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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第11章 卒業式 後編
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第519話 新入生のオフ会はお好きですか? 3



 赤石は家で一人、暮石からの連絡を待っていた。


「……遅いな」


 時計の短針は十二を超えていた。

 日をまたいでもまだ、暮石からの連絡はなかった。


「何かあったのか……?」


 赤石は多少の不安を抱きながらも、ベッドの上で暮石からの連絡を、待っていた。








「いけ~!」


 ファミリーレストランで食事を楽しんだ暮石は、オフ会仲間と二次会のボウリングに来ていた。

 カランカラン、とボウリングのピンが全て倒れる。


『スペア!』


 ボウリング場に備え付けられている液晶モニターから、スペアを知らせる音声と映像が流れる。


「いぇ~い!」


 暮石は喜びながら戻って来る。


「みーちゃんみーちゃん、いぇ~!」


 斉藤が両手を上げた。


「いぇ~! スペア~!」


 暮石は斉藤とハイタッチをした。


「みーちゃん、うぃ!」

「うぃ~!」


 暮石は同じレーンで座る大男とハイタッチをする。

 髭を生やし、恰幅の良い体躯にアロハシャツを着た男は、小山田武彦おやまだたけひこと言った。

 ツウィークでヤニカスゆきとして活動し、二浪の末、北秀院大学に合格する。

 ファミリーレストランでは暮石とは別卓にいたが、釜井が帰宅するのと入れ替わりで暮石たちの集団に入って来た。


「ヤニタケ、こんな所でタバコ吸わないでよね~?」


 小山田が来ているアロハシャツの胸ポケットに、タバコが入っていた。

 暮石は目ざとくタバコを指さし、小山田を注意する。


「え、ボウリング場ってタバコ駄目なの!? いつから!?」

「最初からです~!」


 暮石は自席に戻って来る。


「みーちゃん、うぃ」

「お、きゅーちゃん、うぃ!」


 暮石は角井とハイタッチをした。


「すげぇじゃん、女の子なのにスペアとか」

「でしょ? プロボーラーとかなっちゃおっかなぁ~」


 むき、と暮石が力こぶを作る。


「力こぶちっちゃ」


 角井が暮石の力こぶを見て、くすくすと笑う。


「笑わないでよ~」


 む~、と暮石は頬を膨らませる。


「きゅーちゃん、今日予定大丈夫なの? 二次会とか来ちゃって」

「全然」


 二次会のボウリングに来るにあたり、初期メンバーのいくらかは帰宅していた。

 とりわけ、オフ会にいた女子は暮石を除き、全員が帰宅していた。


「もう結構遅いよね~」


 暮石はスマホを見る。

 スマホには、二十時三十二分と表示されていた。


「俺とも喋ってよ、みーちゃん」


 角井と話している所に、小山田がずい、とやって来る。


「なに~? ヤニタケ本当寂しがりだな~」

「俺でかい図体して寂しがり屋なんだよな~」


 ヤニタケはがはは、と笑う。


「おい、お前ら俺の華麗なるボウリングテク見てなかったのかよ!」


 斉藤はストライクを出し、帰って来た。


「ごめん、見てなかったわ」

「俺も」

「私も」

「お~ま~え~ら~」


 斉藤がぷるぷると震える。


「ほら、行けヤニカス!」

「ヤニカスちゃうわ!」


 斉藤が小山田の尻を蹴る。

 小山田は笑いながらボウリングの球を取り、投げに行く。


「みーちゃん、俺ボウリング上手いっしょ?」

「上手い上手い。どこで習ったの?」

「そりゃあ独学っしょ」

「すご~い!」


 暮石がパチパチと手を叩く。


「そんな動きづらそうな服なのに」


 斉藤は季節外れの長い黒のロングコートに、ぶ暑いブーツを履いていた。

 耳にはピアスをし、毛先をワックスで遊ばせていた。


「こいつ典型的なパリピ系だよね、きゅーちゃん」

「はは」


 角井は独特なファッションで身を固め、ハットをかぶっていた。

 柔和な顔つきで角井は薄く笑う。


「誰がパリピじゃ! 陰キャだ、陰キャ!」


 目つきの鋭い斉藤は、目だけで笑う。


「おーーーいーーー!」


 小山田が二投し、その場に崩れ落ちる。

