エピローグ
卒業式も終わり、生徒たちの進路も決定した。
志藤は合格ラインに届かず、大学受験に失敗した。
「だから言ったのよ。ちゃんと勉強してないから、まともに大学も受からないのよ。あぁ、もうどうするのよ。こんな所で躓いて、もう人生お手上げじゃないの。だから早く勉強しときなさい、って言ったでしょ。大学なんかで躓いて、これから人生どうやって生きていくつもり? それとも自分、犯罪して生きていくつもり? なんでこうなったのよ……」
母は志藤の不出来を責め、小言を言うようになった。
「ちっ」
娘である志藤は母の小言に嫌気がさし、自室にこもる生活が続いた。
浪人することとなった志藤は、また一年受験に向けて勉学に励むこととなる。
「あぁ、もうおしまいよ……。この私の娘がこんな所で落ちこぼれになるなんて……」
母は娘の将来を悲観し、ただただうなだれていた。
北秀院大学、映画研究部――
「ほら、そこ! きびきび働く!」
新入生を間近に控えた映画研究部の部員たちは、新入生のために部室を片付けていた。
「ほら、サト。邪魔だから立って」
誰もが振り向くような美貌と知性を兼ね備えた可憐な少女、未市要。
未市は部室を片付けながら、ソファーでくつろぐ里野に声をかけた。
「邪魔……?」
里野はおっとりとした声で、未市に返答する。
しなやかで艶やか。独特の空気感を持った里野は、どこか儚げであった。
「そう、邪魔」
「へぇ……」
里野は文庫本を読みながら、それでも頑なに動こうとしなかった。
「動かないならサトも片付けるよ」
「やってみて」
「はぁ……」
未市は頭を抱える。
脚を畳んで文庫本を読みふける里野の太ももを掴み、そのまま持ち上げた。
「よっ!」
そして別のソファーへと移動させた。
「ナイッス、ボール」
ゆっくりと、棒読みで。
里野はニヒルに笑った。
「ナイスボールじゃないんだよ、サト」
「新入生なんて、来なくても、良いよぉ」
「こらこら。新入生来ないと困るでしょ」
「別にぃ」
里野、未市の二人は部室の部屋を片付ける。
もっとも、未市しか働いていなかったが。
「要のお気にの、赤石君。来るからかなぁ」
「……」
未市は無言で部室を片付ける。
「良い後輩だよ、赤石君は」
「そんな風には、見えなかったなぁ……」
里野は細い腕を撫でるようにして掴む。
「楽しみ、だなぁ」
「変なちょっかいかけないでよ、サト」
「ふふふ……」
里野は妖しく笑った。
高校を卒業し、大学へと進学する。
赤石たちを迎える未市や里野たちも、着々と準備を始めていた。




