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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第6章 修学旅行 交際編
241/592

第212話 花波裕奈はお好きですか? 3



 京都に着いた。


「京都だーーーー!」


 真っ先に暮石が、前に立った。


「おーい、お前ら危ないから列になれー」


 神奈が順当に、生徒たちを先導する。

 京都駅は広いホームに、見たこともないほどの高い天井を備えていた。


「赤石君、私京都駅に来たのは初めてなのだけれど、すごいわね」

  

 高梨は空を見ながら、呆然と言う。


「お前は見識が浅いな」

「何を言ってるのよ、あなたは来たことがあるっていうの?」

「来たことはないが見たことはある」

「なんでよ」

「テレビでやってたからな」


 見たままだな、と赤石は思った。


「拙者もアニメで京都駅を見たでござる」

 

 山本が得意げに言った。


「ちなみに京都駅には何のために使われてるのか分からない謎の空間がありましたぞ」

「俺も見たな、そんなの」


 赤石はあたりを見渡した。

 改札を出て左側に土産物物販店、および珈琲店が立ち並んであり、何階建てにもなっていた。そしてその屋上に例の謎の空間があるだろうな、とうすうす感じていた。


「何をテレビごときで得た知識をあたかも自分が実践して知った知識のように披露してるのよ。あさましいのよ、あなた」

「おい、言われてるぞヤマ」

「拙者は赤石殿の補足をしただけなのでござるが……」


 山本は眉根を寄せた。


「よし、お前らしおりを見てくれー。とりあえず初日だからバスで観光行くぞ~」

「「「おーー!」」」


 赤石たちは京都観光に、出発した。


「またバスに乗るのか……」

 

