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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第2章 文化祭 前編
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第57話 脚本作りはお好きですか? 4



「ほな、俺から案出してええか?」

「そうだな」


 赤石が座り、場が落ち着いてきたところで、三矢が挙手をした。


「演劇の脚本と映画上映の脚本をやらなあかんのやろ? ほな、演劇が完成するまでのドキュメンタリーとかどうや、赤石? 演劇の脚本考えたら映画はその様子を取るだけなんやから楽やろ?」

「なるほど…………」


 思いもしなかったアイデアを、三矢は出した。

 確かに、演劇が出来上がるまでの過程を撮るだけなら映画の脚本を考える必要はない。


 文化祭の一日目は体育館でクラスごとに演劇や歌の披露が行われる。

 校内の全員が一堂に会し、その演劇を観覧する予定になっている。

 二日目には自主製作映画など、教室や屋台を使った外でのイベントが多くなり、二日目に限り外部の人たちもやって来る。

 実質的に文化祭のメインになっているのは二日目であり、一日目は学校の中での、いわば内輪の文化祭だった。


 中々いいアイデアを出すな、と赤石は頷く。


「それは面白そうね。もしそれをやるなら、演劇でミステリーの事件編を演じ、解決編は明日の二組で映画上映する、という風に、演劇を映画上映の告知風にするのはどうかしら?」

「おぉ、ええアイデアや、高梨!」

「面白そうでござるなぁ」

「確かに……」


 三矢を皮切りに、会議が過熱する。

 一日目に校内の生徒たち全員に演劇を見てもらい、二日目にその続きを教室で上映……確かに、行きたくはなるな、と赤石自身実感する。


「でもどっちにしても結局演劇の脚本は考えなあかんのやなぁ…………なぁ赤石、演劇の脚本とかもう考えとるか?」

「ん……あ、あぁ。演劇の脚本はもう出来てる」

「ほっ…………ほんまか!? なんや、なんなんや!?」

「私が演じるのよ。まともなものにしてくれないと怒るわよ?」


 自主製作映画の脚本に困っていたので、演劇の脚本に突っ込まれれると思わず、赤石は困惑顔をする。


「それは…………」


 文化祭の演劇の内容。


 そんなものは、はなから決まっていた。ラブコメの主人公たる櫻井にぴったりな――


「ロミオとジュリエットだ」

「ロミオとジュリエットぉ!?」


 ロミオとジュリエットだった。

 ラブコメの文化祭の王道と言えばロミオとジュリエットだろ? という安直な考えで、決めた。


「まぁ、悪くはないかもしれないわね。王道ではあるけれど、それだからこそ失敗も少ないんじゃないかしら」

「なんやそれ、高梨はそれでええんか!?」

「因みにでござるが赤石殿、それはまるっきりロミオとジュリエットのストーリーラインをなぞっていくのでござるか?」

「いや、ロミオとジュリエットを現代風にしてある。そうだな、SNSを通じてつながった二人の恋、って感じかな」

「現代風ね」

「まぁ、それでもええかぁ」

「なるほどでござるな」


 三人の同意も得ることが出来、演目は『ロミオとジュリエット』に決定した。

 ロミオとジュリエットを現在いまの世界観に置き換えた脚本は、既に書き終えていた。


「ロミオとジュリエットなら、ミステリー的な解決編と事件編を分けることは難しそうね」

「そうだな」

「となると、残った案は演劇するまでのドキュメンタリーということになりますな」

「案の一つとしてはそれが残るわね」

「そう……か」


 演劇が出来るまでのドキュメンタリー……。

 良い案ではあるが、いまいちどうすれば良いのかが頭に浮かばない。


「ドキュメンタリーになるなら、やはり、演劇班は演劇の練習などがあるでござるから、その風景を撮らせていただくことになるでござるかな」

「せやなぁ~……。そんなところになるんかもなぁ」

「でも、それなら少し山場とか盛り上がりに欠けるんじゃないかしら」


 議論は白熱するが、答えは出ない。


「せやなぁ…………ヤマタケ、どう思う?」

「確かに山場も盛り上がりも普通はないでござろうなぁ……」

「見てる人からしたら正直あまり面白くならないんじゃないかしら」


 方向性が、一つに定まらない。


「それもそうでござるなぁ……」

「ならこういうんはどうや? わざと演劇練習しとる人らに問題を起こしてもらってそれを解決してもらうんや」

「それはやらせにならないかしら?」

「いや、それは演劇をやる人たちに実際に問題があったかと思われないか?」


 赤石は横入りする。


「ほな、これはフィクションです、ってまず最初につけたらどうや?」

「そうするとドキュメンタリーというジャンルからは少々外れるような気がするでござるなぁ……」

「難しいわね…………」


 赤石は議論を聞きながらも、脳内で様々なアイデアを戦わせる。


「せやったらこれはどうや? 何か問題が起こったらその演劇までの風景をドキュメンタリーとして流して、何も起こらんかったら何か違うもん作るんや」

「それは無理ね。製作日数が間違いなく足りないわ」

「そうでござるな。拙者も無理があると思うでござる」


 赤石はうんうんと呻りながら、議論を聞く。




 結局、その日には答えは出ず、夕方になった。

 それぞれ電車で赤石の家までやって来ていたため、翌日に議論を持ち越すことにした。


「ほな、俺らは帰るわ! じゃあな、赤石!」

「また明日でござる、赤石殿!」

「じゃあまた明日ね、赤石君」

「そうだな、じゃあ」


 赤石は玄関の前で三人を見送り、三人は駅へと向かった。


「…………どうしようか」


 赤石は今もなお、映画の上映内容を何にするか、悩んでいた。



著作権は大丈夫……?

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