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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第10章 卒業式 前編
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第428話 卒業旅行の企画はお好きですか?



 十五時――


 赤石と須田は授業を終え、帰宅の用意をしていた。


「帰るか」

「そうだな」


 赤石と須田は二人、廊下を歩く。


「あ」

「あ?」

「赤石、須田」


 赤石と須田を見つけた上麦が、とことこと近寄って来る。


「どうした、坊主」


 赤石が暮石を見下げる。


「坊主じゃない! 白波! 美少女!」


 上麦がぷりぷりと怒る。


「法律に違反してることだろ」

「違う! それ、非合法!」

「ポーカーフェイスの人のことじゃない?」

「違う! それ、無表情!」

「ミのフラットがメインで出てくる長調のことだろ?」

「違う! それ、変ホ長調!」

「市、町、村からなる地方公共団体のことじゃない?」

「違う! それ、市町村!」

「頭悪い奴のことだろ」

「違う! それ、無教養!」

「上場してない会社のことじゃない?」

「違う! それ、非上場!」

「熱中症ってゆっくり言ってみて?」

「ネッ……チュウ……シヨウ? 遊ばない!」


 上麦が赤石を叩く。


「もうちょっと序盤で出ても良い突っ込みだっただろ」

「遊ばない!」


 上麦が再三、赤石に詰め寄る。


「で、何?」

「ご飯、食べる」

「行ってらっしゃい」

「ん~!!」


 上麦は頬を膨らませ、地団駄を踏んだ。


「赤石、須田も来る」

「……」

「俺は良いよ?」


 赤石と須田は上麦に連れられ、学食へと向かった。





「そろそろこの学食ともお別れか~」


 須田が学食で精一杯伸びをした。


「早く座る」

「厳しくない?」


 須田は席に座った。


「赤石、高校卒業?」

「全員そうだろ」


 上麦はパンを購入して、食べていた。


「皆違う大学?」

「そうだな。やっぱり大学受かる受からないあるけど、皆いろんな都道府県に散らばっていくよな」

「距離も遠くなるよな~」

「な」


 赤石と須田は顔を見合わせる。


「お前はどこの大学に行くんだ?」

「清蘭」

「お前もか」


 花波と同じ女子大学を受けていた。


「卒業前、皆で遊びたい」

「……はぁ」


 赤石は呆けた顔をする。


「旅行、行きたい」

「意味被ってるぞ」

「旅行、したい」

「どうぞ」

「赤石、行く?」

「ごめん、話が見えない」


 特に卒業前の何かがある、と聞いていない赤石はきょとん、とした顔をする。

 須田を見てみるが、須田も同様に困った顔をしていた。


「卒業前、旅行、企画する」

「上麦が?」

「そ」

「マジか」


 意外だな、と赤石は顎をさする。


「お前ってもっと流されるタイプで、自分から何か企画とかするタイプじゃないと思ってた。そもそも他人に興味があるタイプだと思ってなかった」

「へへん!」


 上麦が腰に手を当てる。


「へへん、じゃない」

「ふふん!」

「……」


 赤石は少し考える。


「ふふん、じゃない」

「ほほん!」

「ほほん、じゃない」

「ははん!」

「ははん、じゃない」

「ひひん!」

「馬か、お前は」

「完全に言わせてる!」


 上麦はダンダンと机を叩く。


「やぁ、君たち」


 赤石、須田、上麦の下に、一人の少女がやって来た。


「元気?」


 少女、京極は上麦の隣に座った。


「何!?」


 上麦が京極に驚いた。


「初対面だったか? 京極明日香、同級生。色んなメーカーの消しゴムを集めるのが趣味の変な女だ」

「知ってる!」

「そんな趣味ないよ!」


 京極が顔を赤くする。


「お風呂が大好き」

「突然ヒロインみたいな設定を付け加えないでおくれよ」

「日夜、ローマ式の風呂を研究して、良い効能の温泉ができないか研究してる」

「お風呂作る方……!?」


 京極は髪をかき上げた。


「皆、おまたせ。皆のアイドル、京極だ……よ!」


 京極はマイクを両手で持つようなポーズを取る。


「……」

「……」


 赤石は半眼で、須田は瞳を輝かせ、無言で拍手した。


「何!?」


 再び上麦が割って入って来る。


「君たちが楽しそうだったからつい入っちゃって、ハイっちゃって、ね」

「つい、じゃない!」


