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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第7章 修了式 堕落編
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第270話 終業式はお好きですか? 



『では、優勝クラスを発表します』


 閉会式に差し掛かり、体育祭の優勝クラスが発表される。


『二年生、優勝クラスは……』


 お願い、と新井が祈る。

 櫻井もまた、新井と共に祈る。


『二年四組です』

「「「よっしゃああああああああぁぁぁぁぁ!」」」


 歓声が、こだまする。


「負け……た」


 二年四組、須田の属するクラスが、優勝した。


『惜しくも優勝を逃した一組の皆さんも、壇上へおあがりください』


 二年二組の赤石たちは、呼ばれることがなかった。


「ごめんね、皆……」


 新井がクラスメイトに向き直り、謝る。


「全然大丈夫」

「むしろ私たちもよく頑張ったよ」

「頑張った頑張った」


 体育祭は須田のクラスが優勝し、幕を下ろした。




「やあやあ、悠人君」


 後日、赤石は霧島に声をかけられる。


「体育祭は散々だったね」

「お前もだろ」


 大して目立つことのなかった赤石を、霧島は笑う。


「そういえば一つ教えておきたいことがあるんだけれど、いいかな」

「?」


 霧島は赤石に近づいた。


「つい最近、ゆかりちゃんと聡助がデートした、って知ってるかい?」

「…………」


 ゆかりちゃんと聡助、船頭と櫻井のことだと、脳内で補完する。


「そうか」

「あれれ、何も思わないのかい? 本当に、つい最近のことだよ」


 霧島はあからさまに、驚いた顔をする。


「俺には関係ない」

「……やれやれ」


 霧島は首を振った。


「僕から言いたいことはそれだけだよ。じゃあね、悠人君」

「……ああ」


 赤石は去る霧島の背中を見送った。





「え~、これから皆さんは冬休みに入りますが、日々コツコツと鍛錬することを忘れず、努力をするという精神で――」


 十月のメインイベントである体育祭を終えた赤石たちは、あれよあれよというままに、終業式を受けていた。


「冬休みに入るにあたって、皆さんに覚えておいてもらいたいことが、三つあります」


 壇上で校長先生が数十分、話していた。


「もうええてほんま」


 三矢が小声で毒づく。

 もう冬休みか。

 赤石は校長の話を聞き流しながら、冬休みにやるべきことを頭の中で整理していた。


「――以上で、話を終わります」


 校長の話が終わり、終業式もまた、終わる。

 体育館に集められた全校生徒が散り散りになって、教室へ戻って行く。


「おっす、悠」

「ああ」


 一人帰っていた赤石の頭に、須田の手が乗せられる。


「冬休み何する?」

「縮む縮む」


 体重を乗せられ、赤石は須田の手をどけた。


「何センチ縮んだ?」

「一センチくらい縮んだな」

「へ~」

「反応悪すぎるだろ。ちゃんと後の展開も考えとけよ」


 赤石と須田は連れ立って歩く。


「冬休みといえば、やっぱりクリスマスだよな、クリスマス」

「勉強もな」

「ねぇ、クリスマス楽しみだね、悠人君」

「誰役なんだよ」

「高梨」

「いじらしすぎるだろ」

「お揃いのマフラー編んできたから、受け取って欲しいんだ」

「どんだけ尽くされてんだよ」

「私の制服の糸を編んであるんだ」

「重すぎる。抱えきれないぞ」

「別れてからも、ずっと使って欲しいからぁ!」

「止めろ止めろ!」


 襲い掛かる須田の猛攻を、赤石は跳ねのける。


「あとは悠人君が欲しいのはお金だよね。はい、一万円ギフト券」

「急に」

「あと、前欲しいって言ってたルコッチの腕時計」

「どんだけ貢いでもらってんだよ」

「別に悠人君のお返しが欲しいからあげたわけとかじゃ、全然ないから! ごめんね、気遣わせて!」

「言葉からあふれる俺のクズ男感が凄い」

「でもやっぱり一番欲しいのはギフト券?」

「まぁ、一番使えるよな」

「最低!」


 須田はぷん、とそっぽを向く。


「一万円現金でもらうよりはまだましだろ」

「そんな日当みたいなプレゼント嫌すぎる」

「須田ちゃん、今日はお疲れ様でした。はい、本日の日当一万円です」

「記憶には残るな、そのクリスマス」


 赤石と須田は不毛なやり取りをする。


「赤石さん」

「?」

 

