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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第2章 文化祭 前編
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閑話 すごろくゲームはお好きですか? 1



 ゴールデンウィークの後半、赤石の部屋に三千路、須田、赤石の三人が車座になって座っていた。


「さぁ、本日もやってまいりました! 不定期開催企画、昼の遊びの須田ゲーム~!」

「いぇ~~~~~い!」

「さすがに三人集まるとうるさい」


 須田の掛け声と三千路の掛け声の相乗効果で、赤石の部屋が俄かに騒がしくなる。


「またそんなこと言って~、悠も楽しいんでしょ?」

「まだ何もしてないだろ」


 赤石に肘鉄砲を喰らわせる三千路をいなし、赤石は姿勢を崩す。

 やれやれ、と三千路はため息をつき、立ち上がった。


「あんたら、今日は私を呼んで大正解ね! 今日は超面白いもの持って来ましたから!」

「よっ、待ってました!」

「嘘つけ」


 須田は三千路に合の手を入れ、赤石は須田に合の手を入れる。

 三千路は二人の様子に気を良くし、


「じゃじゃーん! 今日はこれ、超人気すごろくゲーム『ザ・ライフ』を持って来ました! 今日はこのすごろくゲームをやろう!」


 バン、とすごろくゲームを地面に置き、よいしょ、と掛け声をかけながら広げだした。


 人気すごろくゲーム『ザ・ライフ』。飽くまで現実的な一個人の人生を辿るかのようなすごろくゲームで、全世界で大ヒットを記録した。

 出る目が〇から五までの二つのさいころを使い、最終的に手元に残った所持金が多い者が勝利するというシンプルなゲーム。


「よし、出来た! じゃあお金の管理は誰にまかせよーうーかーな」


 三千路は赤石と須田を見た。


「よし、ここは神様の言う通りやろ、神様の言う通り。だーれーにーしーよーうーかーな、てーんーのー……」

「ちょちょちょ、ちょっと待てよ」


 三人を順番に指さしていく三千路を、赤石は押しとどめる。


「いや、それは駄目だろ。それ毎回毎回同じこと言ってたら人を差す回数も同じだろ。例えば自分から始まって三〇回人を差すセリフなら今の場合最初に指さした人がそうなるだろ。いや、それチートじゃねぇかチート」

