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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第8章 始業式 恋愛大戦編
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第325話 八谷との交流はお好きですか?



「起立、気を付け、礼」

「「「ありがとうございました~」」」


 昼前の授業が、終わった。


「終わったね」

「ね~」


 昼食を前にして、生徒たちは各々の派閥で雑談をする。が、赤石は未だクラスには馴染めずにいた。


「……」


 ガタ、と椅子を引き、赤石は教室の外に出た。

 赤石は一人、別棟の湿った教室へ向かう。


「……」

「私も行くわ」


 廊下を歩いている最中、後ろから平田がついて来た。


「今日もあの湿ったところで食べるわけ?」

「嫌ならついてくるなよ」

「行くところがないからついてってるだけでしょ。何その言い方」


 平田は眉を顰める。


「本当神経逆撫でする言い方するよね、お前」

「はいはい」


 赤石と平田は別棟の教室へたどり着いた。


「……」

「お」


 教室には既に、人がいた。


「別に一緒に食べても良いよね?」


 平田が赤石を見る。


「……」


 赤石の視線の先には、八谷がいた。

 赤石は八谷から離れた席につき、平田は八谷の隣に腰を下ろした。


「……」

「……」


 赤石と八谷は話さない。


「あれ、なにこの空気感?」


 平田は不思議そうに呟く。

 

「お前ら二年の時は仲良しだったはずだよね? いや、この表現があってるか知らないけど。てか、本当に付き合ってたんじゃないわけ?」

「……」

「……」


 平田の質問に、赤石も八谷も答えない。


「あ、分かった」


 平田は膝を打つ。


「フラれたんだ」

「……」

「……」


 赤石と八谷がバツ悪そうに俯く。


「あはははははははははは! やっぱり! 当たってる! 高校生が仲悪くなるのなんてどうせ恋愛絡みばっかだよね! あっははははははははは! ウケる! 超ウケる!」


 平田はパチパチと手を叩き、大笑いする。


「どうせお前が告白したんでしょ?」


 平田が赤石を指さす。


「で、フラれて撃沈轟沈意気消沈、ってわけ? あははははははは! だっさ! お腹痛い! 本当面白い」


 平田がひぃひぃと泣き笑いする。


「……」


 赤石は黙ったまま、昼食を食べ始めた。


「八谷もなんとか言ってやったら? こんな卑屈でキモいのに粘着されて困ってた、って。いや、お前なんかが八谷と付き合えるわけないでしょ、ばーか」


 平田は八谷を見た。


「……違う」

「え? 違った?」


 平田はきょとん、とする。


「もしかして……」


 平田は八谷と赤石を交互に見る。


「え、なんで? 逆? なんで? おかしくない?」


 目が点になる。


「はぁ? お前二年の時あんなに仲良くしてたのにフったわけ? なんで? 意味わかんないんだけど」


 平田は赤石にずかずかと近寄る。


「てか、お前こいつにフラれたからうじうじしてたわけ? はぁ? しょ~もな」


 平田はため息を吐き、椅子に座った。


「いやいや、フラれたくらいでキャラ変わりすぎでしょ。どんなフラれ方したらそんなことなるわけ? そもそも、お前がフる理由が意味分かんないんだけど。どう考えたってお前からしたら高嶺の花でしょ」


 平田は足を組み、顎をさする。


「なんでフったわけ?」


 平田は赤石の席の前に来て、ダン、と手をついた。


「……別に」


 言いたくない、とでも言いたげに、赤石は平田から目を逸らす。


「どう考えてもお前底辺なんだから、告白されたんなら付き合ったら良かったでしょ? 何選べる男感出してるわけ? 選べる権利なんかないでしょ」

「……」


 赤石は平田の問いに答えず、無言で食事する。


「そもそもお前もお前、フラれたくらいでキャラ変すんなよ。男なんて星の数ほどいるのに、こんなのに執着するだけ無駄でしょ」


 今度は八谷に言う。


「ねぇ、なんでこんなのに執着するわけ? フラれたくらいで女の子の価値が下がるとか思っちゃってるわけ? ちゃんちゃら馬鹿げてるんだけど。こんなのにフラれてもフラれたうちに入らないでしょ。次行けば? てか、男と付き合ったこととか、もしかしてない感じ?」


