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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第5章 夏休み 後編
211/592

第188話 バーベキューはお好きですか? 1

19/11/17(日)八谷が高梨の別荘を知らないという情報を修正しました。



「よお」

「久しぶりね、赤石」

「言うほど久しぶりというわけでもない」


 プールから帰宅し、二日後。

 赤石は駅前で、八谷と会っていた。


「今日はバーベキューね!」

「そうだな」

「ビービーキューね!」

「テンション高いなお前」

「楽しみね!」


 八谷は軽い歩調で進む。

 赤石は八谷を迎えに来ていた。


「プール楽しかったわね!」

「そうだな」

「そういえば赤石、あんたあの日ピカピカしてたけどなんだったのよ」

「興奮すると体が光るんだよ」

「妖怪みたいね」

「誰がだ」


 信号で、止まる。八谷は止まっている間もかかとを上げ下げする。

 赤石は、スマホを見た。


「何見てるのよ?」

「株価だ。世界情勢に詳しくないといけないからな」

「あんた、投資で生きてるの?」

「冗談だ。カオフだよ」

「誰からの?」

「水城」

「えぇ!?」


 信号が、青になる。二人は止まったままでいた。


「なんでしおりんからカオフが来るのよ」

「……」


 言ってしまってもいいものなのだろうか、と赤石は思案する。

 八谷が櫻井に懸想する手伝いを止めた代わりに水城が櫻井に懸想することを手伝いました。そんなことを言ってしまって、良いのだろうか。

 水城との契約は櫻井に一矢報いるためのものではあるが、赤石はその意図を誰にも言う気はない。


 信号が、赤になる。


「メル友だよ」

「古い言い方ね。気になるんだけど」

「大したことじゃない。本当に」

「そう……」


 赤石はカオフを閉じた。

 

