プロローグ
特別な人間になりたいと思っていた。
魔王を倒す勇者。
莫大な力を持った魔法使い。
超能力者。
なんでもいい。
ある日突然、特別な力に目覚めるような、今の日常をぶち壊してくれる超展開を望んでいた。
俺は、ただただ、選ばれた、特別な人間になりたかっただけだった。
そんな考えは浅はかだったと、思った時には手遅れで。
一個人に都合のいい超展開を起こしてくれるほど、神様というやつは善意にあふれた存在ではないようだった。
「俺と、付き合って下さい」
「ひえっ…」
俺は、見知らぬ男子からご丁寧に頭を下げられて思わず声をあげる。
スッと差し出された右手に怖気づいて、そのまま勢いよく後ろに後退れば、その動きに合わせて高校生にしては発達し過ぎた胸が若干の痛みを伴って跳ねた。
おっぱいって大きいと痛いのね、初めて知ったわ。
今までの俺には縁がなかったであろう。
この告白という一大イベント。
このイベントを俺がどれだけ夢見てきたか。
それが、まさかこんな形でやってくるなんて。
「あの、さ」
キラキラと輝く夕陽が、いつもの校舎にロマンチックな陰影をつけて、独特の空気感を演出する。
緊張で体を固くさせている男子生徒には申し訳ないのだか、俺はそんなロマンチックな雰囲気に流される情緒を持ち合わせていなかった。
これが可愛い女の子なら別なのだが。
「なんていうか、言いづらいんだけど」
どうしていいかわからず視線を彷徨わせれば、風にひらひら舞うスカートの裾が見えた。
こういう時、女子はスカートの裾を抑えるんだっけ?
女子高生歴の短い俺は、どうすればいいか迷った挙句、スカートの裾を握りしめて叫んだ。
こんなことを主張するのは少し恥ずかしいけれど、実に素直な俺の気持ちである。
「俺…女の子が好きだから…‼︎‼︎」
こんな青春望んでない!〜今日から俺は美少女です〜




