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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第7章 修了式 堕落編
319/593

第282話 正月はお好きですか? 1



 一月一日――

 年が明け、一日目。


「「「ハッピーニューイヤーーー!」」」

「えぇ⁉」


 櫻井の家の玄関で、クラッカーが鳴らされた。


「な、なんでお前らがこんな所に⁉」

「お邪魔しま~す」

「おっじゃま~」

「お邪魔するわ~」

「話聞けよ!」


 櫻井の家に五人の女子が入る。


「来るなら来るって言ってくれよ、皆」

「あらあら、櫻井君。良い子良い子、よちよち~」

「ぶっ!」


 豊満な双丘に肉付きの良い女が櫻井を自身の胸に押し付ける。


「止めろよ唯姉!」

「興奮したら駄目よ~、うふふ」


 石巻唯、その人は櫻井を自身の胸にうずめさせる。


「ぶ、ぶはっ!」

「あらあら」


 櫻井は石巻の体から逃れ、距離を取る。


「全く、勝手に人の家に入っといて好き勝手するなよ!」

「いいじゃんいいじゃん、同じ塾のよしみなんだからさぁ」

「そ、そりゃあ同じ塾ではあるけれども」


 櫻井はぶつぶつと文句を言いながら、机を片付け始める。

 スポーツウェアに身を包んだ細身の女、仁藤翼は櫻井の家を物色し始めた。


「ちょっとおにぃ、朝から何~?」


 櫻井菜摘が階上から下りてくる。


「わ、聡助の妹ちゃん⁉」


 仁藤は菜摘に飛びついた。


「きゃーーーー!」

「くぁわいいぞ、この野郎!」


 うりうり、と仁藤は妹を抱きすくめる。


「ちょ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

「誰がまな板だ!」


 仁藤が菜摘を離す。


「お兄ちゃん何一体、激やばなんだけど!」

「俺と同じ塾のやつらだ。まさか突然押しかけてくるとは思ってもなくて……」

「お兄ちゃん、志緒姉ちゃんと付き合ってるんでしょ? 折角の年末年始なのに会いに行かなくて良いの? こんな変な女ばっかりとつるんで」

「いやいや、お参りは一緒に行く予定だから」


 櫻井が手をぱたぱたと振る。


「きしししし、櫻井氏、何やら櫻井氏の家には面白い実験道具がいっぱいあるなぁ」


 自身の体躯に見合わない大きな白衣を着た眼鏡の少女、子守凪は櫻井の家の調理道具をうっとりと見つめる。


「ちょ、ちょっと止めろよ凪! お前が絡んだらいつもロクなことにならねぇんだから!」

「きしししし、ロクなことにならないとはぁ、ご挨拶。櫻井氏も言うようになったもんだぁ」

「何言ってんだ、馬鹿!」


 櫻井は子守の手から調理道具を取る。


「あらぁ、もうなくなっちゃったぁ?」


 櫻井の机の下から豊満な肉体を持つ石巻が出て来た。


「ねぇ、櫻井君、もっとお酒ない~?」

「は、はぁ⁉ 酒⁉ 俺の家に酒なんて一つも……」


 櫻井は机の上の、飲み干された甘酒を目にした。


「こ、これ飲んだのか⁉ 甘酒は酒じゃないっていってもちょっとはアルコール含まれてるんだぞ! ま、まさかそれで酔ったのか⁉」

「酔ったぁ⁉ お姉さんは全然酔ってないわよぉ」


 よいしょ、と石巻は胸を持ち上げる。


「あらぁ、なんだか体が重いわぁ。うふふふふふ」

「うわああぁぁぁぁぁ」


 石巻は服を脱ぎ始める。上も下も下着一枚になる。


「ちょ、ちょっと、服、服着ろよ!」

「えぇ? いいじゃない、外じゃないんだからぁ」


 石巻は下着姿で櫻井の家の中を歩き始める。


「櫻井君、なんだか私体が重くぅ……」


 石巻が櫻井の方へ倒れこむ。


「うおおおおおぉぉぉぉ!」


 櫻井が石巻の体を支え、そっと床に下ろす。


「とんでもないことになってきた……」


 机の周りを見やれば、既に大量の甘酒のゴミが落ちていた。


「しゃぁくらぁいくぅん」

「うわあああぁぁぁ!」


 櫻井の背後から華美なフリルのついた、純白のドレスを着た少女が顔を出した。


「姫野⁉」

「しゃぁくらいくんに姫いっつもお世話になってるからぁ!」

「お前も甘酒飲んだのかぁ⁉」

「のぉみましたぁ!」


 姫野は敬礼のポーズを取る。


「馬鹿野郎! なんでお前らは勝手に人の家の物……」

「しゃぁくらぁいくぅん、だっこぉ!」

「抱っこって……」

「姫は抱っこされないと泣ぁいちゃうぞぉ」

「わ、わぁかったよぉ!」

「きゃあぁぁぁっ!」


 櫻井は姫野を抱きかかえる。


「これでどうだ!」

「あ、あははははははは!」


 姫野は赤い顔で笑う。


「姫は満足なぁのだぁ!」


 姫野がそう言うと、櫻井は姫野を下ろした。


「ま、まさかあんなに無口な姫野まで……」


 櫻井は青い顔をする。


「おわ!」


 がし、と背後から櫻井の体がホールドされる。


「ふむふむ、いい体だ」

「翼ぁ⁉」


 細身の体躯、仁藤は櫻井の体をチェックする。


「やっぱり聡助の体は良い! 欲情をくすぐるぞ!」

「何言ってんだお前はぁ!」


 仁藤は櫻井の体を撫でる。


「ふむふむ、味は?」

「ひぃっ!」


 仁藤は櫻井の首筋を味見する。


「ふむふむ甘い……かな?」

「なぁにやってんだお前はぁ!」


 櫻井は仁藤を投げ飛ばす。


「ぶ、無礼者!」

「無礼者はお前だぁ! まさかお前も……」

「む、なんだ⁉」

「甘酒飲んだのか⁉」

「別に飲んでないけれど」

「お前は飲んでないのかよ!」


 べし、と櫻井は仁藤の頭を叩く。


「きししししし! 面白いことになって来たなぁ、櫻井氏」

「よ、良かった。お前は普通で……」


 子守は白衣の下に何も着衣していなかった。


「お前もおかしくなってんじゃねぇかああぁぁ!」


 櫻井は子守の体をタオルで包む。


「しゃぁくらぁいくぅん」

「聡助!」

「櫻井氏~」

「櫻井く~ん」

「サ~クラ~イ」


 五人の女子が櫻井に迫る。


「一体正月早々、俺の家はどうなってんだああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」


 櫻井は家の中で叫んだ。


「俺の学生生活、正月から滅茶苦茶じゃねぇかあああぁぁぁ!」


 櫻井は五人の女子を相手取っていた。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何か新しいのが湧いて出た…… いや、昨日今日の付き合いじゃないっぽいけど いろんなとこで女作ってるのか櫻井は
[良い点] 普通のラブコメと違って選ばれなかったヒロインは主人公(笑)から離れていくところ [一言] と思ったら主人公(笑)が離れていったヒロインの代わりを補充しやがったwww
[一言] 仮に櫻井の精神が常人で、勝手に変な女性たちが惚れてこの話みたいな騒動が常に起きるって考えると、ストレスやばそうですね。まあ彼は常人ではないので大丈夫でしょうが。
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