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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第7章 修了式 堕落編
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第249話 飲み屋はお好きですか? 2



 居酒屋についた山田たちは店に入った。


「すみません、当店未成年の飲酒はお断りしておりまして」


 平田たちが入るや否や、店員に声をかけられる。


「あ~、酒頼まないんで」

「……少々お待ちください」


 制服のまま来店した平田たちに確認が入る。


「毎回こうなの?」

「あ~大丈夫大丈夫。飲まないから」


 平田は気にかけることなく、スマホに目を落とす。


「二十二時までにご退店願いたいのですが」

「じゃあそれで」


 山田は若干の不機嫌さを残しながら、店に入った。

 新井たちも中に入る。制服のまま居酒屋に入るという不義理に、新井は戦々恐々とする。


「そんなビビらなくてもいいし、由紀」

「だって制服だし」

「夏服なんだから普通のワイシャツと同じっしょ。ビクビクしてるからそう思うんだって。大体飲み屋も別に来たら絶対飲まないといけないわけじゃないし。ファミレスとかと同じじゃん、名前違うだけで」

 

 平田は堂々と入って行く。


「でも……」

「早く前行って」

「……」


 新井は店の奥へと入って行った。


「うぃ~、裕也ちゃん、遅いじゃないの~」


 個室に案内される。そこにはすでに、二人の男が、いた。


「え、誰その子!? めちゃ可愛いじゃん!」

「嘘だろ裕也! 誰だよ!?」


 新井が入った瞬間、男たちが騒ぎ出す。


「騒ぎすぎ騒ぎすぎ、朋美と同じ高校の同級生だって」


 山田は平田たちを座らせる。


「え、名前は? 名前は?」

「えっと……新井……由紀です」

「「え~~~可愛い~!」」


 二人の男は、さらに盛り上がる。


「ちょっと、私の時そんなこと言わなかったじゃん」


 平田は男たちの肩を殴る。


「人の女に手出せるかよ、なぁ?」

「お、おう!」

「じゃあ私もフリーだったら良かった」

「ちょっと止めてよ朋美」


 山田は苦笑する。


「あ、俺安藤浩二っす。よろしくおなしゃっす!」

「俺倉田拓海で~っす! よろしくおなしゃっす!」


 二人は新井の挨拶をする。


「あっ、よろしくお願いします」


 なんだ、優しそう、と新井は安堵する。


「こちらお通しで~す」


 席に座りほっとするのも束の間、早速料理が運ばれてくる。

 

