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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第9章 新井由紀:Rising
443/594

第400話 オープンキャンパスはお好きですか? 3



「冗談だよ」


 赤石は未市の腕を払いのける。


「会長がそんな冗談言うわけ……」

「そんな冗談を言う人なんだよ」


 赤石は白い目で未市を見る。


「はっはっは、照れるなぁ」

「嘘……」


 京極は自分の中の未市のイメージと実際の未市のギャップについていけない。


「なんせ学校で服――」

「おっと赤石君、それ以上は止めようか」


 未市が赤石の口を封じる。


「それ以上は有料会員向けの過激な内容だよ、赤石君」

「そんな良い物じゃないでしょ」


 赤石は未市を払いのけた。


「そんな……僕の会長……」


 京極はその場で愕然とした。


「ところで赤石君、今日の予定は?」

「適当に研究室見てから帰ろうと思います。大学の視察もかねて」

「君たちも?」

「そんな感じっす!」

「なるほどね」


 未市はおとがいに手を当て、少しの間考えた。


「昼食は食堂で?」

「そのつもりです」

「じゃあお昼時に食堂においでよ。私が入っている部の部室を紹介してあげる」

「……」


 赤石は須田たちを見た。


「まぁ、じゃあ行きたい人だけ行くってことで」

「相変わらず君は、妙なところで人の顔色を気にして生きてるね」


 赤石は未市にぺこり、と頭を下げ、研究室へと向かった。


「悪い、時間を浪費して」

「僕の生徒会長……」


 京極はぶつぶつと呟いている。


「時間は?」

「そろそろ」

「じゃあ研究室行こっか」

「ああ、ありがとう」


 赤石たちは研究室巡りを始めた。







「この研究室では人工知能が、皆さんの質問に答えてくれます」


 研究室で眼鏡をかけた細身の男が言う。


「私たちは人の声をリアルタイムで変換する技術を研究しています」


 椅子に座りながら、大男が言う。


「私たちは農作物を育てていて、年に二回、収穫祭を行っています。今ここで育ててるのは――」


 小麦色に肌が焼けた女が、溌剌と言う。


「こんなところ来るもんじゃないよ。研究室は地獄だ。別の学部に志望した方が良い」


 痩せぎすの男が暗い顔でそう言った。

 教授がすかさずフォローする。



 赤石たちは一通り研究室を回った。


「楽しかったね~」

「ね~」


 船頭と三千路が笑い合う。


「私たちも来年には北秀院の女子大生か~」

「全然想像できない~~」

「本当~~~」


 三千路と船頭がパチパチと手を合わせる。


「じゃあ俺は食堂行ってから先輩の部室に行くけど、帰るか?」


 赤石が須田たちを見る。


「……」


 三千路たちは暫く考えた。


「でもあんまり部室とかお邪魔するのも……ねぇ~」


 須田、三千路、船頭ともに顔なじみではあるが、未市とは深い関係ではなかった。


「正直、ここで面識あるのって悠だけなんだよね……う~ん」


 行っても良いかどうか悩んでいる、といった風体だった。


「そうだな、俺が迷惑かけてる状況だな」


 赤石は須田と三千路の肩を持った。


「申し訳ないから、じゃあお前らは先に帰っててくれ。俺もちょっと部室お邪魔したらすぐ帰るから」

「ん~、まぁ仕方ないかぁ……」


 でも、と三千路は付け加える。


「食堂は普通に行くよ? ご飯食べたら、じゃあ私と統と京極ちゃんと八谷ちゃん、船頭ちゃんで帰るね」

「分かった」

「じゃあ食堂行こ~!」


 三千路を先頭に、一同は食堂へと向かった。


「あ、ちょっと」


 京極が手を上げる。


「僕は部室に興味があるんだけど、行っても良いかな?」


 京極はおどおどと言った。


「え、そうなの?」

「会長ともうちょっと話したくて……」

「悠は?」

「まぁ先輩が良いなら良いと思うけど」

「やたっ!」


 京極がガッツポーズを取る。


「……」


 八谷も静かに手を上げた。


「八谷ちゃんも?」

「赤石、良い?」

「まぁ、先輩が良いなら」

「……」


 八谷と京極が志願した。


「うぅ……私の八谷ちゃん、京極ちゃん……」


 三千路は残念そうにうなだれた。


「食堂ってもうすぐだっけ?」

「本当広いよな、この大学」

「この規模の大学って、県内でも少ないんじゃない?」

「僕も楽しみだな、大学が」

「やっぱり女子大生なりたいよね~」

「女子大生はそこまでなんだけど……」