 遠目に八谷に話しかけるが、八谷も答えない。


「も~、なんで二人とも何も答えないわけ? 別れたカップルみたいな空気感本当辛いんだけど」

「じゃあ連れてくるなよ」

「連れてくるな、とかそんな言い方止めなよ。八谷が可哀想じゃん」

「……」


 ガタ、と八谷が椅子を引いた。


「やっぱり私帰る」


 そう言うと八谷は弁当をまとめ、席を立った。


「ちょっと、も~、あんなのの言葉鵜呑みにするなって!」


 平田が八谷の手首を掴み、席に再び座らせる。


「お前もお前。八谷が嫌な気持ちになるようなこと言うなって。女の子の気持ちとかちゃんと考えらんないわけ?」

「そんな深い意味で言ってない」

「八谷もいちいちあいつの一言一言に反応しないで。あいつはただのクズのゴミだから。あんなのの言葉で一喜一憂するのなんて勿体ないよ?」

「……」


 八谷はうつむいている。


「でも、私が全部悪いから……」


 八谷はぼそ、と呟く。


「あ~~~~ん、もう、本当めんどくさいお前ら! 好きなら好き! 嫌いなら嫌い! 嫌なら嫌! 良いなら良い! そういう所はっきり言ってくんない? じめじめじめじめ、本当鬱陶しいんだけど!」


 平田が八谷の手を引き、赤石の下まで連れていく。


「ほら、言いたいこと言えば?」


 平田は八谷の背中を押した。


「そんなの……ないわよ」


 八谷は赤石に背を向け、帰る。


「…………」


 平田は唖然とした。


「ねぇ、本当あんたら何があったわけ? 教えてくんない?」

「……」

「……」


 二人とも、答えない。


「はぁ……」


 平田は大きくため息を吐いた。


「あんたらに何があったか知らないけど、赤石は女の子困らせるようなことしたんでしょ? 八谷はあんなのの言葉で落ち込んだんでしょ? 赤石は八谷に謝って。八谷は赤石の言うこと聞かないで」


 次は平田が赤石の手首を持ち、八谷の下へと連れて行った。


「……」

「ほら、謝って」

「止めて」


 八谷が赤石と視線を合わさずに、言う。


「でもこいつのせいで八谷が――」

「止めて」


 八谷が平田を睨む。


「~~~~~」

「全部私が悪いから。ちゃんと理解してるから。赤石に謝られたりしたら、今よりもっと赤石と会話も出来なくなる。今よりもっと顔を上げられなくなる。今よりもっと、赤石に近づけなくなる」

「そんなこと……あるわけないでしょ」


 平田は赤石を解放した。


「……」


 赤石は自分の席に戻る。


「赤石は人の心を軽んじて横暴。八谷は卑屈になって自己肯定感が低い。なんであんたらそんなでこぼこなわけ?」

「元カレにボコボコにされたお前が言えるセリフじゃないだろ」

「はぁ? 別に泣いたりしてないから。私のこと甘く見ないでもらえますぅ~?」


 平田は口をとがらせる。


「もういいわ、じゃあ。好きなようにしなよ。どうせ私なんか外野の外野ですから。勝手にしてくださ~い」


 平田は不機嫌に鼻を鳴らし、どか、と席に座った。


「平田」

「女の子泣かす男とは口ききませ~ん」

「~~」

「平田さん」

「いちいち卑屈になるような女とは口ききませ~ん」

「……」

「……」

「本当あんたらって面倒くさい」


 赤石たちは三人で食事した。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 傷の舐め合いと言われようと、歪んでへし折れた上で前を向こうする3人にとって何にも変え難い時間。 この回の空気好きだな
[一言] 一番面倒くさい奴に面倒くさいとか言われる二人。 実際かなり拗らせてはいるけど。
[良い点] >「本当あんたらって面倒くさい」 お前も大概やで(定期
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