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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第4章 夏休み 前編
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第146話 夏休み初日はお好きですか? 



「暑い……」

 

 菜摘が自宅で、そう呟いた。


「おにぃ暑いおにぃ暑いおにぃ暑いおにぃ暑いーーーーー!」

「うるせーーーーー!」


 料理をする櫻井は菜摘を叱った。


「もーーーー、夏休み始まったのにおにぃ全然遊んでくれないじゃーん!」

「うっせぇよ菜摘。今日は由紀が来るから遊べねぇの」

「は?」


 一瞬で瞳からハイライトが消えた菜摘が、櫻井を見た。


「由紀? あの由紀姉のこと?」

「こらこら、由紀を悪く言うなよ」

「幼馴染のあの新井姉様のことですか?」

「怖いっつの。そうだよ、今日は由紀と遊ぶ約束なんだよ」

「夏休み一日目から遊ぶ約束ですか?」

「いや、そうだって」


 菜摘はふらふらと櫻井に寄る。


「やだやだやだやだやーーー! 私がおにぃと遊ぶもん!」

「わがまま言うな菜摘―!」


 菜摘はぽかぽかと櫻井を叩く。


「おかしいもんそんなの! お母さんもお父さんも全然帰ってこないんだからおにぃが私構ってくれたっていいじゃん!」 

「明日! 明日構うから!」

「やーーーだーーー!」


 地面に寝そべり、菜摘はやだやだとごねる。


「はぁ……じゃあ一緒に遊ぶか?」

「え、いいの!?」


 ごねた甲斐あってか、菜摘も櫻井と遊ぶことになった。




「えーっと……」


 新井は櫻井と菜摘を前にして、固まっていた。


「これはどういう状況だし? 聡助」


 櫻井の腕を取り睨みつける菜摘に苦笑いを送る。


「いやぁ、どうしてもっていうから仕方なく……。まあ座ってくれよ」

「まあ座るけど。今日は勉強する約束でしょ?」

「えぇーー! 遊びじゃないの!」


 菜摘は落胆した顔をした。


「菜摘ちゃん、私ら受験生だし。そろそろ勉強しないとヤバい感じ?」

「アホそうな顔してますもんね、由紀姉」

「わーーー! こら菜摘! 失礼なことを言うな!」


 櫻井は必死でその場を取り繕った。


「じゃあいいもん。私監視役するから二人はそこで勉強してて」

「え……え~……」


 櫻井と新井は隣同士で勉強を開始した。


 ピーーーー!


 菜摘が笛を吹いた。


「ちょっとそこ、不必要にくっつくすぎ。勉強するのにくっつく必要はないよね?」

「あ、あははは」


 新井は少し櫻井と距離を開けた。

 菜摘は鬼の形相で二人を監督する。


「ちょっと目を離したら二人はすぐにいちゃいちゃするからね。菜摘がちゃんと監督責任を果たさないと」

「いや、しねぇよ!」


 そんなことあるか、と櫻井は突っ込んだ。櫻井家ではいつもの日常が、繰り返されていた。





「夏休み初日―――――――――――――――! いえええぇぇぇぇぇ!」


 赤石家の中で、須田が暴れまわっていた。


「止めろ止めろ! 壊れる! マジで壊れる! あばら家を壊す気か!」


 赤石は須田を制止する。


「夏休み初日―――――! いええええぇぇぇぇぇぇ!」


 次に、三千路が暴れまわった。


「止めろ! あばら家が壊れる!」


 赤石は三千路を制止した。


「誰がデブよ」

「言ってねぇよ」


 途端に三千路が真顔になる。


「はい、ということで今日集まって貰ったのはほかでもありません。夏祭りの予定を決めようということです」

「いええぇぇーーー!」

「俺はまだ行くとは言ってないぞ」


 須田と三千路は赤石をよそに盛り上がる。


「で、当日のスケジュールを決めようじゃありませんか、とそういう話をしに来たんだよな、悠?」

「いや、それはそうだけど」

「いええぇぇーーー!」

「というかお前ら部活は?」


 須田と三千路を見た。


「「休み」」

「まあ、だよな」


 須田と三千路は声を合わせた。


「で、夏休みこの三人で夏祭りのみならず長期的なスケジュールも決めようと思っているのです」

「なるほど」


 三千路が須田を称える。


「我々受験生ですので、そろそろ勉強に勤しまないといけないと、そういう心づもりです」

「なるほど」


 赤石は頷いた。


「取り敢えず私らって志望してる大学同じ?」

「俺は北秀院」

「俺も」

「じゃあ私も」

「じゃあってなんだよ、じゃあって」


 赤石は呆れた顔で三千路を見る。


「おいおい、自分の進路はもうちょっとちゃんと考えた方が良いぞ」

「いや、考えたうえでよ」


 三千路は断言する。


「大学進学かぁ~、俺らも大人びて来たなぁ」

「そうだなあ」


 赤石と須田はまだ見ぬ大学進学に夢を膨らませる。


「ちょっとあんたら起きなさいて」


 ぱしぱし、と三千路は二人を叩く。


「本当に私ら受験生だから、勉強のこと考えないといけないわよ」

「そうだなぁ~」


 赤石は須田の持って来たスケジュール表に勉強、と書きだした。


「じゃあお前らが部活の日以外は毎日勉強いれとこう。それに俺ら志望大学が同じなら協力して情報集めた方が多分いい結果出るだろ」

「受験は団体戦よ!」

「講師か」


 足を広げ三千路は立ち上がる。


「まあ三人寄ればなんとやら、よ。私たち三人で頑張って気長にやっていきましょ」

「……そうだな」


 赤石たちは三人で大学に行くことを決意した。





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