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ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第3章 文化祭 後編
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第107話 文化祭はお好きですか? 1



 文化祭当日。


「よっしゃああぁぁぁぁーーーーー! ぶ・ん・か・さ・い!」

「朝からうるさいな、お前は」


 赤石と須田は共に電車で通学し、通学路を歩いていた。文化祭という学校行事の折、須田は赤石と共に電車通学をすることを決めていた。

 須田はお化け屋敷の準備のため通常より一時間早くに登校し、赤石はすべきことが特にある訳でもなかったが、須田に乗じる形で共に通学する。


「悠、俺最近面白いこと思いついた」


 須田は赤石を横目に、両手を挙げた。


「やってみるといい」

「オッケー」


 須田は両手の人差し指を立て、指人形の体をとった。


『俺さぁ、持ち手がついてるから扇ぎやすいんだよね~』

『分かる~、俺の持ち手かなりしっかりしてるから俺も扇ぎやすいんだよね~』


 須田は一人二役で芝居をこなす。赤石は無言で話を聞く。


『やっぱ持ち手が適当だと扇いだ時に折れちゃうよなぁ~』

『『分かる~』』


 左手の中指も突如として挙がった。


「突然登場人物……? が増えた」

「まぁ見てなって」


 須田はまた芝居を始めた。


『でも持ち手がないうちわもあるよな~』

『あるある~、あれはあれで折れる心配とかないしいいかもな~』

『え~、俺は持ち手ある方がいいわ~。なんかあれ扇ぎにくくない?』

『でも持ち手あると鞄に入れられるとき超大変っしょ?』

『『確かに~』』

『じゃあさじゃあさ、折りたたみ持ち手とかどうよ?』

『いや、さすがにそこまで高機能なうちわないっしょ?』

『それこそ、持ち手のないうちわはニュータイプうちわなのかもな!』

『超ウケる~』


「……」


 須田は赤石を見た。


「何それ」

「うちわの内輪ノリ」

「ちょっと面白い」


 赤石は少し笑った。


「じゃあこれはどうよ、悠」

「やってくれ」

「はいどうも~、今日は話題の温泉にやってきました~」


 ぱちぱちと手を叩きながら、須田がレポーターの役を演じる。


『オクラさん、どうですか温泉?』

『いや~、最高だねぇ。とくにここの効能っていうのかな。なんかすごい体に効いてる気がするよ~』


 例によって須田が一人二役をする。


『ははは、じゃあ僕はこれくらいであがろうかね』

『以上、オクラさんの温泉巡り……ってっきゃーーーーー! オクラさん、タオルが、タオルが!』

『のわあああああああーーーー!』


「……」

「……」

 

 赤石は須田を見た。


「オクラのテレビがお蔵入り、とかか?」

「正解!」

「ちょっと面白い」

「いえーーい!」


 須田は赤石とハイタッチをした。


「じゃあこれはよ、これは」

「やってみろ」


 須田は目を閉じ、演じ始めた。


『今日は風流じゃ』

『わさびさん、食べ物なのになかなか趣深いですね~』


「……」

 

 須田は赤石を見た。


「え、終わり?」

「え、終わりだけど」

「何それ」

「わさびのわびさび」

「わさびのわびさびは違うだろ」


 赤石は一蹴した。


「うわぁ~、やっちまったわ。カッパの川流れだわ」

「流れたのはカッパじゃなくて統のえせ面白話だけどな」

「お、上手い!」

「上手くないわ」


 ははは、と互いに笑う。


「因みに今日は雨降る確率何パーセントか分かるか、悠?」

「え、さあ。曇ってるし一〇パーセントくらいじゃないのか。文化祭一日目に曇りっていうのも中々嫌な感じだな」

「いやいや、全然違うわぁ」

「なんだよ」

 

