プロローグ
赤石悠人――
当時、中学二年生。
進学し、中学生となった赤石。
学校も終わり、いつもの様に学ランに身を包んだ赤石は、運動場の傍を通りかかった。
「――ッ!!」
直後、赤石は後頭部に激しい衝撃を感じる。
サッカー部の蹴り放ったボールが、赤石の後頭部を直撃したのである。
「あ~、全然見えなかったわぁ~」
「わりぃわりぃ」
くすくすと笑いながら、サッカー部の男たちがボールを拾いにやって来る。
赤石よりも一学年上の、三年のサッカー部たちが赤石を笑いにやって来た。
「どこ見て歩いてんだよ!」
「そんなところ歩いてたら危ねぇだろ」
「こんなおっそいボールくらい自分で避けろよ」
「ちゃんと周り見て歩けよ~」
ははは、と周囲の男たちも一緒になって、一笑に付した。
「……」
赤石は痛む後頭部を撫でながら、そのまま中学校を後にした。
「……」
赤石は自宅への道を、ただひたすらに、まっすぐに、歩く。
「おい、嫌われ者!」
後方から声をかけられる。
赤石は振り向かず、そのまま歩く。
「おい、無視すんなよ嫌われ者! お前のことだよ! なぁ」
男は小走りで赤石に追いつき、赤石の隣を歩く。
赤石にちょっかいをかける。
「自分、校内で嫌われてること分かってる? おい」
同じく、赤石よりも一学年上の、三年の男だった。
男は赤石の肩に腕を回す。
「お前の仲間なんか誰もいないんだからさ、そろそろ園田君に謝っちまえよ」
男は赤石に耳打ちする。
「何なら俺も謝ってやってもいいからさ。もういい加減ここまでこじれて強情にしてる意味あるか?」
「……」
赤石は何も話さない。
「まぁ、ただとは言わないけど。ちょっと買いたいものあるから、それ手伝ってくれるだけでいいんだわ。俺からも園田君に言っとくから」
な、な、と男は何度も赤石に尋ねる。
「ほら、ママの財布からちょっとお金抜いたら終わる話だろ? それで何もかも全部解決する話だろ? ちょっとママに怒られて今の状況が全部解決するなら、それが一番だろ? な? な?」
赤石の肩に回した腕に、力が入れられる。
「もう早く謝って楽になっちまえよ、な?」
「……」
赤石は無言で、男を見る。
肩に回された腕を振りほどき、赤石はそのまま何も言わずに先を急いだ。
「絶対後悔するからな!」
男は赤石の後方から、そう声をかけた。
「……」
赤石悠人、中学二年生。
赤石の人生にとってもっとも苦節であった時期が、始まろうとしていた。




