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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第12章 高校生活 こぼれ話篇
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第548話 暮石へのリークはお好きですか? 2



「それ……」


 鳥飼は青ざめる。


「それ、何?」


 そして、暮石の前でとぼけて見せた。


「それ、何? じゃないよね。見たら分かるよね、これが何か」


 暮石は再び鳥飼にスマホを向ける。


「や……」


 鳥飼は目を白黒させる。


「嫌ないたずらだなぁ」


 そしてため息を吐いた。


「どういうこと?」

「それ、あれでしょ? AIの動画生成で作ったんでしょ? タチ悪いよ、三葉」


 やだなぁ、と鳥飼は肩をそびやかす。


「冗談にしては趣味が悪いし、騙すにしてはクオリティがお粗末だよ~」


 終わり終わり、と鳥飼は首を振る。


「でもこれ、展開として何も間違ってないよね? あの日あの時と全く一緒」

「……」

「この動画が送られてきたんだよね。私あてに。少なくとも、こういう流れだったなんて私とあかね、あと赤石君くらいしか知らないよね?」

「じゃあ、その赤石とかいう奴が作って、三葉を騙すために……」

「ううん、違う。赤石君じゃない」

「……」

「そんなわけないよね?」

「……」


 鳥飼は黙り込む。


「それに、どう見ても動画に不審な点とかないし、何も矛盾なんてない。信頼できる筋からもらったデータなんだよね」

「……」


 暮石は鳥飼を追い詰める。


「ごめん!」


 鳥飼はすぐさま、その場で暮石に土下座した。


「本当は冗談で、その動画の通りだった!」

「……」

「だから……ごめん、三葉! 私、どうしてもみつ――」


 暮石が片手で鳥飼の両頬を挟んだ。

 鳥飼は言葉が喋れず、そのまま怯えた表情で暮石を見る。


「冗談……?」


 暮石は生気のない目で、鳥飼を見据える。


「あれが……冗談?」


 鳥飼はこくこくと、頭を振る。


「は?」


 暮石は強い口調で、鳥飼を責めた。


「ご、ごめん……」


 鳥飼はただ、謝罪するしかない。

 志藤は黙ってその様子を見ていることしか、できない。


「じゃあ私は?」

「……」

「私は、あかねの冗談を信じて、赤石君を徹底的に糾弾したってこと?」

「……」


 鳥飼は、何も言わない。

 真実は、時には最も残酷な刃になり得る。


「なんでそんなことしたの?」

「そ、それは三葉が心配で……」

「なにが?」

「騙されてるから……」

「何に?」

「あいつに」

「どうやって?」

「……」

「私がいつ、どうやって、なんで騙されたと思ったの? 答えて」

「……」


 鳥飼は暮石から目を逸らす。


「話にならない」


 暮石は鳥飼に背を向け、歩き出した。


「ご、ごめん! 私、三葉が騙されてると思って仕方なく……」


 鳥飼はすぐさま立ち上がり、暮石の手を取る。


「私が、いつ、どうして騙されたと思った訳? なんでそう思ったわけ? どういう行動の結果、何を見てそう思ったわけ?」


 暮石は鳥飼にまくしたてる。


「意味分かんない」


 暮石は鳥飼に吐き捨てた。


「あかねの話は全部自分が主役で、主役の自分に合わせて周りの人の行動を、誰かの心意を勝手に決めつけてるだけだよね」


 奇しくも、赤石が鳥飼に言ったことと符合する。


「だ、だって三葉が……」

「私はっ!」


 暮石が大声を上げる。


「私はっ! そんなこと、たったの一度だって! 頼んだことなんてない!」

「……」


 暮石の怒気に、鳥飼が震える。


「これじゃ、私馬鹿みたいじゃん……」


 暮石は瞳を潤ませる。


「あかねのヒドい冗談に乗っかって、赤石君を追い詰めて、これじゃ私が、馬鹿みたいじゃん……」

「……」


 暮石はうつむいた。


「何が騙されてると思って、だよ」


 暮石はぼそ、と呟く。


「騙してるのはあかねの方じゃん」

「……」


 鳥飼は目を小さく開き、そして言葉を噛み殺した。


「赤石君に謝る。許してくれるかは分かんないけど」


 暮石は赤石へ謝罪することを決めた。


「そりゃ白波も私たちと縁切るわけだよ。だって、全部あかねの一人芝居だったんだから」

「……」


 鳥飼は暮石から視線を逸らし、だが、


「お――」

