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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第6章 修学旅行 交際編
255/592

第226話 銭湯はお好きですか? 3



「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁ!」

「ええええええええええええぇぇぇぇぇ!?」


 新井の悲鳴が、こだまする。


「なにしてんだ由紀! ここ男湯だぞ!?」

「待つのは聡助だし! ここ女湯だから!」

「そ、そんなわけないだろ! 確かに俺は暖簾見て…………あ」


 櫻井は少しの間、硬直する。


「もう、聡助とにかく隠れてよ!」

「す、すまん!」


 櫻井は岩の陰に隠れた。

 新井は足から少しずつ、湯につかる。


「聡助なんだからそんなことするはずないって知ってるけど、これからどうするし!? 私だからよかったけど!」

「す、すまん由紀、俺のせいで……」

「分かったし! どうしよう……」


 新井はおろおろとする。


「もしかしてここ、女湯なのか?」

「そうだし! 私はちょっと早めに入っちゃったから一番乗りだったけど、もうどんどん女の子入って来るし! 私がなんとかするから聡助はそこで隠れてて!」

「恩に着る……!」


 新井はドアの方へと向かった。


「修学旅行楽しいよね~」

「ね~、明日の昼に帰らないといけないなんて信じられない」

「あ~帰りたくないな~」


 数人の女子生徒の声が聞こえてくる。


「ちょちょちょちょっと待ったぁ!」


 新井がドアを開け、走る。


「ど、どうしたの由紀ちゃん? 危ないよ?」

「こ、この銭湯は……えっと……私が占領したぁ!」

「……どういうこと?」

「ちょっと~、由紀ちゃん修学旅行でテンション高くなっちゃった?」

「違うくて! そうじゃなくて! とにかく入っちゃ駄目!」


 櫻井の存在をにおわせないように、新井は女子生徒たちを食い止める。


「え、でももう入ってるよ?」

「え?」


 女子生徒は服を脱ぎながら、指さした。

 別のドアから、水城たちが入って来ていた。


「ちょちょちょちょちょっとおおおおおぉぉ!」


 新井が走って水城を追いかける。


「わ、ビックリした。どうしたの、由紀ちゃん?」

「しおりっち! まだ入っちゃ駄目だから!」

「え、なんで?」

「なんでもはなんでも!」

「花波ちゃんとかもう浸かってるのに?」

「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 花波は体を清め、銭湯に入っていた。


「裕奈ちゃん、まだ入っちゃ駄目!」

「何を言ってますの、あなた。私の行動をあなたが諫める権利はないでしょう? 私を縛ってもいいのは聡助様だけですわ」

「由紀ちゃんなんかちょっと変だよ?」

「変じゃないの!」


 水城もまた、入ってくる。


「お風呂あったかいよぉ」

「……」


 葉月、八谷も入ってくる。


「ああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」


 結局、新井は誰一人として食い止めることが出来ず、続々と女子生徒が銭湯へと入ってきた。


「どうしようどうしようどうしようどうしよう」

「由紀ちゃん、どうしたの?」


 水城が不安そうに新井を見る。


「何かあるのかな?」


 水城が疑問に思いながら岩陰を見た時、


「……あ」

「……水城」

「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 櫻井と、目が合った。


「な、なになに!?」

「虫!?」

「どうしたの水城さん?」


 女子生徒が水城の下へとやって来る。


「な、なんでもないよ、あ、あはははは~。ちょっと影が虫に見えただけ~」


 水城はそ知らぬふりをして女子生徒たちの尋問をやり過ごす。


「あなたたち、銭湯でくらい静かに出来ませんの? うるさい……」


 花波が櫻井を発見する。


「そ、聡助様ぁ! どうしてこんなところに!? 私の、私の体を見てくださいまし!」

「や、止めろよ裕奈!」


 花波はざばぁ、と湯から立ち上がり、その細くしなやかな体を櫻井に見せつける。

 豊かな胸に、細すぎるとも言える体で、花波は櫻井に抱き着く。


「さ、櫻井くん…………!?」

「聡助!?」


 岩場の陰から、葉月と八谷が声を上げる。


「な、なんでこんなところにいるのよ!」

「お、俺だって入りたくて入ったんじゃねぇよ!」


 言いながら、八谷は湯から上がる。


「まずいよ、皆……」


 櫻井は岩に向かい、水城たちに背中を向けている。


「こんなところが見つかったら櫻井君は退学……もしかしたら最悪捕まるかも……」

「な!?」

「嘘ですわ!」

「そ、そんなぁ……」

「ヤバいわよ」


 櫻井の取り巻きが顔を見合わせる。


「聡助が女湯なんか入って来るからこんなことに!」

「す、すまん! すまん!」

「ちょっと、こっち見ないでって!」

「すまん!」


 櫻井は再び岩場に顔を向ける。


「私は見て欲しいですわ」

「裕奈ちゃんは黙ってて!」

「聡助様との逢引き……」


 花波は、はぁはぁと身悶えする。


「皆、ここは協力して櫻井君を逃がそう?」

「そ、そうするしかないし」


 水城、新井、花波、葉月は櫻井を取り囲むように、輪になった。

 櫻井は水城たちに背中を向け、岩を向いている。


「これでとりあえずここにいるのは櫻井君だって分からないはず」

「何をやってるんですの、あなた。あなたも早く聡助様をフォローするべきですわ」

「そ、そんなこと恥ずかしくて出来ないわよ!」


 八谷は櫻井たちから距離を取った。


「そ、そう言われると私も急に恥ずかしく……」


 水城は櫻井を見た。

 ぷに、と水城の脚に何かが当たる。


「ひゃんっ!」

「「「え?」」」


 女子生徒が一斉に水城を見る。


「な、なんでもないよ~……」


 水城は不器用に笑いながら、手を振った。


「ちょ、ちょっと、さっき私の脚に何か当たったよ!」

「うるさいですわよ水城さん、聡助様がいることがばれたらどうしますの!」

「誰が何をしたの~?」

「す、すまん、俺だ……」


 櫻井が手を挙げる。


「ちょっと櫻井君! 止めてよ本当に! 女の子の体勝手に触らないでよ!」

「す、すまん! すまん! でも水城の体ってすごいぷにぷにしてて……」

「勝手に感想言わないでよ!」


 櫻井は平謝りする。

 水城は顔を真っ赤にして、ぷんぷんと怒る。


「地獄だぁ…………」


 櫻井は女湯からの脱出を、考えていた。

 





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― 新着の感想 ―
[一言] 本当にこいつらだけでよかったな。他の人からすれば完全にトラウマものだぞ。てか流石にここまでやらかせば狂人として有名になるだろうな
[一言] ラブコメ主人公ってこういうもんですよね。 普通の人間がしたら犯罪レベルだけど、そうは成らない。 明石くんが、ラブコメ主人公の理不尽なチートに向かって対抗している作品だと理解しています。 …
[一言] こんなやれやれ系な地獄は要らない 前書きで書いた地獄はこれじゃないよね?
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