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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第11章 卒業式 後編
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閑話 北秀院大学の事前説明会はお好きですか? 3




「到着~!」


 北秀院大学を出て、赤石たちは近隣のスーパーへとやって来た。


「悠人氏、こうして近くのスーパーにやって来ましたが、どんなご気分ですか?」


 船頭が手を赤石の顔の前に持って来る。


「超気持ち良い」

「とのことです。現場からは以上です」


 船頭がお返しします、と黒野と須田を見る。


「古すぎ」


 黒野は冷めた目でそう言った。


「二十四時間……」


 黒野はスーパーを見上げ、ぼそ、と呟いた。

 赤石たちは北秀院大学付近に併設された二十四時間営業のスーパー、サンゼリゼを見上げた。


「なんで普通のスーパーが二十四時間も営業を……」


 須田はわなわなと震える。


「どうする、これで店入ってロボットしかいなかったら?」

「怖すぎて泣いちゃうかも」

「赤ちゃんだな」

「須田赤ちゃんだ!」


 赤石たちはサンゼリゼへと入った。


「大学近くに二十四時間営業のスーパーなんてあったら頼もしいね」


 船頭はこれからの四年間の大学生活に、胸を躍らせる。


「全くだな」

「俺もう楽しみで仕方ねぇよ」

「別に……二十四時間営業しててもどうせ昼しか来ないし」


 黒野が水を差す。


「まぁそれは言えてるかもしれない」

「え~、そう? 夜に宅飲みとかしてて、酒なくなったけど近くにサンゼリゼあるから酒補充しに行かね、とかなりそうじゃない?」


 船頭はぱぁ、と顔を輝かせる。


「まだ飲めないのにもう酒のことなんて気にして、お前は」

「もうウキウキだよ~!」


 船頭は小躍りする。


「酒カス……」

「酒カスはもう別の意味だろ」


 赤石は店舗の中に置いてあるカゴを取った。


「何食べる~?」


 赤石、須田、船頭、黒野の四人は生鮮食品のコーナーへとやって来た。


「野菜食おうぜ、野菜」

「さすが、健康に気を遣う男」


 須田は野菜をカゴの中に入れる。


「野菜嫌い……」


 黒野がべ、と舌を出す。


「だからお前はそんなすぐキレるんだよ」

「野菜と性格に関係はない……」

「いや、多分論文とか探したらそういうのあると思う」

「黙れ」


 黒野がきっ、と赤石を睨みつける。

 赤石は肩をそびやかした。


「私フルーツ好き」

「女子かよ」

「女子なんだけど」


 船頭はリンゴをカゴの中に入れた。


「なんか一本、これっていうの決めて、それ作るための材料探そっか?」


 船頭は赤石たちから一向に出ない意見を、次々と出していく。


「さすが、率先して何かやってくれる奴がいると何もしなくて良いから楽だな」

「えへへ」


 船頭は照れながら後頭部を撫でる。


「何でも自分がって前に出るやつ、私は嫌いだ」


 黒野がボソ、と呟く。


「その気持ちも分かるな。何でも自分が、って前に出ようとしてるのも気分が良いものじゃないしな」

「え、黙ろ」


 船頭が引き下がる。


「知らない人の間でならそうだけど、知ってる間柄ならどんどん前に出て欲しいだろ」

「さすが悠人、良いこと言う」


 再び船頭が前に出た。


「皆、何か食べたいものある~?」


 船頭が振り向き、赤石たちに聞いた。


「シェフの気まぐれサラダ」


 赤石は真っ先に手を上げ、宣言する。


「悠人の言うことは置いておいて、っと。須田ちは?」

「俺はなんでも。嫌いな食べ物とかないから」

「さすが健康超人須田ち。黒野ちゃんは?」

「グミ……」

「お菓子じゃん」


 赤石が割って入る。


「シェフの気まぐれサラダに言われたくない……」

「シェフの気まぐれサラダの方がまだマシだろ」


 特に意見はまとまらなかった。


「やっぱ皆で食べるから、皆で食べれるようなものとか良いよね~?」


 船頭がうっすらと方針を示す。