 話を止められ、上麦は怒る。


「赤石、友達!?」


 上麦がガルル、と牙をむきながら赤石に水を向ける。


「友達もどき」

「友達もどき!?」

「ニセ友達ダマシもどき」

「ニセ友達ダマシもどき!?」

「毎回復唱しなくていいんだよ」

「毎回復唱しなくていいんだよ!?」

「そこは驚くところでもなんでもないだろ」


 やれやれ、と赤石は苦笑する。


「何の話をしてたんだい?」

「この学校の取り壊し反対の署名集めよう、って」

「えっ!? この学校って取り壊されるの!?」


 京極が大声で驚いた。

 周囲の学生たちの視線が、京極に集まる。


「うそ、この学校取り壊されるの?」

「あれって明日香様じゃない!?」

「嘘~、超格好良い~」

「本当格好良いよね~」

「確かにこの学校、生徒減ってるって聞くしねぇ~……」


 ただでさえ目立っている京極の声で、学校取り壊しの件がより伝播する。


「いやいや、うそうそ」

「嘘!?」


 再び京極が大仰にリアクションをする。

 京極の大声で、周囲の学生たちの動揺も静かになった。


「うるさいなぁ、お前は。はちはちはちはち、間違えた。いちいちいちいち」

「だって、取り壊しなんて言われたらビックリするじゃないか!」


 京極は小声で赤石たちに話す。


「俺の発言なんて全部嘘なんだから、ちょっとは聞き流せよ」

「全ての発言が嘘の人と僕は友達だった……!?」


 京極が驚愕する。


「赤石節が聞いてるなぁ」

「何それ」

「札幌で年に一回開かれてる雪祭り」

「ダウトだね!」


 京極は得意げな顔で胸を張る。


「赤石、うるさい、こいつ」


 上麦が京極を指さす。


「止めなさい、白波! 見ちゃダメ……」

「本当に関わったらダメな人みたいな反応止めてよ、赤石君」


 たはは、と京極は笑った。


「卒業前に旅行いかないか、って」

「急に」


 赤石は話の本筋に戻った。


「高校の卒業旅行、ってこと?」

「そう」


 上麦が言う。


「それで……三葉とあかねも連れて行っていいかなぁ、って……」


 上麦はもじもじとしながら、赤石に聞く。

 あの一件以降、上麦が暮石、鳥飼とどのように関わったのか、赤石の知る所ではない。


「赤石、良い?」


 上麦は目をキラキラと輝かせ、赤石を見る。


「気は進まないけど、主催者のお前が決めると良いよ」

「三葉来たら赤石来ない?」

「なんで俺は行く前提なんだよ」


 赤石は呆れかえる。


「三葉来たら赤石来ない?」


 上麦は再び尋ねる。


「来ない、と言ったら?」

「三葉もあかねも諦める」

「……」


 赤石はため息を吐いた。

 人に気を遣わせるのは、赤石が苦手とするものだった。


「いい、来ても来なくても行くよ」

「やた!」


 上麦はその場で小さく踊った。


「赤石大好き!」

「やったー」


 赤石は無感情に、タオルを振り回すポーズを取った。


「なんでライブ会場みたいなノリなんだよ」


 須田が赤石に突っ込む。


「すごいスピードで話が進むね、赤石君たちは」


 赤石たちを見ていた京極は呆気に取られていた。


「ついて来い、乗り遅れるなよ」

「おうともさ!」


 赤石と京極はタオルを振り回すようなポーズを取る。


「止めて止めて、恥ずかしいから……!」


 赤石は言われるが前に正常を取り戻し、京極一人だけがタオルを振り回すようなポーズを取っていた。

 京極の奇怪な行動が学食の中で視線を浴び、浮いていた。


「お前恥ずかしいぞ、京極」

「~~~~~~~!」


 京極は無言で赤石に掴みかかった。







 そしてその夜――


『皆へのお願い』


 赤石の二年の頃のグループチャットに、櫻井からの連絡が、届いていた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 京極も卒業旅行したいのかしら [気になる点] さぁ、櫻井くん。君はなにをやらかして誰に迷惑をかけるかな〜 [一言] 上麦と話してる赤石楽しそうだから卒業は寂しいなぁ……(ボソッ)
[一言] 赤石だけ受験本命も滑り止めも落ちそう。 良くても本命は落ちて周囲が微妙な空気で卒業しそう。
[良い点] 上麦はええ子なんやろな…空気読めんし平和事なかれ主義というか。暮石だけでなく鳥飼も連れて行くんやな。鳥飼も復活してもう一波乱起こしてほしいな。 [一言] 待ってました櫻井くん。 どんなお願…
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