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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第6章 修学旅行 交際編
248/592

第219話 花波裕奈はお好きですか? 10



 翌日、


「おう」

「さ、櫻井君!?」


 修学旅行中の水城の下に、櫻井が戻ってきた。

 横に花波を連れ、花波はどこか俯き気味で、普段との様子の違いに、水城は半ば疑義を抱いた。


「あ、聡助! 今頃帰ってきて! 何やってたし!」

「さ、櫻井君、何かあったの?」

「何やってたのよ、聡助」

「櫻井君、もう二日目だよ!」


 続いて葉月、新井、八谷が櫻井の下へとやって来る。


「いやぁ、ちょっと道に迷っちまってさぁ。それにお金も無くなるし、もう散々だった」

「え、昨日から今日まで、どうやって来たの?」


 水城が、純粋な疑問を櫻井にぶつける。


「いや……」


 言葉に詰まる。

 そして花波を見た。花波は一瞬櫻井と目を合わせると、気まずそうにまたうつむいた。


「え、まさか……」


 新井がわなわなと震える。


「まさか、一緒のホテル泊まったり……」

「……」

「……」


 花波は小さく頷く。


「「「え、ええええええええぇぇぇぇ?」」」


 花波に羨望の視線が注がれる。


「で、でも、ホテルって言っても別室だよね? 別室だよね?」

「……」


 花波が横に首を振り、否定する。


「い、一緒の部屋ぁ!?」


 ちょっと何やってるし、と新井が花波をぶんぶんと揺さぶる。


「おかしいし、そんなの!」


 次は櫻井に詰め寄る。


「お、俺だってどうしようか迷ったよ。でも、お金もなかったし、ああするしかなかったんだよ」

「スマホ使えばよかったし! 私でも連絡してくれたらすぐ迎えに行ったし!」

「い、いや、一日中使ってたから充電切れて……」

「あぁ――」


 葉月がその場にふらふらと頽れた。

 八谷が葉月の身体を支える。


「い、一緒の部屋なんて、絶対間違いとか起きるし! 絶対起きるし! 何したし! 何したし!」

「な、なんにもしてねぇよ! なぁ、裕奈」

「……」


 花波はうつむいたまま。


「も、もしかしてキスとか……」


 恐る恐る、水城が尋ねる。


「あ……」

「…………」


 櫻井と花波は途端に顔を赤くする。


「は、はぁ!? キスぅ!?」

「ち、違う違う違う!」


 櫻井は必死に否定する。


「おかしいし! 何!? 道に迷ったから一緒のホテルでキスした!? え!? どういうことし!? 付き合ってるの!?」

「ち、違う違う! あれはただの事故で!」

「もしかしてお風呂とか……同じ部屋……だよね」

「そんなことあるわけ…………」


 櫻井はまた、思い出したかのように固まる。


「お風呂まで一緒に!? もうヤバいし! ヤバいって!」

「違う違う、あれもそういうのじゃないから!」


 櫻井は新井たちに詰め寄られていた。



「あ、櫻井君だ」


 暮石がぼそ、と呟いた。

 隣にいる赤石と三矢が櫻井を見る。


「なんやあいつ、今頃帰ってきたんか。おっそいやっちゃなぁ」

「そういえば櫻井君を待ってた先生って?」

「霧島が一報入れてから合流したらしいで」

「櫻井君と花波さん、どうやってここまで来たんだろう?」


 小首をかしげる暮石に、三矢と赤石も不思議な顔をする。


「まあ大方ホテルとかに泊まったんじゃないか」

「ホテルぅ!?」


 暮石がぼっと顔を赤くする。


「何言ってんだこの変態! 死ね!」

「なんでだよ」


 隣にいた鳥飼が暮石を抱き寄せ、赤石から遠ざける。


「赤石赤石」

「なんだ」


 上麦が赤石の裾を引っ張る。


「あれ食べたい」

 

