表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコメの主人公はお好きですか?  作者: 利苗 誓
第3章 文化祭 後編
110/593

第101話 花送りはお好きですか? 3




「わぁ~、出来たぁ~」


 高梨は赤石の手ほどきもあり、シロツメクサの冠を作り終えた。


「見てみて夏木、どうかな?」


 シロツメクサの冠を両手で持ちながら、上体を右に左に捩る。


「ま、まあいいんじゃないか」


(控えめにいっても超かわいい)


 赤石は横目で高梨を見ながら、そう言った。


「へっへーん! 洋一、見てよこれ!」


 高梨は上体を屈め、三矢に言った。


「そんなの俺は作れねぇわ」

「ふっふーん! 夏木に感謝してよね!」

「あ、あはは」


 赤石は高梨の顔を見て、心底陶酔した。


「じゃあさ、じゃあさ、シロツメクサの指輪作らない?」

「シロツメクサの指輪ぁ?」


 三矢が起き上がり、高梨の顔を見た。


「そそ、指輪指輪。冠を作るのは難しいけど、指輪くらいなら洋一でもなんとかなるんじゃない? ねぇ、夏木!」

「え、まあ、なんとかなるかもしれないな」


(別に洋一のためにそこまでしなくたっていいだろ……)


 赤石はそんな心中の言葉をかき消すように、指輪作りに取り組みだした。


「緑、こんなんでどう?」

「あ、夏木ぃ! 良い良い! 最高だよ!」


 高梨は赤石の手からシロツメクサの指輪を取り上げ、三矢に見せた。


「ねぇ、これでどう、洋一?」

「まぁ……これなら俺でも出来るかも」

「やったー! これで皆で出来るね!」


 高梨はぴょんぴょんと小躍りしながら喜ぶ。


(可愛くて優しいな、緑は……)


 赤石はぴょんぴょんと跳ねる高梨に見惚れた。


「じゃあ、皆で作りましょー!」

「「おー!」」


 赤石と三矢のやる気のなさげな声を皮切りに、三人は指輪を作った。


「出来たーーーー!」

「俺も出来た」


 三矢と高梨は指輪を作り、都合三つのシロツメクサの指輪が出来た。


「やった、やった! これ私たちでずっと持ってようよ?」

「いや、なんでだよ!」


 三矢が高梨に返答する。


「ほらほら、二人とも指輪出して!」

「はいはい」

「もう~」


 赤石と三矢は言われるがままに、出来上がった指輪を出した。


「これが私たちの友情の印、友情の指輪だーーー!」


 高梨は赤石と三矢の手を取り、上に掲げ、自分の指輪も上に掲げた。


「天よ、聞きたまえ! 私たちの友情の証なのだ! 私たちの友情はこの指輪がつぶれ、なくなるまで永遠に続くであろう!」

「それ割と簡単に枯れたりするんじゃないか?」

「もう、洋一うるさい! 水差さないでよ!」


 赤石と高梨、三矢はそれぞれシロツメクサの指輪を持った。


「じゃあ、これが私たちの友情の証ね? 皆それぞれ大切に持っておくよーに!」

「「はーい」」


 赤石はシロツメクサの指輪と冠を持ち、その日はそこで帰った。








(ふふふ…………)


 赤石は自室で、シロツメクサの指輪と冠を見ながら微笑んでいた。


「友情の証かぁ……」


 実際に赤石の家に行き、撮影していた。

 

 赤石は指輪と冠を天日干ししたのちに箱の中に入れ、大切にしまった。


(これがある限り、緑との絆は消えないんだな……)


 赤石はふふふ、と何度も微笑みながら、自室で転がっていた。







「じゃあここの答えはなんだ~、蒼井緑」

「はぁ~い」


 神奈が高梨を呼び、高梨が立ち上がった。クラスメイト全員を集めることが出来なかったので、ビデオに映る部分だけに人を配置した。


 実際の英語の教師、神奈の登場で、ビデオを見ていた生徒たちが俄かにざわつき、笑う。


「え~っと……」


 高梨がうろたえる。


(どうやら答えが分からなかったみたいだなぁ)


