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一条 まどか





私は、(うみ)莉子(りこ)が大好きだった。


いつも可愛くてかっこよくて、憧れだった。


あの2人といつも一緒にいれるように、私は努力した。

ダイエット、メイク、習い事だって苦しくない。

自慢の2人と、肩を並べて歩けるのなら、



でも、いつからか、私にはあの2人が眩しく感じる時があった。



(あ…)



ふわり、と頬を撫でる風。

本を片手に頬杖をつく(うみ)の姿はため息をつきたくなるくらい、綺麗。

長い髪を煽られた莉子(りこ)が、慌てて髪を抑えて、(うみ)がそれを笑う。

まるで、映画のワンシーンであるかのように、その光景はキラキラしていた。


自分の感情に不器用な(うみ)は、幼馴染である私達の前ではよく笑う。

彼独特の、不器用で控えめな、あの笑い方がとても好きだった。


莉子(りこ)は、お姫様みたいに綺麗なのに、少しも鼻にかけない。

私を見下すこともなく、誰にでも分け隔てなく優しくて、かっこいい。


そんな2人が、こんな私を守っていてくれることがすごく誇らしくて、…すごく、申し訳なかった。


努力しても、2人には並べない自分がコンプレックスで、



…そんな2人の世界に、私は、入れるのだろうか。

急においてかれたように、寂しくなった。

私がいくら努力しても、2人には敵わない。


私は、お姫様にも、王子様にもなれない。



そう思うと、目の前の絵画のような世界を守りたいような、ぶち壊したいような気持ちにさせられた。



(2人とも大好きなのに、)



私は、自分の中にある気持ちが怖くて、そっと目を伏せた。

今はまだ、こんな気持ちになんて気付かないふりで。おバカな幼馴染のままで、いたい。



風にのってかすかに聞こえた、彼の声が私の胸を締め付けたことを、私は知らないふりをした。







「あ、まどか。何してんだよ」



教室の扉で佇むまどかの姿を見つけた。

お昼を食べずに待つには少し長い時間だったので、俺のおなかは遠慮せずにぐう、となく。

(うみ)がそれに呆れた顔をしながら、まどかを手招きすると彼女はようやく、教室へと足をふみいれた。



「何かあったのか?」



まどかの表情がくらい。

何かトラブルでもあったのか、と俺が心配するより先に、(うみ)がまるで子供をあやすような様子でまどかの顔を覗き込んだ。


…なんて言うか、(うみ)はさりげなくこういうことが出来る奴なのだ。


幼馴染で慣れていなければ、これは完全に惚れる。



「…ううん!なんでもない!」



幼馴染のまどかもやはり、そんな(うみ)の行動には慣れているようで気にした様子もなく、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。

おなか空いてただけ!というまどかの言葉はどこか不自然ではあったが、話したくないこともあるだろう、と追求はしないことにした。



「何してんの、早くお昼食べよ!」



お前を待ってたんだよ、と(うみ)がまどかを小突けば、まどかは嬉しそうに笑った。

もう、いつも通りのまどかだった。

俺はそれに安堵して、早速自分のお昼を広げる。



「どうだった、告白?」

「うーん、イケメン?」



断る前提で行ったのだから、結果は言われなくてもわかっていた。

だから、俺の言葉は特に深い意味はなかったのだが、聞かれたかったのか、まどかはパッと顔を輝かせた。

にや、っと笑いながら彼女が広げたお弁当はいつもながらとても可愛らしい。まどかはとても料理上手で、お弁当は自分で作っているらしく、女の子らしい華やかな色合いをしている。



(うみ)とどっちがイケメン?」

「そりゃあ、(うみ)だけど」

「デスヨネー」



俺とまどかは示し合わせたように、笑った。

このテンポのいい会話が気持ちいい。

これは俺とまどかのいつものやり取りだった。

そうすると、(うみ)が恥ずかしそうに視線を外して、興味のないふりをしているのを見るのがとても面白かったからだ。


案の定、(うみ)はまるで聞こえてないかのように興味のないふりをして、コンビニの惣菜パンを開封した。

(うみ)のお昼はいつもコンビニの惣菜パンだった。

高校生にしては少ない量なので、だからそんな細いんだ、と散々お説教した記憶がある。



(うみ)で慣れちゃうと大変なんだよね」



まどかがため息混じりにそう呟く。

俺はそれに激しく同意して、おにぎりにかじりついた。


俺の弁当は、莉子(りこ)のお母さんがいつも手作りしてくれる特製弁当だ。

女の子らしい色合いの、可愛いお弁当だが、その量も可愛らしいくらいしかない。

だから、俺は内緒でおにぎりを追加購入している。

それで、太らないのは莉子(りこ)の体質がそういう体質だからなのだろう。

まどかが聞いたら羨ましがる体質だ。



「どうしても(うみ)と比べちゃうよね」

「うーん、なんていうか耐性が出来るよな」



俺の人生で、イケメン、という種族と出会う機会はかなり少なかった。

テレビではよく整った顔立ちの俳優は見かけるものの、テレビの中は別の世界だったし、俺には関係のない世界だった。

最早、絶滅してるんじゃないかってくらいのイケメン族だったが、せっかく出会えても、こうして(うみ)と幼馴染をやっているとイケメン水準が跳ね上がってしまうのだ。


よく言うと、イケメンに慣れてしまって耐性がついた。


悪くいうと、(うみ)以上のイケメンじゃないと比べものにならなくなった。




「えー、でもどうしよ、(うみ)に彼女とか出来るの許せなーい!」

「放っとけよ」



まどかがけらけら笑う。

そして、また俺はふと、違和感を感じた。


(うみ)はとても、…そう、嫉妬してしまうほどいい男だ。

まどかの時もそうだが、(うみ)も告白されるような場面を見たことがない。

こんなにいい男なのに、それはおかしい。



(俺が毎日のように告白されていることがおかしいのか…?)



前の俺にモテ期というものが来たことがないから、よくわからないが、こんなに告白ラッシュが続くものなのだろうか。

こんなに都合よく、まるで漫画みたいに。


思えば、まどかや(うみ)の存在だって現実ではありえないほど出来すぎた設定だ。


こんな、美男美女だけで構成された幼馴染なんているか?



(…まさか、な…)



一瞬浮かんだ考えを俺はすぐに振り払う。


それこそ非現実的な考えだった。


俺はそれ以上を考えないようにして、お弁当をかきこんだ。












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