 そして目の前の屋台を指さした。


「勝手に食えよ」

「お金ない」

「食いすぎなんだよ」

「買って」

「だってよ、ミツ」


 赤石は三矢を見た。


「何言うてんねん! 自分で買わんかい! ちっちゃいからって誰にでも愛想振りまいとったらええ思い出来ると思うなよ!」


 まくしたてる三矢に、上麦は赤石の背に隠れた。


「借金取り立ての人みたい」

「現世は怖い人間が多いな」


 赤石は取り巻きに責められる櫻井を見ながら、言う。


「ちょっと、白波にちょっかいかけるな!」


 鳥飼が上麦もまた、抱き寄せる。


「あかね、あれ食べたい」

「お~よしよし、買ってやる買ってやる、待ってな、十六本買ってくるからな」

「これがモンスターペアレントの卵か」

「黙れクズ!」


 鳥飼は屋台へと赴いた。


「あかねちょろい」

「女子高生ビジネスが白熱してやがる……」


 赤石と三矢は恐れおののいた。


「でも赤石君、櫻井君って本当にホテ……とか泊まったのかな?」

「まあ、大方そんなところだろ」


 三矢に目配せすると、三矢もまた頷いた。


「こ、高校生なのに同じホテル泊まるなんて不健全だよ!」

「俺に言われても。事実かどうかも分からないだろ」

「花波さんと櫻井君で……」


 暮石はぼけ、とした。


「赤石、汚いな……」


 後方から黒野がやって来る。


「修学旅行でホテルに泊まるとか、本当あいつら何考えてるか分かんないな」

「いや、まだ事実かどうか分からないぞ」

「昨日の夜も隣の部屋すごい……うるさかった」


 修学旅行。それは一大恋愛イベント。

 昨夜も多くの学徒が、異性の部屋に入り浸り、少なくない愛を語っていた。


「どいつもこいつも……人の迷惑にならないところでやれって」


 黒野はぐちぐちご愚痴る。


「何をやってるのよ、あなたたち」

「高梨、昨日、隣の部屋、うるさかった」

「そうね。夜遅くまで男声が聞こえてたわ。恒例行事みたいなものよ」

「あわわわわ…………」


 暮石がおろおろと慌てる。


「お菓子パーティー?」

「世間はそんなに平和じゃないんだよ」


 わざとなのか天然なのか、上麦は唇に人差し指を当てながら考える。


「ちょぉ、マジ一日裕也あーしらの部屋いたのヤバくね?」

「本当それ、ウケる~」

「マジそれ~」


 そして隣を平田たちが通って行く。


「隣って……?」

「あれ」

「指をさすんじゃない」


 指をさす黒野を、赤石が制止する。


「あの髪型プリン……。本当ウザいしキモいし死ね」

「おいおいこんなところで止めてくれ、俺が言ってるみたいになるだろ」


 赤石は平田と黒野の目が合わないよう、遮蔽するように立つ。


「何を話してるんだい、楽しそうだね」

「霧島君」


 霧島がやって来る。


「おーい、白波~、買ってきたぞ~」

「ありがと、あかね」


 鳥飼は嬉しそうな顔で上麦と暮石に屋台で買った焼き鳥を渡す。


「お、なんだいそれ。僕にもくれるのかい?」

「死ね。消えろ」


 鳥飼は霧島に中指を立てる。


「相変わらずだねぇ。で、何の話をしてたんだい?」

「なんか昨日平田の部屋に男子が入ったとかなんとか……」

「ああ、なるほど」


 三矢の返答に、霧島は大きく頷く。


「なんか知っとんか?」

「どうやら平田さんは大場裕也君と付き合うようになったみたいだね」

「……ん?」


 赤石は頭の上に疑問符が浮かぶ。


「車で送ってもらってたりしてなかったか、最近」

「ああ、大学生の。別れたんだって」

「早すぎる」


 それにしても何でも知っているな、こいつは、と赤石は霧島を見る。


「いやぁ、僕の情報網を舐めてもらっちゃぁ困るよ。あ、聡助じゃないか。聡助~」


 霧島は腕を振りながら、櫻井の下へと駆け寄った。新井や葉月から白い眼を向けられながら。


「修学旅行なのに、すごいいっぱいカップル出来てるんだね」


 暮石が平田や櫻井を見ながら言う。


「まあ、二年の修学旅行なんかそんなもんなんとちゃうか?」

「かわいそうね、赤石君」

「俺の未来を読んでんじゃねぇ」


 赤石は持ちきれない上麦の焼き鳥を持たされながら突っ込む。


「じゃあ次はどこに行こうかしら?」

「どこ行く、皆」

「食べ物屋さん!」


 上麦が小さくジャンプしながら言う。


「食べ物屋さんが一票だけど、皆は?」

「どこでもいい」

「そういえばヤマタケどこ行ったんや?」

「失せろゴミ」

「へ~」

「どこでもいいわ」


 赤石と暮石の班はどこに行くかを、決めかねていた。


 

 



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― 新着の感想 ―
[一言] 荒れてるなこの高校
[一言] 上麦のあざとさはすべて計算のうえ...?鳥飼は将来こうやって騙されて貢ぐことになりそうな...今もか。
[良い点] ・「あかね、あれ食べたい」  「お~よしよし、買ってやる買ってやる、待ってな」  「あかねちょろい」 ・高梨は『持ちきれない上麦の焼き鳥を持たされながら』突っ込む。 ぼ、ぼくはだまされ…
感想一覧
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