「お飲み物の注文どうされますか?」

「え~っと」


 山田が平田たちにメニューを見せる。


「あ~、コーラで。皆も好きなの頼んで」

「じゃあ、オレンジジュースで……」

「私もそれで」

「私はパイナップルジュース」


 店員は注文を受け付ける。


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


 店員は奥へと戻った。


「え、で、由紀ちゃん、なんで今回こんなむさくるしい所に来ようと思ったの?」

「おいおい、むさくるしいって」


 倉田が突っ込み、笑う。


「え、何? 失恋したから新しい恋探そう、とか?」

「……あははは」


 新井はただ、笑った。


「あ~、図星だ~」

「ちょ~、浩二止めろよ~」


 二人は新井を見つめ、笑う。


「えっと、私の知らない世界をちょっと見てみたいな、と思って……」


 安藤と倉田はきょとんとする。


「おい~、浩二お前全然違うじゃねぇかよぉ!」

「止めろよ! お前もそうだって思ってただろ!」


 がははは、と手を叩く。


「お待たせいたしました、こちらオレンジジュースの方」


 店員が個室に入り、飲み物を渡す。全員に飲み物が行きわたる。

 山田は手をパンパンと叩き、注目を集めた。


「よ~し、んじゃあ、今日は初めて来る由紀ちゃんとの出会いも兼ねて、まずはいっちょ乾杯しときますか~」

「「うぇ~~~い!」」


 山田はグラスを高く掲げる。


「はい、新しい仲間、由紀ちゃんとの出会いを祝しまして! かんぱ~~~い!」

「「「かんぱ~~~い!」」」


 飲み会が、始まった。







「かんぱ~~~~~い!」

「「「かんぱ~~~~~~~い!」」」


 同日、高梨の別荘でも、少なくない人数の高校生が集まっていた。


「今日はお招きいただきありがとうやんす!」


 三千路は高梨に絡む。


「酔ってるの?」

「リンゴジュースだよ?」


 三千路は高梨の肩に手を回す。

 赤石は高梨の別荘で、一人座っていた。

 高梨は赤石の近くに座る。


「私は乾杯、という言葉が嫌いだわ」

「同意見だよ」


 赤石と高梨はフランクフルトを焼く須田たちを見る。


「いかにも、やりたくもない人に無理矢理行為を強いているように見えるわね」

「そうだな」


 赤石はちびちびと水を飲む。


「皆さん!」


 別荘の中で那須が一際大きい声を上げた。


「本日はお嬢様のために集まっていただき、ありがとうございました。皆さんのご尽力の甲斐もあり、お嬢様はお父様からの政略結婚の破棄に成功いたしました」

「那須さんもクビにならなくて良かったっすね」


 須田が口をはさむ。


「はい。今回はお嬢様が自由になられましたお祝いといたしまして、私から皆さまをご招待させていただきました」

「全く、面倒なことをしてくれたわね、真由美」


 高梨は半眼で那須を睨む。

 赤石は、高梨と那須が話している場面を見るのが好きだ。高梨にも気の置けない関係の人物がいることに、むず痒い嬉しさを感じる。


「お嬢様からも皆様に感謝の言葉を仰ってください」

「……」


 高梨は前に立った。


「ありがとうございました」


 高梨は頭を下げる。


「それでは皆様、今回はお嬢様の快気祝いといたしまして、私がご奉仕させていただきます。お外の方へどうぞ」

「「いぇ~~~~い!」」


 須田と三千路が一番に外に出る。


「馬鹿どもめ」

「いいじゃない、楽しくて」

「お前が言うのは意外だな」


 高梨は目を細めて須田たちを見る。

 那須は流しそうめんの上から、そうめんを流していた。


「ふざけんな統! 全部お前が食べてんじゃん!」

「一番前で超速度で食べたらずっと俺のターン! 今さらそうめんを食べさせろと言われてももう遅い!」

「なろう小説止めろ!」


 そうめんを独り占めしていた須田は三千路に締め上げられる。


「落ち着いてください皆さん、まだまだありますから」


 那須は微笑みを絶やさない。


「なんかあれだな」


 赤石は騒ぐ須田たちを見る。


「アメリカのホームパーティーみたいだ」

「郊外に別荘があって良かったわね」


 二人の下に、上麦がてこてこと歩いてくる。


「二人とも、ご飯、食べない?」

「お前もそうめん食えよ」


 上麦は両手で四本のフランクフルトを持ち、赤石の隣に座った。


「白波ちゃん、おっきぃソーセージだね、ぐふふふ」


 どこからやって来たのか、三千路が上麦の隣に座る。


「変態!」

「消えろ」

「最低ね」

「うっ!」


 赤石たちが三千路に白い目を剥ける。

 上麦は赤石にフランクフルトを渡し、赤石は高梨にフランクフルトを渡した。


「いらないわよ、赤石君からそんなものもらえないわ、気持ち悪い」

「そうですか」


 赤石は自分で食べた。


「そうめん流してんだからお前もそうめん食えよ」

「白波! そうめん! 激しい! 戦い!」

「なるほど」


 そうめん流しでは、激しい戦いが繰り広げられていた。


「皆疲れた時、そうめん食べ放題」

「賢いな」

「んぅ~」


 上麦はフランクフルトを食べながらちょこん、と座っていた。


「お前も大人になったな……」

「どこがよ」

 

 赤石たちは別荘で遊んでいた。





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― 新着の感想 ―
[一言] 更新再会ありがとうございます。今まで最初から読み直してました。赤石の独特な視点が好きです。本格的に崩壊していく櫻井シスターズ、どうなるのか?これからの展開楽しみにしています。
[一言] こんな頃に戻りたい
[一言] 赤石がまるでオカンのようだ...
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