表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第6章 修学旅行 交際編
274/592

閑話 グランピングはお好きですか? 4



 相撲を終えた須田たちは帰って来る。


「帰ってきたぞ、悠」

「そうか。もうすぐ出来るぞ」

「ごめんな、悠だけにやらせて」

「勝手にやってんだよ」


 赤石は肉を網に乗せる。


「白波も手伝う」

 

 上麦も、肉を網に置いていく。


「ごめんね皆、私たちだけ遊んでて」

「いいからいいから」


 船頭は暮石を席につかす。


「じゃあ皆適当に座って~」


 上麦は赤石の右隣に座り、須田を右隣に招いた。


「須田、こっち」


 ぽんぽんと椅子を叩く。


「悠の隣が良かったけどなあ」

「文句、駄目」


 上麦は肉を網に乗せていく。


「肉ばっかり乗せるなよ。野菜も乗せろよ」

「……!」


 上麦は驚いた顔で赤石を見る。


「じゃあ焼いていくね~」


 スーパーで買ってきた食材を、船頭と赤石がどんどんと焼いていく。


「ゆかりパイセン大好きっス!」

「現金だなぁ、安月ちゃんは」


 はい、と船頭は安月の近くに肉を置く。


「白波、あなた汚らしい男二人に挟まれて、危ないわよ」


 高梨が対面から言う。


「誰が汚らしいだ」

「はははは、マジかよ」


 須田は豪快に笑う。


「皆焼けてるやつからとってね~」


 船頭はほいほいと肉を焼いていく。


「ありがと~、船頭さん、あとで代わるね」

「いいからいいから~」


 暮石は野菜と肉を取り、頬張る。


「美味しい~」


 満面の笑みで、暮石は咀嚼する。

 高梨たちも、皆一様に笑みを浮かべながら食事を楽しむ。


「皆で食べる。美味しい」


 上麦は自身の皿に大量に肉を乗せ、言う。


「おいお前どんだけ肉取ってんだよ。需要と供給が一致しないだろ」

「白波、肉、食べる。肉、育つ」

「ゴーレムみたいな喋り方になってるだろ。おい自重しろよ」

「ふっ」

「自嘲してどうすんだよ!」


 暮石たちの視線も上麦に注がれる。


「白波、あなたお肉ばかり食べてたら大きくならないわよ。野菜もちゃんと食べなさい」

「白波肉好き!」

「そんな偏った食事をしてるから全然成長しないんじゃないの。野菜も取りなさい」


 高梨が上麦の皿に野菜を乗せていく。


「悪魔!」

「私たちの取るお肉がなくなるでしょう」


 上麦は肉だけを食べる。


「須田助けて!」

「そのために統貴を横に置いたのね」


 上麦は須田にすがる。


「いやいや、肉の脂っていうのは、野菜と一緒に食べることで美味しくなるんだよ。上麦も肉と野菜一緒に食べてみな」

「ん~~」


 上麦は肉とキャベツを同時に食べる。


「……美味しい」

「美味しいのかよ」


 赤石はキャベツを上麦の近くに置く。

 玉ねぎ、キャベツ、カボチャなどの野菜を上麦の近くに置く。


「あはは、白波野菜包囲網」


 暮石が手を叩いて笑う。


「悪魔石!」

「なんとでも言うといい」


 赤石は肉が行きわたっていない場所へ置いていく。


「じゃあ俺交代するわ、悠」

「じゃあ頼む」


 須田と赤石が位置を変える。

 暮石と船頭も同様にして席を代わる。


「さあ、おれの肉は……」


 赤石は自身の皿を見た。

 肉がなくなり、野菜だけになっていた。


「てめぇ!」


 上麦は口をもごもごと動かしながら、幸せそうな顔で微笑んでいた。


「吐け! 吐き出しやがれこのハイエナ女!」

「ちょっと悠人、まだまだお肉はあるからそんな狭いところで争奪戦広げなくても~」


 船頭がどうどう、と赤石をなだめる。


「このためにこの席を狙ってたのか」

「肉美味い」

「はあ」


 赤石はため息をつき、野菜を食べ始めた。


「まあいいよ、なんでも」

「赤石、諦め症。白波のこと許してくれる」

「怒ってももう肉は返って来ないからな。仕方ない」


 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、一角が騒々しくなる。


「それにしても人多いな」


 赤石は周囲を見た。

