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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第4章 夏休み 前編
169/593

第151話 櫻井の誕生日会はお好きですか? 1


 朝。


「はいはいはーい」


 インターホンの鳴る音に気が付いた櫻井は玄関へと向かい、ドアを開けた。

 途端、


「聡助、お誕生日おめでとう~!」


 玄関口で、クラッカーが鳴らされる。


「え、えぇ!? 由紀!?」

「「「おめでと~!」」」

「お前らまで!?」


 新井の後ろから顔を出した水城たちに、櫻井は驚いた顔を隠せない。


「お、お前らどうしたんだよ一体!?」

「嫌だなあ、聡助……まったく、突然押しかけたのにこの反応だよ」


 やれやれ、と言わんばかりに、霧島が言った。


「今日は聡助の誕生日じゃないか! だから僕が聡助にバレないようにこっそり、皆と誕生日会をする算段を立てていたのさ!」

「尚斗、お前ええぇぇ!」


 櫻井は霧島を捕まえ、小突く。


「お誕生日おめでと、櫻井君」

「お、おう……ありがとな、水城」


 ふふ、と楽しげに笑う水城に、櫻井も頬を染める。


「おいおい聡助~。こんな美女の大所帯に囲まれて、お前は本当に羨ましい奴だなあ!」

「う、うるせぇよ!」

「まあまあ皆、こんな所で話してるのもなんだし、部屋に入るかい?」

「なんでお前が言うんだよ!」


 先んじて櫻井の家へと霧島が入って行く。


「お邪魔しま~す」

「お邪魔します」

「お邪魔します……」

「お邪魔し、ます」


 新井、八谷、水城、葉月の四人も霧島に連れられる形で櫻井の家へと入って行った。


「わ、悪ぃお前ら! まさかこんな風に誕生日祝われるとか思ってなかったから」


 大急ぎで家の中を掃除する櫻井を尻目に、霧島たちは机を囲む形で座った。


「おにぃ、何これ!?」

「お、菜摘ちゃんじゃないかあ」

「あ、菜摘ちゃんおは~」

「おはよう、菜摘ちゃん」


 眼前の光景に愕然とする菜摘に、霧島たちは笑顔で手を振る。


「ちょっとおにぃコレ何!?」


 菜摘は霧島たちを指さし、腕をぶんぶんと振る。


「いや、水城たちが突然やって来てさ――」

「今日はおにぃの誕生日じゃん! 誕生日くらい菜摘と二人で過ごすって言ったのに、すぐおにぃは約束破る!」


 もお! と、頬を膨らませながら、ぽかぽかと櫻井を叩く。


「悪い悪い菜摘、だって突然やって来るとか思わなかったし、それに来てくれたのに帰すわけには行かねぇだろ?」

「そんなこと言ってまたこいつらを置いとくんでしょ! 去年もそうだったじゃん!」

「ちょっとちょっと、こいつら呼ばわりは止めてよ、菜摘ちゃ~ん」


 霧島は立ち上がり、菜摘を制した。


「おにぃの馬鹿! おたんこなす! 馬鹿! 人でなし! のろけばなし! すけこまし!」

「なんでだよ!」


 霧島に押さえられた菜摘は不承不承と言ったかたちで、着席した。


「改めまして皆、聡助を祝おうかい!」

「「「聡助、お誕生日おめでと~!」」」


 わあ、と皆で一斉にクラッカーを鳴らし、櫻井はいやあ、なんか悪いなあ、と頭をかく。


「今日は聡助が主役だからなんでも言うことを聞く、と由紀ちゃんは言っているよ」

「なんで私だし! 突然話振ってくんなし!」

 

 新井の憤懣を受けつつも、あははは、と霧島は受け流す。


「ま、まあ聡助の言うことなら別に聞いてあげても良いけど……」

「ん、なんか言ったか、由紀?」

「別に言ってないし! 早く皆も荷物おろす!」


 櫻井を大喝した新井は、隣の水城の荷物をまずははぎ取った。


「ちょ、ちょっと由紀ちゃん、あ、ま、待ってって、自分でおろすから!」

「駄目だし! しおりっちはこしょこしょの刑!」

「な、なんで、あ、あははははは! 止めて、ごめん止めて! あはははは、ちょっと! くすぐったいって! あはははは!」

「ここがええんか? ここがええんか?」

「あははははははは!」


 霧島と櫻井は、涙を流しながら笑う水城を見る。


「聡助、これはこれでなんだか背徳的な気分に……ぎゃあ!」

「霧島は見んなし!」


 新井につねられた霧島は、これはこれでいいかも……と呟いた。

 

「ちょ、ちょっと~! 皆だけずるいよ~!」

「お、と、冬華!?」


 新井たちの輪に入れなかった葉月は、櫻井と机の間を通るようにして、割って入る。


「ちょ、と、冬華そこは駄目だって! 狭いし! 別に無理して入らなくてもいいだろ!」

「だ、だって皆楽しそうだもん……!」


 しゅん、とうなだれる冬華の頭を、まあそう落ち込むなよ、と櫻井は撫でる。


「じゃあお昼時だし皆、持ち寄ったご飯を出してくれないかい?」

「あ、はーい!」

「私も出すわ」


 パン、と手を叩いた霧島に言われ、八谷は鞄から大きな弁当箱を三つ出した。


「おぉ、恭子ちゃん、これはまた随分と豪華で大きいお弁当箱を出したもんだねえ。さてさてお味は……」

「ちょっと! 聡助が食べてないのに先に食べようとしないでよ!」


 八谷はつまみ食いをしようとした霧島の手を叩いた。


「うぅ……おにぃに寄ってたかる女がいっぱい……」


 菜摘は互いに櫻井を狙う取り巻きたちに、敵愾心を抱く。


「ほ、ほら菜摘ちゃん、菜摘ちゃんも食べてね」

「うるさい! おにぃに寄ってたかる女は信用できない!」

「えぇ~……」


 菜摘を手なずけようとした八谷は牙をむかれる。


「まあまあ菜摘、そんなに怒らなくても」

「おにぃは警戒心がないからダメなの! こんなの狼なんだから! みんな狼!」

「あ、あははは……」


 がるるる、と喉を鳴らす菜摘に苦笑いしながら、水城もお弁当箱を出した。新井、葉月も後を追う形でそれぞれ手料理を出す。


「僕はこれで」


 唯一、霧島だけが出来合いのお弁当を出した。


「あんたこれお店で売ってるやつじゃない」

「まあまあ、プロの腕が一番信用出来るじゃないか。ねえ、恭子ちゃん」

「なんで私の名前出したのよ!」


 八谷の睨みも黙殺し、霧島は聡助の肩を叩いた。


「聡助、お前は……」


 目頭を拭い、


「お前はうらやましい奴だなあ!」

「なんで泣いてんだよ……」

「僕以外皆手料理じゃないか!」


 櫻井をひがんだ。


 それぞれ取り巻きが手料理を出す間に、菜摘が渋々飲み物を出し、場に料理と飲み物が揃った。


「やあやあ菜摘ちゃん、気がきくね」

「早く帰って欲しいから」

「またまた菜摘ちゃんは、ツンデレだねぇ」

「お前は死ね!」

「あははははは、今日も菜摘ちゃんは厳しいなあ」


 からからと笑い、霧島は立ち上がった。


「じゃあこれで大体準備は整ったかな? これから聡助の誕生日を始めます! それでは皆、お手を拝借!」


 霧島に視線が注がれる。


「では聡助の誕生日を祝いまして! かんぱーーい!」

「「「かんぱーーい!」」」


 櫻井の誕生日会が、始まった。



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