 赤石は高梨の後方から、hadと紙に書き、丸めて高梨に投げた。


「……ん?」


 高梨は自分に当たった紙を開き、


「答えはhadです!」


 と、言った。


「こらー、緑。お前投げられた紙広げてんの丸見えだったぞ。夏木も緑を甘やかすな、こいつは甘やかされたらキリがない」

「あ、あはははは、バレてましたか」


 高梨は頭に手をやり、ちろ、と舌を出した。


「可愛い子ぶっても駄目だからなぁ、緑」

「ちぇ~」


 そこで笑いが起きる。

 赤石と三矢、高梨の関係はクラスに知れ渡っていた。


 そして高梨が着席した後、高梨もまた紙を赤石に放り投げた。赤石は紙を拾い、広げてみる。


『恥かいちゃったじゃん、馬鹿!』


 赤石はふふ、と苦笑し、高梨を見た。


 べー、と高梨は舌を出す。


(そういうじゃじゃ馬なところもあるよな、緑は)


 赤石はくすくすと笑った。


「こらー、夏木。お前何くすくす笑ってる」

「あいてっ」


 赤石の頭に、神奈の本が乗った。


「べ、別に笑ってませんから!」

「嘘つけ~」


 そこでもクラスメイトのあははは、という笑いが起きた。







 放課後、赤石は高梨に残っておいて、と言われ、教室で高梨を待っていた。


(一体何の用事なんだろう……)


 告白か何かその類なのか、と赤石の顔は段々と熱を帯びていく。


「お待たせぇ~」


 はぁはぁと肩で息をしながら、高梨が教室に入って来た。


「いやぁ、ごめんごめん。ちょっとまだ用事終わりそうにないかも。夏木、ちょっとこれやっててくれない?」

「え、これって……?」


 高梨は春休みの課題を赤石の眼前に置いた。


「いやぁ、ちょっと春休みの課題終わってなくて、先生に呼び出されててさぁ……お願い夏木、ちょっとヒントだけでもいいから書いてくれない?」


 お願いっ! と手を合わせて頼む高梨を、赤石は断れなかった。断れるはずがなかった。赤石は学年でもトップクラスの学力を持っており、春休みの課題も春休みに入ると早々に終わらしていた。

 三人の中で唯一帰宅部であり、時間にはゆとりがあった。


「はぁ……仕方ないなぁ。じゃあ俺がやっとくよ」

「やったぁ! ありがとう夏木、大好きぃ!」


 高梨はぴょんぴょんと跳ね、赤石の手を取った。


「じゃあ、先生からの呼び出し終わったら帰って来るねぇ~」

「お、おう。行ってらっしゃ~い」


 教室を出る高梨を見送った。


「はぁ……」


 赤石は両手で顔を覆い、息を漏らした。


(可愛い……)


 高梨への想いが溢れて、止まらなかった。


(これを俺に託したってことは、洋一よりも俺の方が仲が良いからだよな……あぁ……嬉しい)

 

 赤石は、はあ、と何度も息を漏らしながら、上を向く。


 そして暫くして、ガラララと扉が開いた。高梨か、早かったな、と赤石が音のした方向に視線をやると、そこにいたのは三矢だった。


「あ……あれ、洋一、今日は一体何を……?」

「え……あ、あぁ、部活終わったからもしかしたら教室に誰かいたりすんのかなぁ、って。そしたらお前がいたってわけだ」

「あははは、なるほど」

「で、何してんだよ夏木ぃ」


 三矢は赤石の前に座り、話しかけた。


(止めろよ、今ここに居座らないでくれよ。俺は緑と約束してんだよ)


 そう言えるわけもなく、赤石は三矢と話す。


「あれ、お前春休みの宿題終わってなかったのか? え~、ちょっと意外」

「え……あの、これは……その、緑がやっとけってうるさくてさぁ」

「…………へえ」


 赤石は苦笑いをし、三矢に話す。


「じゃあ俺も一緒にやってやるかぁ! どうせ緑も帰ってくんだろ?」

「え……あ、ああ、うん」


(なんでお前も残るんだよ、お前は帰れよ。俺は緑と二人でいたいんだよ)


 そんなことを言えるはずもなく、赤石は三矢と共に高梨の課題を解き始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