 不毛なやり取りをしているうちに、隣から声がかけられる。


「お元気でして?」

「はあ」

「須田さんはお元気でして?」

「元気元気、友達と一日遊び明かした後くらい元気」

「それはもう元気じゃないだろ」


 ふふふ、と花波は微笑む。


「お二人とも、よくお話しされてるのですね」


 花波は須田を見る。


「まぁ、腐れ縁ってやつかな~。俺が許しても世界が許してくれないっていうか」

「主人公感を出すな」

「有り余る責任と才能に押しつぶされそうになってるけど、皆のために頑張らないといけないっていうか」

「好感度を上げようとするな」

「でもやっぱり駄目だったから世界に復讐しようと思ってるっていうか」

「悪に堕ちようとするな」


 花波は再び、微笑む。


「楽しそうですわね」

「どこがだよ」

「楽しそうにしてなきゃ……心が壊れそうなんだよ……」

「重い過去がありそうな顔をするな。好感度を上げようとするな、好感度を」


 だって僕じゃダメじゃないか! と激情する須田を、赤石がなだめる。

 花波はにこにこと、二人を見る。そして口を開く。


「冬休み、私の家にいらしてくれません?」

「……え?」

「?」


 花波は唐突に、そう言った。


「悠はなんかある?」

「なんか裏がありそうだな……」


 ここ最近、急激に接近する花波の黒い影を、赤石は感じていた。


「失礼ですわね。よければ他の方も連れてきていただいても結構ですのよ?」

「まあ考えとく」


 赤石はそう言って、話を終えた。


「そうですのね、分かりましたわ。良いご返事をお待ちしてますわ」


 そう言い残し、花波は去って行った。


「悠って結構花波さんと仲良かったりする?」

「しないから驚いてんだよ」


 赤石と須田はぽかん、としていた。

 




「じゃあ帰るか、悠」

「ああ」


 赤石と須田は、共に学校の門をくぐった。

 明日から、冬休みが始まる。


「二人とも、やっぴ~」

「お勤めご苦労様です、総長!」


 校門を出ると、そこには船頭と三千路がいた。


「ゆかり、なんでお前がいるんだ。すうは止めろ、こんなところで」


 腰を落とし、頭を下げている三千路を軽く叩く。


「今日は終業式だから迎えに来たよん」

「見られてる見られてる」


 スカジャンを着て奇抜な格好をする三千路を、奇異な目で生徒たちが見る。


「脱げ、ここで、今すぐ」

「きゃぁ、悠人君のエッチ!」

「はぎとってやる」

「いやぁ!」


 赤石は三千路のスカジャンをはぎ取った。


「総長、また豚箱に……」

「一回も行ったことないんだよ」


 三千路は薄着になった。


「じゃあ帰るか」

「何事もなかったかのように」


 須田と赤石たちは帰り始めた。


「終業式どうだった?」


 船頭が顔を覗く。


「校長の話が長かった」

「高梨のおじさんだっけ?」

「「えぇ~~~~!?」」

 

 三千路と船頭が驚く。


「意外」

「喉に違和感が」

「いがいが」


 赤石は須田を叩く。


「冬休み何する?」

「もういいよ、その話は」


 船頭の質問に、赤石はうんざりする。


「一回目だよ!?」

「ごめん、俺が学校で一回言った」

「冬休み何する?」


 合わせて、三千路が言う。


「勉強」

「私のには答えてないのに!」


 船頭が赤石をぽかぽかと叩く。


「あ、でも花波さんが家に来なさい、みたいなこと言ってなかった?」

「言ってたな」

「は、何それ?」


 船頭が赤石と須田を見る。


「船頭の船の部分出てるぞ、ヤンキーの部分が」

「船頭ちゃんって本当ヤンキーだよね」

「ち、違うし!」

 

 船頭が髪をパタパタと振りながら言う。


「まぁ、冬休みも今から始まったばっかだし、のんびり考えて行こうぜ」

「そうだな」


 赤石たちは電車に乗る。


「まずは今日悠の家行かね?」

「「賛成~~!」」

「勉強しろよ……」


 赤石たちの冬休みが、始まった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前の夏祭りで櫻井に誘われそうな三千路を見てついて行ったら二度と友達として見れないとか思ってましたよね.. あの頃からだいぶ経ちましたが 現在の赤石は何を思っているんでしょうね..
[気になる点] 霧島はあからさまに、驚いた顔をする。 あからさまに?予想通りだったってことか?
[良い点] 須田(高梨) ……いや、この場合、高梨(須田)か? ○○(須田)は定番ネタになるんだろうか。 [気になる点] 爆弾をぶっ込んだ霧島ァァァァl 赤石の反応は大人なの対応でスルーしてるよう…
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