 三千路と京極たちが楽しげに話す中、赤石は前方に見知った顔を発見した。


「あ……かいしくん」

「……」

「……」


 水城と櫻井が、二人でそこにいた。


「櫻井君?」

「明日香……」


 後ろから来た京極と櫻井とが視線を交錯させた。


「なんで? ここは志望してなかったんじゃ……」

「いや、こいつの付き添いで」

「う、うん。私、北秀院志望してるから」

「……」

「……」


 妙な沈黙が流れる。

 三千路と須田は赤石を一瞥する。赤石は先に行くように合図を送る。


「……」


 赤石は黙り、須田たちの下へと戻ろうとする。


「お前」


 櫻井が赤石に話しかける。


「なんでお前が明日香と一緒に来てんだよ?」

「……」


 赤石が櫻井を見やる。


「……」

「……」


 気まずい沈黙。


「あ、僕が赤石君に頼んで一緒に行ってもらうように」

「言ってくれたら俺が一緒に行ったのに」

「あ、あぁ! そうだよね! あはは……」

「……」


 京極が無理矢理に明るく笑う。


「明日香、変なことされてないか?」

「変なこと……は、されてないこともない……かもしれないけど」

「……っ!」


 櫻井が京極の腕を引っ張った。


「明日香、駄目だ、こんな奴と一緒にいたら。お前は一体何人の女の子を傷つけたら気が済むんだよ」

「え、あ、嘘、えっと」


 櫻井に引っ張られた京極は顔を赤くしてどもる。


「女傷つけてんのはお前だろ。新井と葉月と花波にでも頭下げて来たらどうだ」

「えっと、あの、えっと……」


 明らかに険悪な空気に、京極が体を動かしてどうにか和ませようとするが、二人は意に介さない。


「意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ」

「一人くらい自分の周りにいたやつに話でも聞いてみたらどうだ。俺にキレる前に」

「俺の交友関係に無関係のお前が首突っ込んでくるなよ」

「あ、あはははは……」


 京極は慌てたまま何を言うことも出来ない。


「……」


 赤石は無言でその場を立ち去った。


「……」

「……」

「ふぅ……」


 櫻井は大きなため息を吐き、肩の荷を下ろした。


「大丈夫か、明日香?」

「い、いや、僕は全然大丈夫なんだけど……」

「何もされてないか? あいつから何かされた、って」

「いや、されたっていうか、いや、されたはされたんだけど、でもそんなされたわけでもないっていうか、いや、でもされてるはされてるんだけど、そうじゃなくて……」


 あやふやな答えが出る。


「あいつの言葉で傷ついたんじゃないか?」

「う……うん」


 それは事実だった。


「あいつは他人を傷つけて回る刃物だ。あいつのせいで傷ついた皆を、俺は放っておけないんだよ。例え俺自身が誰かに嫌われて、嘘の噂を立てられたとしても、俺は傷ついてる皆のためだけに動きたいんだよ」

「……うん」

「ごめんな明日香、俺が気付かなかったせいで」

「う、うん」


 京極は櫻井たちと行動することとなった。








「お帰りんこ~」

「ああ」

「あれ?」


 三千路が赤石の背後を見た。


「京極ちゃんは?」

「あいつと行く、って」

「……そう」


 詳しい話は理解してないが、三千路はそれ以上聞くのを止めた。


「……」


 赤石が八谷を見る。


「止めて」


 赤石の言葉を予期したのか、八谷が赤石にそう言った。


「え?」

「あ、いや、そうじゃなくて……」

「八谷ちゃん私のことがそんなに……」


 よいよい、と泣きながら三千路は八谷の体をまさぐる。


「注文行かね?」

「行くか」

「行こ~」

「置いてくな~!」


 三千路は赤石たちの後を追った。




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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも櫻井はイベント台無しどころか、教師の頭を鈍器で殴って昏倒させてるからな。こうして彼女の目の前で他人口説く奴によくもまあ信が置けるね。自分を可愛いと言ってくれる人が他にもいるだろうこと…
[一言] 更新ありがとうございます。 京極は取り込まれたか……八谷しかおらんな。私は八谷を信じてる。 しっかしあの御仁はどこにでも現れるな。大学には出現しないと思っていたのに驚きでした。 応援してお…
[一言] 我らが櫻井君も来てたのね、!!!もう一波乱ほしーーーなーーーー
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