「化石燃料とか」

「ロボットか!」


 船頭が笑いながら、あちょ~、と赤石の頭をチョップする。


「鍋系とか皆で食べれるよな!」


 須田が船頭の方針に補足する。


「鍋……。皆で同じ箸で鍋つついてるの、衛生的に気持ち悪い」

「その気持ちは本当にちょっと分かるな」


 赤石が黒野の発言を補足する。


「なるほど、鍋系で、皆でつつかないような……」


 船頭は膝を打った。


「カレーとかどう?」

「「おぉ~」」


 赤石と須田が拍手する。


「会心の一撃、とかテロップ出てたと思う」

「マジ? マジ?」


 赤石に褒められ、船頭は嬉しそうにする。


「無難なところ……」

「カレーなんて一人で作ったら何日間食い続けないといけないんだよ、って話だからな。ナイスアイデアだぞ、ゆかり」

「ゆかりちゃんグッジョブ!」


 船頭は親指を上げた。


「じゃあカレーの材料買わないとだね~」


 船頭は生鮮食品コーナーを見ながら、じゃがいもとニンジン、玉ねぎを取って来た。

 赤石はカゴを持ったまま、船頭の後ろをついて行く。


「カゴ持ってついて行くだけ」


 黒野がくくく、と赤石を笑う。


「カゴも持ってない奴が笑うんじゃないよ」

「使役されてる雑魚モンスター」

「使役されてる雑魚モンスターじゃないんだよ」

「悠人が持ってくれてるから、私はこうしてのびのび動けてるんだからね!」


 船頭はカレーの材料を全てカゴに入れた。


「それにしても動きが機敏だったな。すぐ材料持ってきただろ」

「私お家で家族のご飯作ってるからさ。だからこういうの結構得意なんだ」

「なるほど」


 船頭が家で料理を作っているとは、意外だった。


「家事できますアピール」

「男の子の胃袋、掴んじゃうぞ!」


 船頭はめっ、とウィンクをした。


「そんな食べ物くらいで大袈裟な……」

「悠人、本当張り合いないよね」


 船頭はため息を吐いた。


「美味しいのは何でも歓迎だぜ!」


 須田は歯を見せて笑う。


「ほら、須田ち見習ってよ」


 赤石は須田を見た。


「まずい料理は、作るんじゃねぇぜ!」

「最低! 女の敵!」


 もうイヤ、と船頭はてこてこ前を行く。


「俺じゃがいも好きだから、じゃがいももう一袋買っておくか」


 赤石が近くのじゃがいもを取った。


「じゃがいも小僧」

「誰がだ、誰が」


 くくく、と黒野が笑う。


「お前こそ、イモ臭い服着やがって」

「あぁ、言った、言った!」


 黒野は顔を真っ赤にして赤石を指さす。


「気にしてたのに、気にしてたのに!」


 お母さんに買ってもらったやつなのに、と黒野は手をブンブンと振る。


「じゃがいもでこんなに悪口作れるんだな」

「私はイモ臭くない!」


 黒野はぷんぷんと怒る。


「黒野は攻撃力が上がった。訳も分からず、自分を攻撃した」

「戦わされてる……!?」


 赤石をモンスター扱いした黒野は、赤石からモンスター扱いされた。


「カレールー取って来たよ~」


 船頭はカレールーを持って帰って来た。


「普通ので良いよね?」

「果たして普通じゃないカレールーがどんなのか分からないが」


 船頭はカゴの中にカレールーを入れた。


「悠人の家って鍋ある?」

「鍋ない家どこにあるんだよ」

「いや、鍋ない家全然あるよ~!」


 船頭が語尾を上げる。


「今、家に鍋あるよ~、って人?」


 船頭が手を上げる。

 赤石、黒野、須田も手を上げる。


「ほら見て~、こんなに手上げてない。私たちしか鍋持ってないよ?」


 船頭は周りを歩く客を見渡しながら、そう言った。


「何人に聞いてるつもりなんだよ!」

「聞こえてないよ!」


 船頭はわはは、と楽しそうに笑った。




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― 新着の感想 ―
こういうやり取りが一番楽しいまである。
船頭、高校の皆や先生に、難関合格でなんて言われているか気になる。
楽しそうですね。暮石さんのことは忘れましょう。
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