 やれやれ、と須田は首を振った。


「空に雲が七割以上ある時に雨が降る確率は七〇パーセントである」

「何情報?」

「須田お天気お兄さんより」

「お前かよ」


 赤石は空を見た。


「でもちょっと確かに言われてみれば降ってきそうな気がしてきたわ」

「だろ?」

「曇りの日はあまり空が綺麗じゃないよな」

「出たーーー、赤石節!」

「何がだよ」

「悠ってなんかあんまりそういうの興味なさそうで興味あるよな。空よく見てるし。ポエミー……?」

「いやいや、ポエミーではないだろ。でも不思議と空見る癖はあるな。空を見るとストレスがいくらか解消されるらしいぞ」

「そうかぁ~?」


 須田は空を見た。


「……」

「……」


 赤石と須田は立ち止まる。


「首が痛いな……」

「俺もだ」


 互いに空を見ることを中止した。


「そういえば悠、すうって今日来るんだっけ?」

「いや、今日は高校の関係者だけの内輪の文化祭だろ。演劇とか合唱とか」

「あ~、一般向けの文化祭は明日だっけ?」

「だな。すうが来るなら明日かな」

「お化け屋敷連れて行かないとな」

「でもあいつ全然お化け屋敷とか怖がらないよな」

「分かるわ~」


 あはは、と須田は笑った。


「なんつーか、可愛げがないよな」

「おっさんぽい」

「いや、怒られるだろあはははははは」


 互いに呵々大笑した。


「あ、そういえば俺最近思ったことあんだけどさ」

「お前は本当コロコロ話を変えるな。どこからそんなにどうでもいい話題が出てきてるんだ」

「いや、感受性が豊かなんだよ、俺は。悠に話そうと思って温めてた話題が沢山あるってことだよ」

「温めるな温めるな」


 赤石は軽く手を振る。


「で、さ。食堂ってライスあるじゃん?」

「あるな」

「で、ライスってMとかLとかあるじゃん」

「そうだな。服のサイズみたいなもんだな。お前はいつもL食べてるな」

「まあ水泳部だしな。あれMサイズとかLサイズとか頼むときは何も思わねぇんだけどさ、SサイズとかSSサイズとか頼むときってなんかレアリティみたいになるよな?」

「……?」

「いや、SサイズとかSSサイズとかあるんだったらこれSRとかSSSとかURとかあるんじゃねぇの、って思わない?」

「あぁ、なるほど」


 赤石は頷いた。


「そんなゲームじゃあるまいし……」

「いや、絶対皆思ってるわ。すいませんおばちゃん、ライスURで! とか言ったら金ぴかのライスが出てくるに違いないわ」

「いや、出てくるか!」

「食堂でおばちゃんにライスURを頼んでみた」

「動画配信者か」

「おばちゃん、ライスURで! おやおや、私が出せるのはSSまでじゃよ? 何だと……!?」

「須田ワールドが攻めてくる」


 わなわなと震える須田を、呆れた顔で赤石は見た。


「でさ、他にも俺思ったんだけど、ライスSとかMとかLってややこしいよな」

「何が」

「いや、だって全部最初の文字『え』じゃん。エス、エム、エル、って高確率で聞き間違えるし、俺おばちゃんに『エム? エル?』ってよく聞かれるし」

「あぁ~、なるほど」


 首肯した。


「いやさ、なんで全部二文字でしかも『え』から始まるような言葉にしたんだろうな、とよく思うわ。でっかいの、ふつうの、ちっちゃいの、だったら文字数も違うし発音も被ってないから分かりやすいと思うんだけどなぁ」

「ダサいからじゃないのか」

「えぇ、嘘だろ」


 でっかいの、ちっちゃいの、と須田は復唱する。


「じゃあこの世の大体はダサいかどうかで決まってるってことなのか……!?」


 須田は膝を打つ。


「メートルとかフィートとか平米とかいろんな単位があるのはダサいから?」

「そうだな」

「あれはなんかダサいから違う単位も作ってみよう、ってことか!?」

「そうだな」

「ピザとピッツァっの違いも!?」

「あれは窯で作ってるか否かみたいな違いだった気がするな」

「ラムネとサイダーの違いは?」

「あれは入れ物の違いとかだったんじゃ」

「全然ダサいとか関係ねぇじゃん!」

「冗談だ、冗談。赤石ジョークだ」

「出た、赤石節!」


 赤石と須田は雑談に興じながら学校へと入った。



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