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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第8章 始業式 恋愛大戦編
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第314話 塾の一日はお好きですか?



 ゴールデンウィーク中旬――


「ゴールデンウィークもそろそろ終わるなぁ」

「うん」


 櫻井と姫野は、二人で塾へと向かっていた。

 櫻井は車道側を歩き、姫野はスマホに目を向けながら歩く。


「俺もゴールデンウィーク明けてからは学校に復帰かぁ」


 櫻井は大きく伸びをする。


「おかしいよ、先生を守るために頑張った櫻井君が自宅で謹慎なんて……」

「まぁまぁ」


 櫻井は修了式の一件で、自宅での謹慎となっていた。

 自宅謹慎は既に開けていたが、櫻井はゴールデンウィークが明けるまで自主的に謹慎していた。


「あれから美穂姉とは会えてないし、一体どこで何やってんだろうなぁ……」


 櫻井は天を仰ぎ見る。


「ん……」


 姫野はスマホに再び目を落とした。

 そして同時に、対面からやって来ていた中年男性と肩をぶつけた。


っ……」


 肩をぶつけられた姫野はよろけ、たたらを踏む。


「ちっ……」


 男は舌打ちをし、姫野を瞥見した後そのまま進んだ。


「おい!」

「……」


 櫻井が姫野の肩を抱きながら、男に声をかけた。


「人にぶつかったんだから、謝れよ!」

「……」


 男は櫻井を見た。


「お前からぶつかって来たんだろうが! 何で謝りもせずに舌打ちしてんだよ!」


 櫻井がずいずいと男の下に歩み寄る。


「櫻井君、もう良いから……」


 姫野が櫻井の裾をぎゅっと握る。


「お前らが悪いんだろ! 道で幅取って並んでるからだろ!」


 男は歩きながら櫻井に言う。


「あ、歩きスマホなんかしてるからぶつかるんだろうが! 危ねぇだろうが!」


 姫野がスマホに目を落としたと同時に、男は姫野とぶつかった。


「だからって謝らねぇのはおかしいだろうが! そんな風に大声出して、お前のやってることがおかしいって分からねぇのかよ! 女の子に大声で文句言って、自分が何やってるのか分かってんのかよ! 謝れよ!」

「もういいから、櫻井君」

「謝れよ!」


 櫻井は男に歩み寄る。


「ちっ……」


 男は櫻井を無視して、そのまま歩く。


「んだよ、あいつら、歩きスマホしてる方が悪いんじゃねぇか」


 ぼそぼそと小声で悪態をつきながら、男は去った。


「ごめんね、櫻井君。姫のせいで……」

「姫は悪くねぇよ。あいつが悪いんだよ。自分の暴力性に気付いてないだけなんだよ、あいつ」


 櫻井は姫野の服についた埃をはたいた。


「ごめんな、姫野。俺がついてながら……」


 はは、と櫻井は困り顔で笑う。


「ううん、姫は全然……。でも、嬉しかったよ……」


 姫野は櫻井の裾をぎゅっと掴んだ。






 そして櫻井はいつもの通り、塾を受けた。


「はい、今日は以上です。お疲れさまでした」

「「「お疲れさまでした~」」」


 四時間にわたる塾は終わり、解散となる。


「……」


 塾が終わった姫野はホワイトボードの前で立ち尽くしていた。

 塾内では、塾生がホワイトボードを消すこととなっていた。

 塾の講義が終われば、当番制で塾の後片付けをすることとしている。


「どした、姫野?」


 ホワイトボードの前で立ち尽くす姫野に、櫻井が声をかける。


「ううん、ホワイトボード消したり床の掃除したり、塾終わっても当番になったら結構やること多くて大変だなぁ、って思って……。皆すぐに帰っちゃうし……。ホワイトボードも上の方とか届かないし、分からないところがあっても先生に聞きづらいからノート取れないときとか質問し辛いし、お金とかかかるかもだから、勉強終わりなのもあってちょっと疲れたな、って思って……」


 姫野はうつむきがちに言う。


「ご、ごめんね、櫻井君。こんなこと言うつもりじゃなかったんだけど……」


 姫野はえへへ、と苦笑する。


「いや、姫野。姫野は間違ってないよ」


 櫻井は登壇し、手を叩いた。

 三度手を叩き、パンパンという大きな音に、塾生が注目する。


「皆、聞いてくれ! 姫野が塾の担当の作業が多くて困ってる。塾の作業は担当だから仕方ないと思うかもしれないけど、今日は姫野のために協力してやってくれないか? ホワイトボードを消したり、床を掃除したり、一人でやるにはちょっと量が多いと思う。結局、皆が落とした消しカスのゴミを姫野に掃除させてるわけだし、ここは皆で協力しないか? ほら、皆で協力したらすぐ終わるんだからさ!」


 塾生たちは顔を見合わせる。


「女の子一人に力仕事を任せても女の子は大変だし、姫野は皆より華奢だから、体も弱いんだよ。協力したらすぐに出来るんだから、皆で協力しようぜ!」


 な? と櫻井は言葉を重ねる。

 塾生たちは渋々ながら、カバンを置き、床を掃除し始めた。


「これで大丈夫か、姫野?」

「櫻井君……」


 姫野は櫻井を上目遣いで見る。


「早く終わらせて帰ろうぜ」

「ありがとう、櫻井君……」


 櫻井と塾生たちは床を掃除し、ホワイトボードを消した。


「なぁ、あと皆に提案があるんだけどさ」


 掃除が終わった後に、櫻井が再び登壇して言う。


「また授業内容で分からないことがあったら協力して教えあおうぜ? 皆の分からないところを教えあって協力して行こうぜ?」


 櫻井はその後数分にわたり、話し続けた。

 櫻井の話が終わった後に、塾生たちはおのおの帰り始めた。


「は~、もう夕方だな、姫野」

「うん、ありがとう、櫻井君」


 姫野は櫻井の腕にきゅっとしがみつく。


「ばっ! おまっ!」


 櫻井は顔を赤くして姫野から距離を取る。


「これは姫のありがとうだよ」

「おまっ! 止めろよ、こういうことは! 喜んだのは分かったから!」


 櫻井は姫野から顔を背ける。


「もう、本当こういう所は鈍いんだから……」


 姫野はぼそ、と呟くと櫻井から離れた。


「櫻井君が別れてくれたら姫にも……」

「ん、今何か言ったか?」

「何にも言ってないもん!」


 ぷい、と姫野がそっぽを向く。


「じゃあ塾も終わったことだし、ゲーセンでも行くか?」

「それ姫の機嫌取りぃ?」


 姫野はちら、と櫻井を見やる。


「まぁ、そんなところかな」


 ははは、と櫻井は頭をかく。


「じゃあ赦す!」

「そいつはありがとさん」

「櫻井君。ユーフォ―キャッチャーとか上手いもんね」

「まぁ昔さんざんやったからなぁ……」


 櫻井と姫野はゲームセンターへと、向かった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 櫻井、お前『当番』って言葉の意味わかってる? 皆で協力したらすぐ終わるんだからさ!って周りに言うくらいなら当然自分も他のやつ特に男にも手伝うんだよな? [一言] 歩きスマホで足くじいた…
[一言] コイツほんま無敵やな。
[一言] 櫻井は相変わらず気持ち悪いなぁ(貶し言葉) なんというか、変わらないっていうのも一つの資質なのかもしれないw
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