハンドクリームを渡してない、と。早く渡しに行こう……意外と重いな。お、まだ集まってた。ラッキー。とりあえず、旦那さんと奥さんに渡そう
「……これどうぞ」
いや、説明しろよ俺。頑張れ。喋ろ。
「ハンドクリームです。肌荒れとか、乾燥してる時とかに、手に塗って使ってください。ちゃんと実験したので、効果はありますよ」
旦那さんはいらないかも知れないけど
「はい。……いらなかったら、捨てても良いですから」
「坊ちゃん。もしかして、これを作る為に部屋に篭っていらしたのですか?」
うわ、バレた。ミカリス鋭い。まあ、見た感じ旦那さんも奥さんも嬉しそうで良かった
そういえば、父と母と呼んでくれと言われたんだとふと思い出す。まあ、お世話になってるし、ここでいろいろな勉強するのも結構楽しい。勉強して将来困ることはないからな。だから、日頃感謝してますよーって伝えとこう。お風呂も、ふかふかのベッドもあり、勉強もできるこの環境を逃したくはない。この人達にかぎって、無いとは思うが念の為。キャラじゃないが、頑張れ俺
「っ」
あ、やべ、しゃっくりが出そう。我慢しろ。改めて頑張れ俺
「あ、その。……俺を、拾ってくれて、ありがとうございました。……父上。母上」
吃ってしまった。恥ずかしい。しゃっくりも恥ずかしい
「これからも、勉強も剣も魔法も頑張るから……だから、」
うおぉ、しゃっくりめ。声を小さくして、バレない様に。なんか今しゃっくりの場面じゃないから。何故か皆の顔がちょっとシリアスだから。もうちょいだ。頑張れ俺ー
って、なんで皆泣いてんの?旦那さんも奥さんもミカリスや、使用人達でさえ、大号泣なんだけど?何故?とりあえずカオス。え?もしかして、ここに居ると迷惑だったりする?って、うおぅ
何故か旦那さんと奥さん……じゃなくて、父上と母上に抱きつかれている。どうしよう。どうすればいいんだ……
え?父上母上と呼ばれたのが、嬉しかった?嬉し泣きかよ紛らわしい。あれ?じゃあ、使用人さん達は?あ、貰い泣きか?でも、今は貰い泣きしてないで、このカオスをどうにかして欲しい
このあと、いち早くミカリスが立ち直り、場を収めてヤーデル家大号泣事件は幕を下ろした。流石だなミカリス




