発覚した気持ち
いちごみるくを口に含む。
柔らかな甘みが広がって、気分を落ち着かせてくれた。
好きな飲み物とか、タイミングとか。
まるで超能力者みたいに、お見通しで。
欲しいときに欲しいものをくれるのは、やっぱり海だった。
だから、取られたくなくて。
ずっと3人で笑い合う、そんな関係のままでいたくて、変わっていくのを恐れた。
「…こんなところにいた」
ふわり、と春の風がふく。
気持ちいい風にのって、気持ちいい声色がふってきた。
見て確認するまでもない、この声は海の声だ。
まどかが駆け込んだ裏庭は、告白や呼び出しなどに使われる人気のスポットだった。
その人気のひとつに普段は人が寄り付かないということと木陰が豊富だというところがある。
その木陰の下のひとつに身を隠すように座っていたまどかを見つけたのは…やはり、海だった。
どこにいたって、何をしていたって、こうやって見つけてくれるのだ。
「…ごめんなさい」
「…わかってるよ」
海はまどかの隣に腰をおろして、ため息をついた。
…そう、海はわかってる。
まどかが言葉にせずとも、まどかの行動が誰の為であるか、何を思っての事であるのか。
だから、謝らずにはいられなかった。
「俺こそ、ごめん」
海が慰めるように、まどかの頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
泣きそうなのは、まどかだけじゃないことを知っている。
だから、まどかは黙ってそれを受け入れた。
その手は、やっぱり少し骨っぽくて、固いけど
大好きな、手だった。
前から感じてた違和感だった。
なんとなく、わかっていたのかもしれない。
俺は、まどかの気持ちを見て見ぬふりをしていた。
その結果が、これだ。
(…まどかは、海を好きなんだ)
あんなイケメンと美少女、周りが放っておくはずがないと思ってた。
みんな好きになるに決まってる、と。
(そりゃ…好きになるよな、)
あんなにイケメンで、気心知れてて、いい奴で…そんな海と1番近くにいたまどかが、海を好きにならないはずがない。
まどかに今までそういう話がなかったのは、まどか本人が拒絶していたからだ。
海との、関係を壊したくないと、望んでいたからだ。
「莉子ちゃんは追いかけなくていいの?」
ため息まじりの貴之の声に、答えることは出来なかった。
俺が、追いかけてどうするというんだ。
俺はあの2人の間には入れない。
まどかの心には、入れないんだ。
ぐらぐらと、足元が揺れている気がした。
俺の居場所は、どこなんだろう。
「1番可哀想なのは莉子ちゃんじゃないと思うけどね」
俺に追い打ちをかけるように、貴之が呟く。
そんな事は、わかっていた。
まどかの心を傷つけた。
いや、今まで、俺の無神経な言葉がどれだけまどかを傷つけてきたのだろう。
そう思うと、苦しくて涙が出そうだった。
「…わかってる、」
まどかに謝らなければいけない。
でも、どうしていいかわからなかった。
「…何にも、わかってないよ」
貴之の手が伸びてきて、俺の頭を撫でる。
海にやるのとは違う、優しく、丁寧な手つきだった。
「みんな、莉子ちゃんが好きなんだよ」
何もかもを理解しているような、貴之の声がなんだか遠くに聞こえた。
その言葉の意味を、この時の俺は知らない。