 赤石は肩を落としながら、とぼとぼと歩く。


「次は戻さないといいわね」

「さっきは戻したみたいな言い方をするな」


 赤石たちは、バスに乗り込んだ。






 赤石たちは行きのバスと同じ席順で、座った。


「皆さん初めまして、私今回の京都の旅のお供をさせていただきます、天真爛漫、工藤奈々と言います、本日はよろしくお願いしま~す」

「「「よろしくお願いしま~す」」」


 バスに乗車し、走り出した。

 京都の旅の一助として、バスガイドが伴っていた。


「売れない地下アイドルみたい……」


 赤石の後ろで、黒野がぼそ、と呟く。


「売れない地下アイドルというお言葉をいただきました、天真爛漫工藤です、ありがとうございま~す」

「がっつり聞こえてるじゃねぇか」


 黒野の言葉を拾った工藤は明るく笑う。

 赤石は黒野を半眼で見た。


「聞こえると思わなかった」


 黒野はいささか驚いた顔をしている。


「さて皆さん、今日は遠くからのお越し、誠にありがとうございます。皆さん昨日は熟睡出来ましたでしょうか?」

「出来たーーー!」


 バスの後ろの方の座席で、大声で返答がされる。


「はい、ありがとうございます。熟睡できたようでなによりです。ところで皆さん、京都について何か知っていることなどありますか?」

「寺―――――!」


 バスガイドと後方の座席に座っている男子たちでにわかに盛り上がる。


「バスで後ろの方座ってる奴らって本当面白くもないのに自信満々で鬱陶しい返しばっかする」

「司会の進行に協力的、ということにしておこう」


 赤石と黒野は前後で喋る。


「あなたたち、何を前後で喋ってるのよ。赤石君、あなたは隣の私を差し置いて黒野さんと喋ってるんじゃないわよ」

「赤石、隣の女が嫉妬してる」

「嫉妬をしてるとかしてないとかじゃないのよ。道理に反すると言っているのよ」

「あっちこっちで喋らないでくれ。何も聞こえない」


 前方で説明をするバスガイド、後方でバスガイドの反応に嬉々とする男子生徒たち、個々人に思い思いの雑談を楽しむ生徒たち、そして前後で争う高梨と黒野。

 バスは著しく騒々しかった。


 バスを走らせて数十分が経った。

 赤石は依然として平静を保っていた。


「赤石君にしては珍しいわね、こんなに平静を保てているなんて」

「誰かの話を聞いてるときはそっちに集中できるから比較的酔いづらいんだよ」

「何よ、私のせいで酔った、って言いたいのね」

「バスガイドの人よりは喋ってなかっただろ」


 赤石たちは工藤を見る。


「ではここで皆さんに心理クイズをしたいと思います」

「よっ!」

「待ってました!」

「えぇ~、何ぃ~?」

「本当おもしろくないし~」


 生徒たちがそれぞれに言う。


「皆さん、夜寝るときは次のうち、どんな姿勢で寝てますか~?」

「うおおおおぉぉぉっ!」


 心理テストというエンターテイメント性のある質問に、場が沸く。


「修学旅行が始まってすらないのにすごい熱気だな」

「赤石君も何か言いなさいよ」

「こんな前の席で何も言うことはない」


 工藤は人差し指を立てた。


「はい、ではまず一つ目は、仰向けに寝ている方、挙手して下さ~い」

「……俺はこれだな」

「私もね」


 赤石と高梨が手をあげる。

 平田、鳥飼、三矢も同様に手をあげる。


「では次は、横向きに寝ている方~」

「私はこれかなあ」

「ん~これかな~」

「これでござるかねえ」


 山本、水城、暮石が手をあげる。


「では次に、横を向いて膝を抱えて丸まっている方~」

「ん!」

「これ……?」


 上麦、八谷が手をあげる。


「では、うつぶせで寝ている方~」

「私はこれ」

「私これだし~」


 黒野、新井が手をあげる。


「それでは最後に、何かに抱き着きながら寝ている方~」

「……」

「ふぇぇ、私これだよぉ」

「あははは、僕はこれだね」


 神奈、葉月、霧島が手をあげる。


「こういう心理テスト、結果聞く前からなんとなく分かる」

「まあ確かに聞かなくてもなんとなくどういう結果になるか分かるな」

「面白くないとこを言うんじゃないわよ」


 赤石と黒野の問答に、高梨が茶々を入れる。


「では結果を発表しま~す」

「おおおおぉぉ!」

「まず、仰向けで寝ている方、この方は自信家で、自分が大好きな方です~」

「大当たりじゃないか」

「あなたもよ」


 赤石、高梨はお互いを見た。


「次に、横向きで寝ている方ですが、努力家で真面目、誠実な人柄の方が多いです~」

「やった?」

「凡庸でござる……」

「そうなんだ~」


 水城、三矢、暮石は百面相する。


「そして横を向いて膝を抱えて丸まってる方~、この方はまだ赤ちゃんの時の記憶が忘れられず、甘えん坊な方です~」

「はっ!」

「え!」


 上麦は目を見開いてわなわなと震えた。


「白波が……甘えん坊?」

「白波は想像通りだよ!」


 暮石が言う。

 八谷もまた、驚いていた。 


「続いて、うつぶせで寝ている方、この方はストレスがたまってて、ちょっとエッチな方です~。気を付けましょう~」

「……」


 黒野は視線を下げた。


「良かったな」

「何が」


 赤石は黒野に呼びかけた。

 新井はけたけたと笑う。


「最後に、抱き枕や毛布などに抱き着いて寝ている方~。この方は欲求不満で依存症です~。とてもエッチで依存症になりやすいので、気を付けましょう~」

「抱き着いて寝ている人にどんな恨みが……」


 バスの後方ではきゃー、と嬉しい悲鳴がする。


「そ、そんにゃぁ……わ、私そんなことにゃいよ……ふにゅう……」

 

 葉月はこういう結果になると分かってて手をあげたな、と赤石は思う。


「いやぁ、まさか僕がそんな認定をされるなんて思ってもいなかったよ、あっはっは」


 愉快犯霧島も同様だな、と思う。


「…………」


 そして、通路を挟んで向かいの席で、神奈が一人、玉のような汗を流しながら、黙っていた。


「先生」

「……」

「エッチ……」


 黒野が呟いた。

 神奈は顔を赤くして、そっぽを向いた。


「心理テスト……恐ろしいわね」

「まぁ、修学旅行生が来るたびにこすってたネタなんだろうな。オチとそこに至るまでに、すごい話慣れてる感じがあった」

「余計な考察をするんじゃないわよ」

「先生はヤバい……」


 赤石たちは神奈を見た。

 神奈は赤石たちに見るな、と片手をぷらぷらと振った。






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― 新着の感想 ―
[良い点] >「白波が……甘えん坊?」 全読者がうなずいた(まて
[一言] 寝相コロコロ変わってるもんでわからんな... こういう心理テストはあらかじめ答えを予想し無難な答えを選ぶのがベストよね。
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