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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第12章 高校生活 こぼれ話篇
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閑話 高梨散歩はお好きですか?



 花の都、東京。

 高梨八宵その人は、東京に引っ越しをし、一人暮らしを始めていた。


 高梨の家の近くには、使用人である那須が居を構えている。


「……」


 もう高校の制服を着ることはない。

 高梨は何故だか持ってきた高校の制服を眺め、一人思案にふけっていた。


「静かね」


 思えば、自分が思っていたよりもずっと多くの人間と交流を築いて来た。

 自分は一人で生きていくものとばかり思い込んでいた。

 あんなに多くの同級生たちと言葉を交わし、仲を深め、何度も何度も交流をするとは、思ってもいなかった。


 高梨は自身の現状を顧み、くすりとする。


「……かわい」


 高梨は机の上に置かれたクマールくんのキーホルダーをそっと撫でた。

 目の下に濃いクマのある羊のキーホルダー、クマールくん。赤石からつい最近もらったプレゼント。

 高梨は赤石に似ている羊のキーホルダーを大切にしていた。


「よし」


 高梨は髪をまとめ、外に出る準備をした。

 化粧やお洒落に興味はない。着の身着のまま、大した装飾や意匠を凝らすようなこともせず、高梨は家を出た。

 東京なら、もしかしたらクマールくんにまつわる何かしらのグッズがあるかもしれない。

 高梨はクマールくんのグッズを求め、外に出た。






「お姉さんかわいいね」


 東京――

 街を歩けば、高梨の美貌は多くの人の目についた。

 校内でのみ通用するような美貌というわけでもなく、井の中の蛙というわけでもなかった。


「結構」


 高梨はぴしゃり、と断った。

 ナンパかモデルのスカウトかは分からなかったが、興味のない高梨は男の誘いを袖にする。


「すみません、私こういうもので……」


 名刺を持った男が、高梨に近づいて来る。


「どうも」


 ナンパではなかった。

 高梨は名刺だけもらって、すぐさまその場を離れた。


 花の都、東京――


 高梨の美貌は地元の小さな高校に収まるようなものではなかった。

 街を歩けば、いかがわしい店が立ち並ぶ薄暗い通りや、人でごった返した通りなど、場所によって様々な雰囲気を呈していた。


 高梨はショッピングモールや雑貨店を回り、クマールくんのグッズを探し求めた。


「……」


 スマホを駆使して、高梨は東京中を回った。


「あ!」


 雑貨店を回るところ六店目、サブカルを扱うと話題の雑貨店で、高梨はついにクマールくんのクリアファイル、キーホルダー、シール、アクリルスタンドなどを発見した。


「……」


 高梨はクマールくんのグッズをそれぞれ三つずつ購入し、微笑みを湛えて帰宅した。


「よし」


 高梨はクマールくんのアクリルスタンドを机の上に立てて置いた。


「かわいい」


 高梨はクマールくんのクリアファイルに必要な書類を入れ、部屋を掃除した。

 本を開き、クマールくんのアクリルスタンドに見守られながら、読書をする。


「ふふふ」


 高梨は疲弊した一日を送ったが、クマールくんでいっぱいになった部屋に満足していた。







「何か良い物ないかなぁ~」


 赤石、須田の二人は大学近くの生活用品店へとやって来ていた。


「新生活にいる物って何だと思う?」


 須田が赤石に尋ねる。


「家にあったものを思い出しながら、これ良いな、と思ったのを買えば良いんじゃないか?」

「ほな、新生活やる時に備えて今からやってみよう、思うんやけどちょっと手伝ってもろてええかなぁ?」

「なんで漫才始めようとするんだよ」


 赤石が須田を呆れた顔で見る。


「コンコン、すみません、新生活始めたいんですけど!」

「そんな仮入部みたいなシステムじゃないだろ、新生活。自分の足で一つずつ確認しろ」

「菜箸とかいるかな?」

「一人暮らしの男が最後に買うもんだろ、そんなもの」


 須田は食器や箸のコーナーを横切りながら言う。


「でも食器はいるよなぁ」

「ある程度いるな。数が少ないと毎回すぐに洗わないといけなくなるしな」

「すみません、この食器ワンダース」

「鉛筆か。そんなにいらんわ」


 赤石は食器をいくつかカゴの中に入れる。


「いや、一人暮らしならワンダースはそこまで変な提案でもないと思う」

「まぁそれもそうか」


 赤石は茶碗やコップをカゴの中に入れていく。


「お母さん、これも買ってこれも買って!」

「はいはい」


 須田が赤石の袖を引っ張る。


「この一流天才ライバー、惣菜カケルが監修したなんでも切れる包丁買って!」

「いりません、そんなもの!」


 赤石は惣菜カケルの監修した包丁のコーナーを通り過ぎる。


「あなたも止めなさい、あんな胡散臭い配信者のおすすめなんて買おうとして」

「だってカケルの監修した包丁は日本一だもん」

「包丁を作ってるのは職人なんだから、ユーザーより職人の腕を信じなさい」


 赤石はカートの中のカゴに必要なものを入れながら、須田と相談する。


「靴下とかいるかなぁ」

「ある程度はいりそうだよな」

「ワンダース?」

「なんでお前は毎回ダースセットで物買おうとするんだよ」

「学生気分が抜けなくて」

「学生気分でいちゃあ困るねぇ、須田君」

「す、すみません!」


 須田は靴下を五個取って来た。


「全部違う色の靴下取って来た」

「全部黒で良いだろ」

「全部色違う方が毎日違うテンションでいれて面白いじゃん」

「靴下次第でテンションが変わるのか、お前は。毎日違うテンションでいたくないだろ」

「そっちの方が楽しくね?」

「情緒不安定すぎるだろ」

「黒色の靴下履いてる時は露骨に後ろ向きな性格になる」

「漫画のキャラみたいだな」

「あっ、自分まだそれやってたんだ。はは、ウケる。まぁよく知らないけど頑張ってよ」

「イヤなヤツすぎるだろ」


 須田は五色の靴下をカゴの中に入れた。


「虹に使われてる色と同じ色の靴下買ってきた」

「感性は学生未満のようだな」

「誰が幼稚園児だ」


 べ、と須田が赤石に舌を出す。


「お」

「え?」


 赤石と須田が二人で買い物をしているところ、赤石の先輩にあたる未市と里野が、前方からやって来た。




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高梨あまりにもいじらしくて好き、報われてくれ
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