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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第4章 夏休み 前編
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第127話 日常はお好きですか? 2



「櫻井君って、人のことよく見てるよね」

「え、そ、そうか……?」


 少し照れた表情で、櫻井は頭をかいた。


「うん、本当によく見てるよ」

「そうなのかなぁ……」


 櫻井は遠くに目をやりながら、空を見た。


「……櫻井君、やっぱり優しいね」

「ま、水城みたいに困ってる人がいたら放っとけねぇだろ」


 にかっ、と櫻井は水城に笑いかけた。水城は目をうるませ、愛しいものを見るような目で櫻井を見ると、頬を緩ませた。


「あはははは、櫻井君、それ誰にでも出来るようなことじゃないんだよ?」

「え、そ、そうか? そんなことねぇだろ」


 心底不思議そうな顔で櫻井は水城に視線をやる。


「そんなに優しいから、櫻井君はモテるのかな……?」


 水城はそっと足を寄せ、足に顔をうずくめるようにして、はかなげに言った。横目で櫻井を見る。


「え、お、俺がモテてる!?」


 水城の言葉を聞いた櫻井は上体を仰け反らせ、素っ頓狂な声を出した。


「も、モテてるよ櫻井君は!」

「俺がモテてるわけねぇだろ! 俺なんか全然モテねぇよ!」


 櫻井は顔をぶんぶんと振り、否定する。


「櫻井君はモテてるもん……!」

「モテてねぇって!」


 水城は頬を膨らませ、いじいじと土を指でいじる。


「少なくても、一人は櫻井君を好きな人知ってるんだから……」

「え、えぇ!? 嘘だろ!?」


 水城は艶っぽい顔で、頬を赤らめ櫻井を見る。


「櫻井君みたいに優しい人そんなにいないんだから」

「そう……なのかぁ」


 水城と櫻井は互いに視線を交錯させる。


「だ、誰なんだよ俺を好きな一人って…………」

「……」


 どくどくと、互いの心音が聞こえそうなほどに距離を詰める。緊張した面持ちで、仄暗い場所で顔を近づける。


「そ」


 水城は口を開き、


「それは言えません!」

「え、えぇ!?」


 手でバツを作った。


「櫻井君を好きな人はいるけど言えません!」

「な、なんだよ!」


 水城は嬉しそうな顔でえへへ、と笑った。


「じゃあ私もうそろそろ行くね」

「え、水城。何か悩みがあったんじゃなかったのか?」


 立ち上がった水城を心配そうな表情で見る。


「うんう、もうなくなっちゃった」


 そう言うと水城は翻し、歩いて行った。


「な、なくなったのかよ……」


 一人取り残された櫻井はその場で小さく呟いた。





 

 放課後――


「聡助、今日一緒に買い物行こうよー!」

「突然なんだよ、由紀」


 放送部もそこそこに、櫻井は新井と二人で帰宅していた。


「ほら、私買い物したいからついてくること決定!」

「勝手に決めるなよ!」


 笑い顔で櫻井は新井を叱る。


「それにぃ~今日は私と聡助だけだしぃ~」


 すりすりと新井は櫻井に身体を押し付ける。


「お、おま、だから人が見てる前で止めろって由紀!」

「じゃあ人が見てる前じゃなかったらいいわけじゃん?」

「そんなことは言ってねぇだろ!」


 櫻井は新井をそっと横にどける。


「そんなこと言っても聡助は私を乱暴に扱ったりはしないよね……」


 ぼそ、と新井は俯きながら、言った。


「ん、何か言ったか?」

「別になんでもないし! 早く買い物行こうよ!」

「お前、引っ張るなって」


 櫻井は呆れた表情で笑いながら、新井に引っ張られるがままに買い物について行った。





「わぁ~、見てこれ聡助聡助!」


 近隣の大型ショッピングモールに着いた新井と櫻井は、大型の洋服店に入った。新井が服を見回しながら、きらきらとして目で感想を呟く。


 新井は数点の服を持って、櫻井を見た。


「聡助、私今から試着するけどいい?」

「おぉ、行って来いよ」

「私が試着してる間にどっか行っちゃったりしない?」

「しないしない、するわけねぇだろ」


 あはは、と笑いながら櫻井は新井の頭を撫でる。


「じゃあ試着してくるね!」

「おぉ、行ってこい」


 新井は試着室へと向かった。


「これどう、聡助!?」

「おぉ、可愛いな」


 フリルのついた短いワンピースを着た新井はくるくるとその場で回った。


「えへへ、可愛いんだ」


 櫻井に貰った『可愛い』という言葉に反応し、顔がにやける。


「なんつーか、普段のお前と違ってちょっと女っぽいし可愛い……よな」

「えぇ~、何~?」


 櫻井の言葉を耳ざとく聞きつけた新井は櫻井に近寄った。


「えぇ~聡助、もう一回言ってぇ?」

「いや、だから女らしいな、って……」

「そ・の・あ・と」

「だから可愛いって……」


 ぼそ、と櫻井は顔をそむけて呟いた。


「あぁ~、可愛いんだぁ~、聡助も私のこと可愛いと思ってるんだ~、へぇ~、やらし~!」

「何がやらしいんだよ!」


 櫻井を茶化した新井はにひひひ、と笑う。


「じゃあ他のも試着してくるね」

「おぉ、行ってこい」


 新井はまた、試着室へと向かった。


 それからも新井は様々な服を試着しては櫻井に見せつけ、可愛いと言われるたびに頬を緩めた。

 新井と櫻井は二人で和気あいあいと時間を過ごしていた。




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