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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第11章 卒業式 後編
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第501話 初めての下宿先はお好きですか? 5



「今日はこのくらいにしておいてやろう……」


 結局、赤石を満足にくすぐることはできなかった。

 暮石はふう、と額の汗を拭った。


「道端で遊ぶな、道端で」

「道端じゃなくてお店の広場です~! まだ道端じゃないです~! この番組は人の往来に注意し、専門家の監視の下、安全に気を遣って放送されてます~!」

「テレビ番組か、お前は」


 暮石はぶうぶうと赤石に反論する。


「じゃあ帰るか」


 赤石は腕時計に目を落とした。

 時計の短針は九の字を指しつつあった。


「あ、ちょっともう一ヶ所行きたいところあるんだけど」


 暮石があそこ行こ、と指をさした。


「まぁ、別に良いけど……」


 二十四時間営業の総合ディスカウントストアが、そこにあった。


「まだエッチなやつ買ってないから」

「完全に忘れてたな」

「じゃ、入れるよ?」

「入るよ、な」


 二人は店の中に入った。


「何買うんだ?」

「まずはエッチなやつでしょう、赤石氏」


 ちっちっち、と暮石が悪い顔でにやける。

 大人用のおもちゃコーナーのある階上を指さす。


「エスカレーター乗ろっか」

「分かった」


 赤石と暮石はエスカレーターに乗り、三階を目指した。


「あ、赤石君後ろ乗って」

「……?」


 暮石が前に乗り、赤石は暮石の後ろに立った。


「見えちゃうから」

「なるほど」


 暮石は自身のスカートを手で押さえる。


「普段どうしてるんだよ」

「いや、別に見えても良いやつなんだけどね? 見えても良いやつなんだけど~」

「見えても良いやつなんてない」

「赤石君、嫉妬してる~」


 暮石がにしし、と笑った。


「赤石君が私のおパンツガードになってるというわけで」

「ダサい名前」

「おパンツガード、赤石君!」


 暮石は両腕をクロスさせ、ポーズを取る。


「このカードを場に出した時、おパンツガーディアンを二枚まで手札に加えることができる」

「大層な名前だなぁ、おい」

「おパンツガーディアンを二枚手札に加える、じゃないからね? 二枚まで手札に加えることができる、だからね? そこの効果のところキチッとしてもらわないと」

「カードゲームではちょっとした言い回しでカードの効果が大きく変わる、とか知らないんだよ」

「おパンツガーディアン赤石とおパンツガーディアン青木を融合させることで、おパンツガーディアン金城が誕生する」

「融合させるな」

「彼氏融合! いでよ、ニュー彼氏!」

「俺を合成素材にするな」

「お前の重荷、全部俺が背負ってやるよ」


 暮石は髪をかき上げ、ふっと笑った。


「キターーーーーーー! ニュー彼氏ーーーーーー!!」


 パチパチ、と暮石が拍手する。


「レアキャラが当たった時の甘いボイス止めろ」

「赤石君が絶対言わないセリフ」

「言うわけないだろ」

「愛情が不足しているけど頭の良い赤石君と、愛情はあるけど頭の悪い青木君を融合して、愛情があって頭の良いニュー彼氏が出来上がる」

「欠点があるからこそ愛せるみたいな所あるから」


 そうこうしているうちに、三階に到着した。


「……」

「……」


 二人に妙な緊張感が走る。

 バッグやコスメを売っているフロアの一角で、大人用のおもちゃが売ってあった。


「じゃあ赤石君、私ここからは一人で行くのだ……」

「そうか」


 暮石はごくり、と生唾を飲み込む。


「ちょっと赤石君にエッチなの買ってる所見られるの恥ずかしいから、一人で行くね」

「そのくらいの良識はあるんだな」

「まるで普段は良識がないみたいな発言」

「ないだろ。お前が突っ込み役に回るな」


 赤石は暮石をポカ、と叩く。


「まぁ普段は突っ込まれる側なんですけれども」


 ぐへへ、と暮石がにやける。


「なんでもかんでも下ネタに変換するな」

「全自動下ネタ変換マシーン」

「全手動だろ」


 赤石たちは三階に着いた。


「とうちゃっく~!」


 とう、と暮石がポーズを決める。


「楽しそうだな」

「赤石君と一緒にいるから、何しても楽しいよ」

「それはまた、同慶の限りだよ」


 赤石は辺りを見渡した。


「じゃあ俺はそこらでバッグ見とくから、買い終わったらあとで落ち合おう」

「うん、おっけ」


 暮石と赤石は拳を合わせる。


「達者でな、兄弟」

「エロいおもちゃ買いに行くのにこんな別れ方するのダサすぎるだろ」


 暮石は大人用のコーナーへと向かう。


「……」


 暮石は赤石に背を向けたまま、握りしめた拳をあげた。


