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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第4章 夏休み 前編
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第138話 モテる秘訣はお好きですか? 1



「おい尚斗、体育倉庫閉めたのお前だろ~?」

「あ、バレてた?」


 放課後、櫻井は霧島の下へとやって来ていた。


「あんなことすんのお前くらいしかいねぇよ」

「いやぁ、聡助と水城ちゃんが二人きりだったからこれは閉じ込めてやらないといけない! と思ってねぇ~」

「ったく、一時はどうなることかと思ったぞ」

「あははは、愉快愉快」

「愉快じゃねぇよ!」


 霧島はあはは、と笑っていた。


 


 放課後の掃除を終えた赤石は一人、学生鞄を背負って廊下を歩いていた。掃除用具入れに掃除道具を入れ忘れたため、掃除場所に再度戻って来ていた。


 掃除道具を入れると赤石は階段を下りた。


「赤石ぃ!」

「……?」


 上方から声がかけられた赤石は上を見る。


「はぁ……あんたやっと見つけたわよ、赤石」


 息を切らし、肩を上下させる八谷がいた。手すりを両手で持ち、獰猛な顔をする八谷はやはり野生児というのにふさわしい、と漫然と赤石は考える。


「赤石、ちょっと屋上行かない?」

「なんで?」

「いや、なんでってなんとなくだけど……」


 八谷はくい、と親指で屋上を指す。


「まあ別にいいけど」

「感心ね」


 八谷は足を大股に開き、腕を組んだ。


「門番かよ」

「門番よ」


 赤石は半眼で八谷を見る。


「あ」


 八谷は足を閉じた。


「あんた何スカートの中見ようとしてんのよ! ぶっ殺すわよ!」

「じゃあ足開くなよ」


 八谷は階段を上る赤石を待った。


「でも屋上なんて開いてんのか? 普通高校の屋上なんて開いてないもんじゃないのか?」

「何言ってんのよ赤石、開いてるわよ」

「いや、危ないし開いてない高校の方がはるかに多いぞ。屋上で昼飯なんておおよそありえないフィクションに近い」

「いやいや、あんた屋上に何の恨みがあるのよ」

 

 やれやれ、と首を振りながら八谷たちは屋上に来た。


「ふぅ……これで新鮮な空気が吸えるわね」

「漂うディストピア感」


 八谷はドアノブに手をかけた。が――


「あ、あれ?」

「早く開けてくれよ」

「あれれ?」


 がちゃがちゃとドアノブを回すも、扉は開かなかった。


「おかしいわね、どうしてかしら」

「だから言っただろ、屋上が開いてるなんてフィクションだ、って」

「いや、違うわよ。前までは開いてたのよ。ここでよくそ……会議とかしてたのよ」

「お前の気のせいだろ。夢でも見てたんじゃないのか」

「ち、違うわよ馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」

「馬鹿馬鹿言ってる方が馬鹿に見えるぞ馬鹿」

「はぁ!?」


 赤石は元来た道を引き返した。


「ちょっと赤石待ちなさいよ!」

「屋上が開かないならもうどうしようもないだろ。帰ってパチンコでも行くわ」

「未成年よ!」


 八谷は赤石を追いかけた。


 下駄箱に着いた赤石と八谷は靴を履き替えた。


「お前今日部活は?」

「部活はないわよ」

「部活ないこと多くないか?」

「最近神奈先生があまりやる気出さないのよ。だから無し!」

「あぁ、そう」


 神奈先生か、と赤石は漫然と思う。今頃どうしてんだろうな、と思いながら外に出た。


「赤石赤石!」

「何」


 赤石の隣に八谷が来る。


「カラオケ行かない?」

「いつ?」

「今から」

「嫌だ」


 即断した。


「なんでよ」

「カラオケは嫌いだ」

「なんでよ」

「歌に興味がない。というか音楽に興味がない」

「あんたそれ人生の半分損してるわよ」

「俺は今の人生でもお前より楽しいと思ってるから、ならお前の人生の楽しさは俺の半分以下だな」

「はああぁぁ!?」


 八谷はぼかぼかと赤石の肩を叩く。


「あんた本当性格悪いわね。友達いないでしょ」

「お前よりはいるよ」

「きも」

「お前もな」

「……」

「……」


 二人は互いににらみ合う。


「わ!」


 八谷の隣を車が通った。


「びっくりした……あんたちょっとは車道側通るとか気を利かせなさいよ」

「いや、一列になれよじゃあ」

「違うわよ。全く……」


 はぁ、と大仰に八谷は首を振る。


「あんた本当女の子のこと分かってないわね。だからモテないのよ。違う?」

「? どういう意味だよ」

「紳士っていうのはね、こういう時に何も言わずに、自分が車道側になるようにするのよ。だからあんたは気が利かないって言ってるのよ」

「じゃあお前もそういう奴が好きになるのか?」

「そりゃそうよ」

「はあ」


 そういうものなのか、と八谷を見る。憮然とした表情で考え込む。


「ちょっと、何か言いなさいよ。恥ずかしいじゃない私が」

「……」


 霧島が言っていた、接する女の数が増えれば増えるほどモテる、という話を思い出していた。

モテるには紳士的な対応も必要なのか? と思う。


「赤石ー、起きなさい!」


 八谷が耳元で赤石を呼ぶ。

 赤石は無言で八谷を見た。そっと、車道側に変わってみる。


「それでいいのよ」

「……」


 そして一歩下がり、八谷の後ろについた。


「それは違うでしょ!」


 八谷は後ろを振り向いた。


「いや、一列の方が安全度は上がったんじゃないか? 二列だと俺が車に巻き込まれた時お前も衝撃で巻き込まれる可能性があるかもしれないだろ」

「いや、全然違うわよ。実際に事故に巻き込まれる確率を考慮してたわけじゃないわよ。事故なんて歩道歩いてる限りそんなに遭わないわよ」

「じゃあどっちが車道でもほとんど関係ねぇじゃねぇか」

「はぁ……あのね」


 八谷は立ち止まり、講釈を始めた。


「女の子は守られてる感が欲しいのよ。一列になる、とかそんなの解決方法であって恋愛の方法ではないでしょ」

「合理的じゃないだろ」

「合理性なんていらないのよ、恋愛は。もうちょっと人の気持ち察したら? 嫌われるわよ」

「考える」


 当人を考えた解決方法が必ずしもモテるということに関わっていない。そういうことか、と赤石は納得した。




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