「はぁ!? これは昔から連綿と伝わってる画期的な方法だから! 別に四五回、人を指さすから最初に指さした人に決まるとか知らないから」

「いや、知ってるじゃねぇか! 地域差あるだろうけどこれはなしだ、なし」

「え~、本当悠って面白味ないわ~、ねぇ、統」

「赤石節だな」

「「出た~~~~~」」

「うるせ」


 にやけた顔で赤石を見る須田と三千路を軽く小突く。


「じゃあここは悠にやってもらおうぜ? 悠お金のことになると厳しいし」

「生憎富裕層じゃなくてな」

「じゃあ悠頼むわ」

「はいはい」


 赤石が銀行員バンカーの役目を果たすことに決定した。


「はい、じゃあ取り敢えず私からさいころ振るわ」


 鈴奈は二つのさいころを振った。

 須田はさいころの目を数える。


「一と三ってことは四か。じゃあすう、四進めよ」

「はいは~い」


 一、二、三、四、と数えながら自分のキャラクターを動かした。


「え~っとなになに……『渋谷でスカウトされ、アイドルになる。給料日に止まるたびにさいころの出た目の百万倍の給料を得る』」

「「おおおぉ~」」

「あっはっは! アイドルになっちゃったわ、私。人生の初っ端から勝ち組決定ですわ!」

「サインください」

「なんでだよ、いらねぇだろ」


 近くにあった白紙を差し出す須田を赤石が突っ込む。

 三千路の次の手番の須田はあはは、と笑いながらさいころを手に放り投げた。

 出た目は五と五、合計十。


「うおおぉ~、いきなり十か。これは幸先良いな」


 一、二、と例によって数えながら辿り着いたマスは――


「『大学生活を遊びに費やしすぎ、就職活動に失敗し、無職。給料日には出た目の十万倍の給料を得る』」

「「…………」」

「まぁ元気出せよ統」

「いや、ただのゲームだからぁ! それにこの後も再就職のチャンスあるし、全然問題ないから! 覚えとけよ!」


 赤石は須田の肩に手を置き慰めるが、須田は反駁する。まぁ今後の帰趨を待つか、と返し、赤石は賽を取った。


「じゃあ俺の番か」


 赤石はさいころを投げた。出た目は三と四、合計七。


「一、二、三、四……『大学生活での苦心惨憺が功を奏し、国家公務員になる。給料日には七百万円の給料を得る』」

「「悠らしい~~~~!」」


 国家公務員の道をたどることになった赤石を、須田と三千路は吹き出しそうになりながら指さした。


「公務員は堅実な道だからな」

「いや、もうちょっと人生チャレンジしようよ。私みたいにアイドル目指そ? ほら」

「止めてくれ! 俺はこれでいいんだ! 堅実な生活がしたいんだ! そっちの道に引きずり込もうとしないでくれ!」

「あははははは。本当悠って堅実なの好きだよね。統、知ってる? 昔、悠とビンゴゲームしに行ったんだけどさ、悠ビンゴゲームの景品の値段予想して人数も数えて期待値数えだしたんだよ? 本当イベントごと楽しむ能力なくない?」

「「悠らしぃ~~~~~~」」


 須田と三千路は二人して赤石を指さす。

 赤石はどうどう、と両手を前に出した。


「いや、これはちょっと言い訳をさせてくれ。いや、ビンゴゲームって遊びだろ? ほら、ビンゴゲームの商品獲得を期待するか遊びだと思って興じるかだと心持が違うだろ?

 だから期待値が高かったら商品獲得に向けて燃えるし、逆に低かったら商品のことは考えずにいれる。そういう俺なりのな、ルールがある訳だ」

「確かに悠、誰かと遊ぶ時だけ『同じ遊ぶなら楽しんだ方が良い』とか言って楽しんでるイメージあるわ~」


 うんうん、と頷きながら三千路は手を組む。


「でも私が最近パズルはまってる、って言ったら『別にパズルなんてやらなくても絵買って額に入れて飾った方が安いし早くないか?』って言ってくるんよ? どう思う、統!?」

「赤石節が効いてますなぁ~」

「べ、別に良いだろ。俺の勝手だろ!」

「っかぁ~、悠は本当遊ぶっていう能力に関しては欠けてますな。私とか統とかみたいにならなくちゃ?」


 三千路は顔に手を当て、やれやれ、と首を振る。


「本当、悠は遊ぶっていう能力だけ異常に低いからな」

「そうそう。まぁ私らが誘ったら来るから私らが誘えばいっか~」

「だなぁ~」


 三千路と須田は顔を見合わせて頷く。

 三千路は手を叩き、あ、と声を漏らした。


「そういえば二人とももうすぐ文化祭でしょ? 私見に行くから」

「いや、来るなよ!」

「俺は一日目に桃太郎の桃太郎役で演劇するぞ。二日目はお化け屋敷のお化け役だな」

「えぇ~、統働きすぎじゃん。悠は?」

「俺は一日目に浦島太郎の木の役で出るから別に来なくていいぞ」

「いや、嘘つけ! 悠は一日目のロミオとジュリエットと二日目の花送り、っていうクラス展示の脚本役だ」


 須田はぺし、と赤石を軽く叩く。


「えぇ~~、嘘ぉ!? 見に行く見に行く、一日目は多分金曜日でしょ? じゃあ二日目に行く~。統と悠は一日目の演劇の動画撮ってまた後で見せてよ」

「おっけー」

「俺が口を挟む前に決まったよおい……」

「まぁまぁ、悠と統が高校でどんな過ごし方してるか見に行ってやるからさ!」


 三千路は赤石と須田の肩を持った。


「まぁいいか……」


 と、ぼそ、と赤石は呟いた。

 三千路は話をしながら、賽を振った。

 五と三、合計は八。


「一、二、三……嘘。『いきなり仕事が認められ、一段階上のステージに上がる』。悠、アイドルの一個上の職業何!?」

「えーっと……」

 

 赤石は説明書を見た。


「『一流アイドルになり、給料が倍にアップ。給料日には出た目の二百万倍の給料を得る』だって」

「一流アイドルやったーーーーー!」


 三千路はその場で跳んで喜んだ。


「いやぁ~。本当成功しちゃってまいっちゃいますわ~。ほらほら、下民共、私はあんたらとは格が違うのよ」

「なんだこの嫌な感じのアイドルは」

「サインください!」

「なんでだよ!」


 赤石はぺし、と須田の頭をはたいた。


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