 液晶モニターを見れば、小山田はガタ―を二回出していた。


「あははははは、ヤニタケ下手くそ~!」

「あいつ本当パワーだけで生きてんじゃね?」

「ははは」


 三人はのそのそと歩いて戻って来る小山田を見て、笑う。


「おい、笑うなよお前ら~! 人が真剣に球投げてたってのによ~……!」

「いや、お前下手くそすぎだろ!」

「くっそ~! こんなならボウリングもっとやっときゃあ良かったなぁ~」


 テクニック不足を指摘された小山田が口を曲げる。


「まぁまぁ、また皆で来たら良いんだから」


 暮石は小山田の背中をポンポンと叩き、慰めた。


「ありがとよ~、みーちゃん。もうこいつらは駄目だわ。俺に優しいのはみーちゃんだけ」


 こいつらヒドいのよ、と小山田が暮石に泣きつく。


「止めて、皆この子をいじめないで! 私の子なんだから!」

「デカすぎだろお前の子供」

「もういいわ、みーちゃんしか信用できないわ、本当」


 小山田はえんえんと嘘泣きをした。


「次は俺の番かぁ」


 よいしょ、と伸びをして角井がボーリングの球を持つ。


「いや~、楽しいねぇ、本当」

「マジでそれ」

「みーちゃん本当面白いわ~」


 暮石たちはボウリングを時間いっぱい楽しんだ。







 二十二時――


 三次会にカラオケに来ていた暮石たちは、四人になっていた。

 暮石、斉藤、角井、小山田の四人はカラオケボックスで歌う。


「いやぁ、歌うの久々だわぁ」


 小山田がコキコキと首を鳴らす。


「歌もダメダメなんじゃねぇの、お前?」

「歌は歌えるわ!」


 斉藤が小山田を茶化す。


「みーちゃん、マラカスお願いね」

「オッケー!」

「いらんだろ」

「賑やかし隊長任せてよ!」

「みーちゃんはこいつ甘やかしすぎ。なに、好きなの?」


 斉藤は苦笑する。


「子供を甘やかすのも親の仕事なのよ!」

「ママー!」


 暮石は茶化してその場を流した。


「よし、歌うかぁ」


 小山田は宣言通りの美声で、歌を歌った。


「お、おぉ~!」


 小山田が歌い終わり、暮石はパチパチと手を叩いた。


「ヤニタケ、本当に歌上手いじゃん! ちょっと見直した!」

「でそ?」

「嘘じゃねぇのかよ」

「俺の数ある特技の一つだなぁ」


 がははは、と小山田が笑う。


「どこがだよ」

「これから一個ずつ俺の特技見せてくかぁ~」


 小山田がぐるぐると腕を回す。


「もう弾切れだろ」

「まだまだいっぱいあるわ!」


 斉藤が小山田からマイクを受け取った。


「じゃあ俺も歌うかぁ」


 斉藤が入れた歌、青葉の結晶が、液晶モニターに表示される。


「うっし」


 斉藤も首をコキコキと鳴らした。


「じゃ、みーちゃんアシストよろしく」

「え、えぇ!?」


 暮石は斉藤にマイクを渡された。


「急に!? 急に!?」

「ほら、もう始まるけど」

「えええぇ!?」


 斉藤は歌い始め、暮石も斉藤に合わせて歌う。


「オーイェー、いつまでも俺たちのす~ぐ~そばで笑ってた~」


 斉藤が美声を響かせる。


「「オーイェー、俺たちの絆忘れ~ぬ~未来まで~~」」


 暮石と斉藤がハモる。


「オーイェー、オーイェーーーー!」


 暮石と斉藤は二人で歌を歌い切った。


「いぇ~い」


 歌い終わった後、斉藤は暮石にハイタッチを求めた。


「はぁ~、もう急にマイク渡すの止めてよ~」


 暮石は斉藤とハイタッチをしながら、ほっと一息ついた。


「いやぁ、皆歌上手いですなぁ」


 暮石は斉藤たちとカラオケを楽しんでいた。








「連絡する、って言ってたよな……?」


 赤石は部屋で一人、暮石からの連絡を待っていた。






「てかさ、みーちゃん今から俺ん家来ねぇ?」

「え……?」


 暮石は斉藤と二人で、夜空の下にいた。




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― 新着の感想 ―
暮石嫌いだったからこのまま行ったら私的にはうれしいけど、ここで切るってのはなんかありそうなんだよね。
まあこの女もとからクズたからな
これはオタサーの姫w お持ち帰りからのNTRか……胸が熱くなるな……w
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