「なに」


 振り絞るようにして、声を上げる。

 暮石は冷たい目で鳥飼を見下げる。


「犯されてたくせに!」

「……」

「……」


 しん、と静まり返る。


「三葉なんて、犯されてたくせに!」


 暮石は硬直したまま、鳥飼をただ、見る。


「私がいなかったら、犯されてたくせに!」

「……」


 鳥飼は地面を強く、殴った。


「中学時代危ない目に遭ったのは誰だと思ってるの!? 誰のおかげで、今まで無事に過ごせたと思ってるの!? 全部、全部私がいたから、何とかなったんだから!」

「……」


 暮石は鳥飼から視線を外した。


「昔の話じゃん」

「だから! また同じことが起こっても、全然おかしくなかった!」

「……」


 鳥飼と暮石の、中学時代の記憶。


「三葉は犯されそうになってたんだから、私がそう思ったって仕方ないじゃん! 私が三葉のためを思って動いたって仕方ないじゃん!」

「……」


 鳥飼は顔をしわくちゃにしながら、暮石に微笑みかける。


「だって三葉、私がいなかったらどうせ男に捨てられるだけの、馬鹿な女なんだから」

「……」

「……」


 誰も、何も、喋らなかった。

 その場にいる皆が口を閉ざし、黙り込んだ。

 風の音と、石が転がる音だけが、その場を支配する。


「自分が馬鹿な男に引っかかって私に助けてもらったくせに、今さらになって私のこと悪く言うのって、違うじゃん」

「……」

「私が! 私がいたから、三葉はこうやって、今も笑って過ごせてるんだよ!」

「……」


 暮石は歯を食いしばる。


「昔の話なんてなしじゃん」

「……」

「そんなこと言われたら、私もう何も言えなくなっちゃうじゃん」

「……」


 ごめん、と鳥飼は小さく呟いた。


「昔の話は昔の話だし、今の話は今の話だよ。だからって、嘘吐いて赤石君を貶めたあかねが一番悪いのは、変わらないよね」

「……うん」


 鳥飼は力なく、うなだれた。


「私も一緒に謝ってあげるから、だから、赤石君にごめんなさいしに行こ?」

「……」

「大丈夫。ああ見えて赤石君、結構情にもろいタイプだから、ちゃんと謝ったらきっと許してくれるよ」

「……」

「私は赤石君と交渉するのは得意だと思うんだ」

「……」


 鳥飼は、何も話さない。


「それに」


 暮石はうっとりと、目を弓なりにする。


「私、赤石君のこと結構好きだったんだよね」

「……」


 鳥飼は絶望の眼差しで、暮石を見る。

 暮石はどこか恍惚な表情で、何か活路を見出したかのような表情で、天を仰いだ。


「あっ……」


 志藤もまた、絶望の表情で暮石を見ていた。

 三人の間で、決定的に何かが違った、瞬間だった。


「良かった。赤石君があかねにそんなことするような人じゃなくて」

「……」


 鳥飼は口を開けたまま、ただただうつむいた。


「これでちゃんと、好きになれそう」

「……」

「……」


 暮石が鳥飼に肩を貸し、鳥飼はゆっくりと立ち上がった。

 暮石たちによる赤石への謝罪作戦は後日決行されることになる。


「なんで……」


 志藤は強く拳を握りしめた。


「なんでゴミが喜ぶような社会ができてるんだよ……」


 志藤は赤石への憎しみを募らせたまま、激しい怒りに炎を燃やしていた。

 



 そして三者三葉、それぞれの思いを持ったまま、卒業式へと向かう。

 それぞれの意志はそれぞれの行動をもってして顕現し、独自のサークルを築き上げながら、やがて何かしらの結果へと収束していく。


 暮石たちの高校生活は、苦い形で終わることとなる。

 そして志藤にとって、それが暮石たちとたもとを分かつ大きな切っ掛けとなった。

 結果的に志藤の願いは何一つ叶うことなく、ただただ不快な思いだけを残して、卒業することとなった。






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― 新着の感想 ―
暮石何考えてるかわからんかったけどシンプルに異性関係ゆるい子っぽいな…
志藤たもと別ってて草。 暮石の謝罪はどこまで想定どおりだったんだろ? 終盤のあれは鳥飼も予想してなかったけど暮石の計画通りだったのかな? 告白する直前の謝罪見ると同調圧力で無理やり許しを得た認識はあり…
色んなIF展開もいける 中学時代にヤラレてうつろ目男性恐怖症√ 赤石自体がもうひとりの幼馴染の高校に行って 櫻井ハーレムメンバー無惨な破滅√ etc...
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