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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第6章 修学旅行 交際編
273/593

閑話 グランピングはお好きですか? 3



「パイセン~」


 安月が赤石の下へとことこと走ってくる。


「パイセンって偏食らしいスね」

「偏食の定義によるな」

「偏食であること認めてるようなもんスよね、ぷぷぷ」


 安月は鼻で笑い、レモンをどさどさとカゴの中に入れた。


「まあ私は? 偏食なんてないんで? レモンでもたくさん食べれますけど?」


 半眼で口端を釣り上げながら、安月は赤石を見た。


「いや、安月ちゃん、レモンこんなに食べる人いないから戻してきてよ」

「え?」


 船頭はレモンの入ったパックを、安月に渡す。


「じゃあよろしくね?」

「は……はい」


 安月はとぼとぼと、レモンを持ち場に戻しに行く。


「ふっ……」

「……!」


 去る安月の背中を、赤石は鼻で笑う。


「ちょっとちょっとちょっと! パイセン! 何笑ってんスか!?」


 レモンを戻した安月は早足で戻ってくる。


「本当性格悪いスね、パイセン」

「言われてるぞ、上麦」

「白波、何でも食べる」

「赤石パイセンに言ってるんスよ。もう少し須田パイセンのこと見習ったらどうすか?」


 安月が須田を指さす。

 須田は暮石と高梨と共に食材巡りをしていた。


「俺と統貴は違うからな。人間は自分とは違うものを持つ人に魅かれるっていうからな……」


 赤石は遠い目をして言う。


「何が自分とは違うものを持つ人に魅かれるスか。パイセンの場合引かれる、でしょ。この一瞬でその俗説が間違ってることが分かったスよ」


 安月はぐちぐちと文句を言いながら、再び須田の下へと戻った。


「全く、子供じみたやつだな」

「本当」


 上麦は赤石の隣で腕を組みながら言う。


「お前もだよ」

「?」


 上麦は自分を指さし、小首をかしげた。


「じゃあそろそろ会計しよ~」


 船頭は須田たちにも言い、カウンターへと向かった。


「いくらになると思う?」


 須田は赤石に言った。


「一人頭二千円弱と考えて、一万三千ってところだろうな」

「ほう、じゃあ俺は一万円ジャストで」

「私は一万千円にするわ」

「突然」


 高梨が横から出てくる。


「白波八千円」

「じゃあ私一万五千円にしようかな」

 

 上麦と暮石が言う。


「負けたらどうする?」

「負けたやつが負けてない奴からビンタされる」

「え、普通にやだよ!」


 暮石が声を上げる。


「ほんの冗句だ」

「赤石君は真顔で言うから全然ジョークに聞こえないの!」


 だんだんと床を蹴り、暮石は怒った。


 船頭が会計を終え、他のメンバーが集まる。


「ゆかり、いくらだった?」

「え、なんで?」


 船頭は赤石にレシートを見せた。


「一一三四〇円。高梨がニアピンだな」

「当たり前よ」

「上麦が三三四〇円、暮石が三六六〇円の差だから暮石が負けだな」

「なんで~、も~!」


 暮石は頬を膨らませ、レシートを見た。


「白波もうちょっと買っててよ!」

「え、白波のせい?」

 

 上麦はきょとんとする。


「ちょっと、私がいないうちに何皆で楽しそうなことしてんの」

「楽しそうではないだろ、特段」


 赤石たちは店を出た。


「よし、じゃあ会場に行こーー!」


 船頭を先頭に、そこからは徒歩でグランピング会場へと向かった。


「重い~」


 上麦がレジ袋を持ちながら、よたよたと歩いていた。


「じゃあ持ってやるよ」


 赤石が上麦のレジ袋を持つ。


「赤石助かる」

「ああ」


 赤石は右手に飲料水を、左手に上麦から受け取ったお菓子を持った。


「やっぱり統貴は頼りになるわね」

「もちのろん」


 高梨は須田が持つレジ袋の量を見、感心した。


「俺はこの中で一番鍛えてるからな!」

「だって」


 船頭が赤石を見る。


「鍛えてなくて悪かったな」

「まあまあ、そう怒らずに」

「お前がまいた種だよ」


 赤石たちはグランピング会場についた。


「じゃあ受け付けしてくるからちょっと待ってて」

「ああ」


 船頭は森に設置されたコテージへ行き、受付に行った。


「白波、あなた赤石君に荷物渡したのね」

「重かった」

「赤石君、あなた白波にだけ優しいわね」

「俺は博愛主義者だよ」

「嘘おっしゃい。醜い欲望が透けて見えるわ」

「なんでだよ」


 上麦は気楽な顔でぷらぷらとしていた。


「白波可愛いから皆によくしてもらえる」

「あなた将来ひどい目に遭うわよ」

「白波お金持ちと結婚して玉の輿」

「堂々としてるわね」

「本心に忠実なところが上麦のいいところでもある」


 赤石は上麦を買っていた。


「受け付けしてきたからこれ持って~」


 コテージから出てきた船頭がバーベキューに必要な物を渡す。


「あそこで私たちバーベキューしてください、って」

「なるほど」


 赤石たちは木製の机、椅子が並ぶ区画に立ち入る。


「今日一日取ってるからそこまで急がなくて良いって」

「なるほど」


 船頭たちは荷物をその場に下ろす。


「暫く準備あるから皆は遊んできて良いよ~」


 船頭がひらひらと手を振る。


「俺は面倒だからここにいる」

「じゃあ私もここにいようかしら」


 赤石、高梨はその場にとどまることを選択した。


「ああ、じゃあ俺も」


 須田も名乗りを上げるが、


「須田パイセン、相撲取りましょうよ」


 安月が須田に話しかける。


「いや、俺も準備しようと思って」

「大丈夫スよ、全部赤石パイセンがやってくれますから」

「行って来いよ」

「あ~……分かった。じゃあ行く」


 須田は安月に手を引かれ、外に出た。


「よ~し! かかってこいラナ! 俺が相手だ!」

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」


 安月が須田に突進する。

 須田は安月を軽々と持ち上げ、軽く投げ飛ばした。


「うげっ!」

「わはは! まだまだ俺には敵わねぇなぁ!」

「白波も!」


 上麦が須田に向かう。

 こともなく倒される。


「あはは、ちょっと体格差あるなあ」

「私も行く!」


 暮石が挑み、三千路も挑むが、敗北する。


「つ、強すぎる……」

「わはは、ほらほら、その程度かぁ!?」


 須田を中心にして、三千路たちがかわるがわる須田に突っ込んでは投げ飛ばされる。

 その様子を赤石たちは遠く離れた場所から見ていた。


「楽しそうね」

「全く」

「悠人も行けば?」

「面倒だ。準備をしてる方が面倒じゃない」

「悠人って本当省エネだねえ」

「出来るだけ楽して生きていきたいんだよ」


 船頭たちは食料をクーラーボックスに入れ、網を設置する。


「おら!」

「くそぉ!」

「はっはっは、まだまだだなぁ」

「うわああぁぁ!」


 須田は次々と投げ飛ばす。


「いや~、なんて言うのかな」


 船頭が須田たちを見ながらつぶやく。


「楽しいね」

「…………ああ」

「そうね」


 船頭たちは須田の相撲大会を穏やかな目で見ていた。 





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― 新着の感想 ―
[一言] 上麦ちゃんは本能で生きてて、言葉の裏を読まないでもいい、あるいは言葉の裏があっても浅いから、赤石としては付き合いやすいのだろうなぁ。 そういう意味では暮石さんもあんまり裏の無さそうな人物で…
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