 コテージを拠点にして、机と椅子の並べられている整然とした区画に、多くの家族、学生たちが肉を焼いていた。

 そこら中で肉が焼ける音がし、肉の焼ける匂いが立ち込める。


「まあ流行ってるからね~」


 船頭が咀嚼しながら言う。


「あとで山登り行かね?」

「賛成~」


 須田の提案に手が上がる。


「なんか全然関係ないんだけど、暮石ちゃんお肉焼くの上手くない?」


 船頭の下に運ばれた肉を見ながら、言う。


「こんなものに上手いとか下手とかあるのか?」

「あるからあるから! なんていうかな、肉が網に全然引っ付いてないんだよね」

「あ~、やっぱり飲食店の娘だからかな」

「「「飲食店の娘!?」」」

 

 一同が声を同じくして、暮石を向く。


「え、な、なに? どうしたの皆」

「どうしたのって、私そんな事初めて聞いたし」

「いや、俺もだ」

「私もよ」

「白波どうなのよ」

「白波は知ってた」


 上麦を除き、他全員は初めて聞いたことに驚いていた。


「まさか上麦、お前、だから暮石と一緒に……」

「白波、そんなに卑しくない」

「まだ私たちが小さいころね、白波が皆から孤立してたから私が家に呼んだんだ。そこでご飯振る舞ってあげて、その時から白波と私は一緒にいるんだ」

「なるほど」


 そんな涙ぐましい過去が、と赤石は上麦と暮石を見やる。


「立派になったな、二人とも」

「何も見てないでしょ!」


 暮石は拳を振り上げる。


「でも上麦は孤立しそうだな、確かに」

「そ~。白波すぐ思ったこと言っちゃうから本当ひやひやしてて」

「白波嘘もつける」


 上麦は赤石の目を見た。


「赤石……面白い」

「…………」


 赤石は半眼で上麦を見下ろす。


「ともとかにもすぐ反発しちゃうから正直、今もひやひやしてる」

「平田偉そう。白波嫌」

「なるほど」

「何をなごんでるのよ、あなたたち。今は暮石さんの家の話だったでしょう」


 高梨が途中で会話に入る。


「そ、そうだった。暮石ちゃんの家お店なんだ~」

「焼き鳥屋みたいなとこ」


 上麦が頬張りながら言う。


「居酒屋みたいなところってことね」

「串打ち三年焼き一生、ってやつか」

「どうだろ~」


 あはは、と暮石は笑う。


「三葉、料理上手い」

「やっぱりお店の子だから料理上手いんだ~」


 へ~、と船頭が手を合わせる。


「今度暮石ちゃんの家も行ってみたいな~」

「ダメダメ、ダメで~す」


 暮石がバツを作る。

 赤石たちは料理に舌鼓を打った。

 






 食事を終えた赤石たちは、片づけをしていた。


「はい、白波スイカ」


 暮石が上麦にスイカを食べさせる。


「美味しい」

「うん、でも私の指まで食べないで」


 暮石は上麦を甲斐甲斐しく世話していた。


「人間とモルモットだな」

「言い方よ」


 赤石はふ、と笑う。


「でも白波ちゃんっているだけでその場の空気変わるよね」

「まあいるだけで空気が変わる奴っていうのは、どこにでもいるもんだろうな」

 

 船頭は炭を冷やしながら言う。


「悠人お肉足りた?」

「満腹だよ」

「良かった良かった、白波ちゃんにすごい奪われてたからね」

「天災みたいな物だ」


 須田は赤石に寄りかかる。


「やっぱり自然の中で食べるとなんか美味く感じるよなあ」

「俺は正直家で食べた方が美味いな。外で食べたら砂埃とかつくだろ」

「も~、本当悠人って嫌なことばっか言うし」

「この意見に関しては結構いろんなところで聞くはずだぞ」


 赤石、須田、船頭の三人は笑う。


「それにしてもゆかりが企画なんて珍しいな」

「ちょっと思いついたんで~」


 いや~、と船頭は頭をかく。


「夏休みももう終わるからね~」

「他の奴らは誘わなかったのか?」

「ん~…………」


 船頭はおとがいに指をそっと当てる。


「今はあいつらとつるんでないな~」

「なんで?」

「なんでって、大学受験も近いし、そろそろ遊んでられないかな~、って」

「…………そうか」


 赤石と船頭は無言で片付けをした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