『赤石君、前櫻井君が来てからお母さんとお父さんの仲がギスギスしてるような気がするんだけど、やっぱり家に男の子を連れてくるのは早かったのかなあ』


 水城からのカオフの内容を見た赤石は、まあそういうことでセンシティブになる家族もあるんじゃないか、と返した。

 実際、櫻井が来ることで水城に何が起こったのかは、何も聞かなかった。そしてその原因は、水城本人も感知しないところにあった。


「もうすぐ夏休みが終わるーーーー!」


 八谷は両手をいっぱいに広げ、再び青になった信号を歩き出した。


「お前何回同じこと言うんだよ」

「何回って、一回目よ」

「……」


 赤石は口を閉じた。


「八谷、今日、何月何日だ?」

「八月二五日だけど」

「そうか」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 赤石は八谷を置いて早足で信号を抜けた。


「でもあんたと二人で話すの久しぶりね!」

「そんなことはない、気のせいだ」

「赤石!」

「なんだ」

「呼んだだけよ!」

「無駄な労力をかけるな」


 赤石はため息をつく。


「あんた本当やる気ないわね。バーベキュー楽しめないわよ」

「そうか」

「そういえば今日って、誰が来るのよ」

「前と同じだ。高梨、那須さん、統貴、鈴奈、ゆかり、三矢、山本、暮石、鳥飼、志藤、上麦、神奈先生、霧島、あ、あと安月も来るらしい」

「ところどころ知らない人がいるわね」

「高梨にしては珍しいな、自分で企画を開くのも、多人数なのも」

「そうね、ちょっと気になるわね」

「そうだな」


 櫻井を失うことに対する何らかの回避行動なのだろうか、と思う。


「今日は楽しみましょうね、赤石!」

「そうだな」


 八谷は楽しそうに、笑った。








「来たわね、二人とも」

「来たわ!」

「ああ」


 高梨の別荘には、既に数人の人が集まっていた。


「おかえり、悠」

「ああ」

「おかえり?」


 須田の問いかけに、八谷が赤石を見る。


「ここに来てからお前を連れてきたんだよ」

「悪いわね!」

「悪いと思ってるならそのポーズ止めろ」


 八谷は両手を腰に当てていた。


「赤石パイセン、良いところあるじゃないっすか~」

「お前ももう来てたのか」


 赤石は八谷を瞥見し、安月を見た。


「こいつは安月、統の後輩。何故ここにいるのか、俺は分からない」

「ち~っす!」


 鶏のように首を下げ、安月は八谷に挨拶をした。八谷も会釈で返す。


「てか赤石パイセン、何故ここにいるのか分からない、とかないっすよ~」

「誰だお前は」

「ひどすぎーーーー!」


 安月は大仰に声を張る。


「会長会長、なんとか言ってくださいよ!」


 安月は高梨の手首をつかみ、連れてくる。


「誰よ、あなた」

「会長までーーー!」


 高梨はふふふ、と笑った。


「高梨、なんでこいつなんだ」

「実はこの子、同じ中学校で元生徒会なのよ」

「知らなかった」


 赤石は恐怖の目で安月を見る。


「道理で統貴と妙に仲が良いわけだ」

「えっへん!」

「気味が悪い」

「どういうことっすか、それは~!」


 安月はしゃがれた声を出し、ドスを利かす。


「お前らうるさい。私、耳痛い」

「あら白波、お冠ね」

「!」


 高梨は怒る上麦の口にマシュマロを詰め込んだ。

 一瞬の瞠目のあと、上麦は落ち着き、微笑み咀嚼をしながら帰った。


「変なやつだな、あいつは」

「パイセンも人のこと言えないっすよ」

「そうか」

「あ~~~~、ディスコミュニケーションーーー!」


 安月は頭をかきむしる。


「皆さま、そんなところで立ち話もなんですから、お座りになってはいかがですか?」


 安月と須田の隙間から、那須が出てくる。


「この人は那須さん。高梨の専属メイド」

「ちょっと違うわよ。今日は迷惑かけて申し訳ないわね、真由美」

「とんでもございません。まさかバーベキューをすることで仕事が一日休みになるとは思いもしませんでした。感謝しています」

「すがすがしいほど嘘をつかない」

「よし、皆座ろうぜ~」


 須田はテーブル席へと向かった。

 赤石たちも須田と那須の後を追い、テーブル席へと向かう。


「な、なんか…………すごいわね」


 八谷は一人一人相手をする赤石の後方で、縮こまっていた。


「何がだ」

「人が多いわ」

「生徒会の人脈はすごいな」

「そうなのかしら」


 八谷は小首をかしげる。


「あんた、友達が増えたのね」

「元々いなかったみたいな口ぶりは止めろ」

「いなかったじゃない、あんた。私が初めて声をかけた時はあんた、ずっと一人だったじゃない」

「いや、あのころから統貴も鈴奈もいた」

「でも高梨さんも那須さんも安月ちゃんも上麦ちゃんも知らなかったでしょ?」

「まあ年が経てば知り合いも増えるだろ」

「頑張ったのね」

「頑張った……のか、俺は?」


 赤石は、よく分からなかった。


「まあお前らもお前らでいろいろ増えて行ってるだろ、知り合いも」

「そうかもしれないわね……」


 赤石はクラスメイト以外の櫻井の人脈は、知らなかった。


「聡助は確かに店員さんとか看護師さんとか他の高校の生徒会長とかバイト仲間の人とか、確かに人脈は増えてるわね」

「あいつバイトしてるのかよ」


 知らなかった。


「悠人~」

「?」


 赤石が振り返ると、そこには船頭がいた。


「今来た産業」

「その会社の株価が心配だな、お前のせいで」


 赤石は軽口で対応する。


「いや、今来た産業っていうのはネットスラングで、実在する会社ではございません」

「そうか」


 赤石は前を向いた。


「え、赤石パイセン、後ろの女誰っすか……?」


 後ろの騒動を聞きつけた安月が振り向いた。


「今来た産業ゆかり、生後二十日だ」

「ちょっと~稚魚じゃ~ん!」


 あはは、と船頭は赤石の肩を叩く。


「なんていうか、ちょっとパリピっぽいっすね」

「お前も似たようなもんだよ」

「私はちゃんと節度節操、質素倹約を守ってますよ!」


 安月はドン、と胸を叩く。


「悠人、誰?」

「明日帰る工業羅菜、統貴の後輩」

「え~……」


 船頭は苦い顔をし、赤石を見た。


「いや、毎回俺の顔色を窺おうとするな。自由に話せ。タガは外すな」

「パイセン上手い!」

「うるさい」


 船頭は赤石の前に立った。


「安月ちゃん、悠人馬鹿にしちゃ駄目だよ?」

 

 船頭は安月に言う。


「いやいや、パイセンはからかうものですよ~。ね、赤石パイセン!」

「船頭越しに同意を求めるな」

「ちょっと悠人、この子図太いんだけど!」


 船頭は赤石の横へと戻る。


「同族嫌悪だな」

「「おい!」」


 船頭と安月は、同時に言う。


「仲間割れをするな、二人とも。早く統貴の下へ行け」

「言われなくても行くっすよ~」

「後ろの皆、遅い」


 上麦は怒っていた。


「了解っす!」

「今行く産業!」


 赤石はゆっくりと歩いた。


「どうした八谷」

「圧倒されてるのよ」

「口挟めよ、得意の毒舌で」

「別に得意じゃないわよ」

「行くか」


 赤石と八谷も、向かった。




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