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ワールド・ウイルス  作者: AT
ルート1 バスタータンジョウ!
4/50

オレニハニチジョウナンテナイ

 昨日の事が嘘のように、俺は普通に学校へ行く。教室に入るとそこは変わらない日常、変わらない苦痛だ。担当の教師が来ると、生徒はダラダラと座り出す。


「急だが、転校生を紹介するぞ」


「転校生?」


 まさかこの急のタイミング。昔から漫画でよくあるシュチュエーション。転校生は先ほど出会った女の子パターンだな。親父め、俺に黙っておいて驚かせる作戦だった様だが、すぐに気付いたさ。俺が家で何もしていないと思っていたなら大間違いだ。俺は勉強、料理、掃除、漫画、全て学んだ。これは漫画でよくある展開だ。


「それじゃあ入って自己紹介して〜」


 教師に呼ばれて入ってきたのはミカだ。予想通り。残念だが俺は驚きはしないぞ。


「外国人?」

「うわ、凄え美人」

「ちょー可愛いんだけど」


 周りの好感度は上々。だがあいつはそんなに喋らなさそうだ。上手くやっていけるのか。最初の自己紹介が大事なんだぞ。


「ミカ=ノーア。陽夜ようや君の婚約者です」


 オワッタ。俺の方がオワッタ。


「え、ええー!?」

「陽夜って、確かこの前の…」

「あいつ婚約者がいたのか?」

「クッソ羨ましい!」

「マジかよ?」

「静坂さん、大丈夫?」


 案の定、教室が騒ぎ出してしまった。教師の静かにしろと言う声など、誰も聞きゃしない。とにかく何とかしてミカの発言を撤回しないと。


「待て! 彼女は遠い親戚だ。外人さんで日本語が上手く使えなくて、婚約者の意味を間違えてるんだ」


 我ながら上手く言い逃れた。クラスを静める。だがミカはスラスラと答えた。


「親戚は、血縁や婚姻によって結びつきのある人。婚約者とは、結婚の約束をした人の事。そのくらい覚えてます」


 ずいぶんと日本語が達者なことで。でも今その知恵を使うと俺が困るんだよ。分かってくれ。結果変わらず、そして昼休み。この噂はネットに上がり広まった。教室に居場所がない俺はただただ廊下を歩いてぶらつく。どっかに一人で居たら、バカな教師は悪い事してないかと質問され、皆と仲良くしなさいと無理な発言をする。だからぶらつくんだ。それなのにあの女、ミカはどこまでもついて来る。


「俺について来るな」


「どうして?」


 外国から来たのなら、今の状況がわからないのか。それともただ感が鈍いのか。どっちにしろ面倒な事が大きくなる前に注意した方がいいのか。


「あーもう! いいか! 今やネットになんでも載るんだ。この学校にニュースと言って、何か起こったらすぐに書かれる。お前のせいで俺達の関係は全校に広まってしまったんだぞ!」


「別に構わない。貴方に近付く者はいなくなるんだから」


 ダメだ。説明しても意味がなさそうだ。なんでこいつは俺の事をそんなに……そんなの聞ける訳ない。


「お前…そんなに喋れたのか?」


「初めてだったから人見知りしてただけ。あと貴方のお父さん仮面をつけてて、ちょっと怖かったから」


「確かに見た目変だけど、あんなの別に怖くねえよ」


「ギャップが違いすぎるから、私は驚いた」


 確かにそうだが、あんたに言われたくないよ。


「誰かと思ったら、久しぶりだなぁ」


 その声に俺は緊張が走った。聞いた事ある声と喋り方。声の方を向くと、あの男が歩いて来てる。


「……時画ときが……退院……したのか?」


「……したのか? まるで他人事だなぁ。お前はなぜか、停学で済んだらしいなぁ。おかしな話だなぁ? この傷はだあれがつけてたんでしょう?」


「その傷以上に、日影ひかげを苦しめたのを誰だ!!」


「日影? 誰だっけぇ?」


「て、てめえ……」


 わざとらしくとぼけやがって。時画はあいつを何とも思っていないんだ。


「俺がいなくて平和になると思ったかぁ? この借りは返させてもらうから、覚悟しておけ」


「お前こそ、これ以上やるなら二度と退院出来なくなるぞ」


 時画は鼻で笑うと、すれ違う時にわざと肩をぶつけて来た。近くにいたミカは時画に睨まれたが、絡まれずに歩いて行った。


「……誰なのあの人?」


 ミカは気になるだろうが、俺は答えなくない。


「お前には関係無い」


「関係なく無い。陽夜が関わってるなら私も関わる」


「関係無いと言っただろ! 何度も言わせるな!」


 つい怒鳴ってしまった。ミカは何も知らないのに、何やってんだ俺は。ミカも黙り込んでしまった。すると俺のケータイが鳴り出す。番号は誰にも教えてない。ケータイには(大好きなパーパ)と書いてある。後で消そう。


『ヨー!ヨー! 親父だヨ!』


「切るぞ」


『ちょちょ、ちょっと待って! ミカもそこにいるね? 二人共、今から迎えを寄越すから家に帰ってくれ。バスターの出番だ』


「……チッ」


『息子が舌打ちしてる…怖いよ〜』


「うるさい……俺らまだ午後の授業があるのに帰れねえよ」


『別にいいだろう? 頭良いんだからも〜』


「親が言うセリフかよ……分かった。すぐに帰るよ」


 どうせ学校にはいたくなかったから、ちょうどいい。すぐに教師に連絡して帰るか。別に悪い事はしてないんだ。


「………」


 俺は気付かなかった。俺達の行動をずっと覗いていた者に。


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