【1章】異変01
―どうか道を間違えませんように…
一章 異変
「どうしてもアストラを調略したいなら私たちを薙ぎ倒しなさい。
死ぬ勇気がない奴は相手しないわ! 」
アストラ国境付近、精鋭部隊第一青年部隊隊長ベルナデット・ファネルの力強い声が響く。
その真正面で国旗を掲げるのは三年前に大国セレドリーナを手の中に収めたアルヴァの兵士たちであった。
「退きな、大人しく国を明け渡せ。
さもないとお前たち二人の首が飛ぶぞ。」
この大軍の大将であろうか、ベルナデットの挑発に挑発を畳み掛ける。
「青年部隊と侮るな! いい、セヴラン。10分で片を付けるわよ。」
「りょーかい、こんな奴ら俺たちだけで充分だよ。」
ベルナデットは腰の鞘から短剣を、セヴランは懐から自身の白い血液が入った瓶を取り出し、左手の上に弓を形成する。
「準備はいいわ、掛かってきなさい! 」
ベルナデットの掛け声とアルヴァの大将の掛け声が重なってアストラ国境での戦闘が始まる。
青年部隊二人に対してアルヴァは七百ほどの軍人をここに寄越している。
数だけでみると圧倒的にアストラは不利である。
しかし、発足から三年の月日を経た第一青年部隊の二人は、下っ端士官だったあの時と比べようもないほどの戦果を挙げつづけてきた。
国を挙げての徴兵制度でかき集められてきた軍人たちとは格違いの実力を持っている。
後衛であるセヴランと前衛のベルナデットのコンビネーションで押し寄せてきたアルヴァ軍の数を減らしていく。
「もっと本気で来なさいな! 」
兵士たちを薙ぎ倒し、大群の一番後ろで指揮をしているアルヴァの大将のもとにベルナデットが降り立つ。彼女の右手には何人もの兵士の血が混じって滴る短剣が妖艶に光る。
「私たちを侮ったこと、詫びて死になさい。」