エピローグ
7/22(日)霧島の取り巻きへの呼び方を変えました。
「文化祭終了お疲れーーーーーー!」
二組全員が集まる中、霧島がクラスの中央に立ち、音頭を取った。
「お疲れーーーー!」
「お疲れっ!」
「疲れたわね~」
「疲れた~」
「お疲れーーーーーー!」
霧島に従い、二組の生徒たちがジュースを片手に乾杯する。
「お疲れやな、赤石」
「ああ、大変だったな」
「大変だったでござるなあ」
三矢と赤石たちも乾杯し、教室の隅で細々と話し合っていた。
「いやあ、赤石殿のおかげで映画は大盛況……ではあったでござるな」
「まあ大盛況ではあったかもな。評価は別にして」
二組の映画には数多くの来客が、あった。
映画の新規性もあり、生徒には人気がなかったものの、部外者は怖いもの見たさに、多数やってきた。
「いやぁ、これでひとまず文化祭も終わり、もうすぐ夏休みやな! めっちゃ遊ぶで!」
「いや、勉強しろよ」
夏休みを待ちわびる三矢に苦笑を向ける。
赤石は文化祭に積極的に関わったことを無駄な時間と捉えつつも、今まで味わったことのない達成感や一体感を感じた。
存外充実した時間を過ごしたな、と感慨深く思う。
「まあ、たまにはこういうのもいいかもな」
「せやな!」
「そうでござるな~」
赤石たちは薄く笑いながら、文化祭の出来事を話し合っていた。
「さぁ~、どーこーにーしーよーうーかな」
帰宅した霧島は自室で、文化祭の打ち上げ場所を選んでいた。
「まあ、適当でいいかな」
これだ、と適当に指さした場所に連絡を取る。
「もしもし、まだ人数は決まってないですけど大勢で押しかけたら安くして貰えませんかね? え、駄目? またまたぁ~、じゃあ安くしてくれるところにしてみようと思います。え、店長を呼んでくるって? いやぁ~、さすが話が分かるお人だなぁ~」
薄ら笑いを浮かべながら、霧島は店員との掛け合いを楽しんだ。
「はぁ~、面白かった」
値引きの約束を取り付けた霧島はスマホを置いた。
「いやぁ、皆来てくれるものかね」
霧島は櫻井の取り巻き達の写真を前に、沈思黙考した後、
「八宵ちゃん、志緒ちゃん、恭子ちゃん、葉月ちゃん、由紀ちゃん……あ、あと神奈先生も外せないなぁ~」
にやにやと笑いながら、それぞれの写真を見つめる。
「いやぁ、本当良い時代に生まれたもんだなぁ」
櫻井とその取り巻き達の写真を手で弄びながら、退屈な顔をしていた。
「赤石君とも是非接触してみたいものだね」
新たに赤石の写真を手に取り、光に透かしながらきこきこと椅子をきしませていた。
櫻井は帰宅し、疲れ気味に鞄を置いた。
「あれ、お兄ちゃん今日は遅かったね」
「いやぁ、今日は文化祭のプチ打ち上げがあってなぁ~。菜摘は今日何かあったか?」
「いや、何もないよ! お兄ちゃんじゃあるまいし!」
ぷんぷん、と頬を膨らましながら、兄の顔を見る。
「はあ~ぁ、どうせお兄ちゃんは志緒姉ちゃんとか由紀姉とかと遊んできたんでしょ?」
「まあ、幼馴染だしな~」
「ほら、やっぱり!」
ばしばし、と兄の肩を叩く。
「全く……こんな可愛い妹を放って遊び惚けて……お兄ちゃんにはがっかりだよ、全く」
「悪かったな、こんなお兄ちゃんで!」
いたずらな笑みを浮かべながら、妹の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょ、お兄ちゃん止めてって! 折角ヘアスタイル整えてたのに!」
「家の中でヘアスタイルなんて整えてても意味ねえだろ~」
あははは、と笑いながら櫻井は妹の髪をいじり続けた。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん今日志緒姉ちゃんと由紀姉以外にもいっぱい遊んだね?」
「え、ま、まあ八谷とか葉月とかと遊んだけど……なんで分かったんだよ?」
「お兄ちゃんから他の女の匂いがするの! もう、お兄ちゃんの変態! 女たらし! すけこまし!」
そう言うと、妹は階上に上がった。
「ちょ、ちょっと待てよ菜摘! 今日も勉強教えなくていいのかー!?」
「今日は自分でやるもん!」
「全く……」
はは、と兄は笑いながら妹の背中を見送った。
「全く、可愛いやつだなあ」
櫻井は妹を見送ると、『ツウィーク』を開き、文化祭の投稿を始めた。