「何を格好つけてるんだ、あいつは……」


 赤石は暮石と別れ、近くのバッグコーナーを物色し始めた。






「おまた~!」


 十数分後、暮石は大人用のコーナーから帰って来た。


「あ、やば、おまたとか言っちゃった」


 暮石は内股になり、照れる。

 赤石は暮石を黙殺する。


「で、欲しいものは買えたか?」

「うん!」

「良い返事」


 暮石はにこにこと赤石に笑顔を向ける。


「今世紀最大のにこ~」

「そうか」


 暮石は体を小さく横に揺らす。


「見る人が見たら私から音符とか出てると思う」

「オーラ見える人いないから」

「ピンク色の音符飛んでると思う」

「エロい音符なのかよ」


 帰るぞ、と赤石はエスカレーターへと向かった。


「あ、あとちょっとだけ」

「……?」


 暮石は両手の人差し指を合わせる。


「おパンツ……」

「また下着の話?」


 赤石はため息を吐く。


「いや、違うの。そうじゃなくて」

「そうじゃなくて?」

「買いたいな、って」

「そうか。まぁ、別に良いけど」


 赤石は小首をかしげる。

 赤石たちは二階の衣料品コーナーへとやって来た。


「到着~!」


 とう、と暮石はエスカレーターから降りた。


「毎回その降り方するのかよ」

「キャラ付けしたくて」

「もう十分だよ」


 二人は衣料品コーナーを回る。


「お、これ見て見て~」


 暮石は売り物の帽子を被った。


「似合う?」


 暮石がキリッ、と表情を決める。


「まぁまぁ似合う」

「かわいいとかいっぱい褒めてよ」

「さすがに似合うか似合わないかで嘘吐いても仕方ないだろ」


 暮石は帽子を戻した。


「男の子用のおパンツ売り場行かない?」

「そこら辺置いてあるよ」


 赤石は衣料品が無造作に積まれているワゴンを指さした。


「えぇ!? こんな感じで置いてあるの!?」


 暮石が男性用の下着の売り方に驚く。


「こうする以外ないだろ」

「トルソーとかに装着してるとこ見ないと、どういう雰囲気か分かんないじゃん!」

「そんなの見ても仕方ないだろ。男は別に下着に気を遣ってない奴が多いからこうなってるんだろうな」


 赤石は下着を手に取る。


「男の子のおパンツってこんなワゴンセールみたいに平積みされてるの!?」

「そういうもんだろ」

「かわいそう……」


 よよよ、と暮石が泣くフリをする。


「女の子の下着はあんなに豪華絢爛に売られてるのに」

「良いよ、俺たちは日陰の存在で。お前らが日なたで活躍しな」

「女性用の下着ってこんなに優遇されてたんだ……」

「果たして優遇というのかどうかは何とも言えないところだけれど」


 ふむふむ、と暮石が顎をさする。


「赤石君のおパンツも選んだげる」

「間に合ってます」


 赤石は暮石の提案を却下する。


「じゃあまた下着買いたくなったら教えてね?」

「機会があればな」

「じゃ、行こっか、女性用下着売り場」

「言い方」


 二人は女性用の下着売り場へと向かった。


「赤石君、私にどんなおパンツ履いててほしい?」

「別に何でも良い」

「何でも良いだなんて、そんな……。女の子の下着は、女の子の魂なんだよ!」

「そんな大げさな……」

「彼氏なら、彼女にかわいいおパンツ履いててほしいって思わない?」

「思わない」

「え~」


 暮石がぶうぶう、と赤石に抗議する。


「じゃあ俺はここらで待っとくよ」

「待っとくの!?」


 一緒に入ろうよ、と暮石が赤石の腕を掴む。


「入り辛いんだよ、女性用の下着売り場」

「別に彼氏が一緒なら全然おかしいことないよ!」

「おかしいことなくても、視線が痛いんだよ」

「む~!」


 じゃあもういい、と暮石は赤石の腕を離した。


「買ったやつだけ後で報告するんだからね!」

「それで良いよ」

「本当赤石君は赤石君なんだから! ぷんすか!」

「待っとくよ」


 暮石は一人、女性用下着売り場へと入って行った。


「全く、赤石君は……!」


 ぶつくさと文句を言いながら、暮石は下着を眺める。


「だからモテないんだよ、赤石君は……!」


 下着を物色しながら、暮石は歩く。


「あ」

「え」


 女性用下着売り場に、新たな来客が、あった。


「え……」


 櫻井聡助その人が、驚いた表情で暮石と目を合わせた。



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― 新着の感想 ―
ラブコメカップルでは近年稀なハラハラカップルで、正直不安しか無いですw
そういえば本作はほんわかハーレムラブコメではなくて、 赤石くんの波乱万丈物語だった。 櫻井氏も主人公エネルギーまだあるのだろうしどうなる?
櫻井……お前はもう新天地にでも行って、見知らぬ誰かとキャッキャしてた方がいいんじゃないか。
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