【夢幻】潔血の忌子08
再会を喜ぶ彼らにもメサイアからこの話がされる。
「そうだったんですか。
だから私たちが急に精鋭だなんて畏れ多い部隊に配属されたんですね。
ということは、古典的な自衛を行使しなければいけないような国外体制になってしまったということなんでしょうか。」
ベルナデットがそう言うと、メサイアも真剣な面持ちで言葉を返す。
「隣国のセレドリーナ王国の王室が分裂し、このアストラが成立したという話は二人とも知っていると思うが、最近その分裂元のセレドリーナ派がアルヴァという国に下克上されたんだ。
そして事実上アルヴァに占領されてしまったセレドリーナに新たな元帥が就任してからというものの、セレドリーナの周りの小国が武力行使によって侵略、吸収されていっているんだよ。
今度はわが国の番ではないかというガブリエーレの思し召しで今回【忌子】を中心とした精鋭部隊発足に至ったんだ。」
残念ながら物事の本質というものは組織の隅々にまで行き渡らないというのが常である。
組織が枝分かれすればするほどそれは浮き彫りになってくるもので、下級の兵士たちはどうして自分が戦っているかなんて分かっていない。
お国を守るためという大義名分的なイデオロギーによってコントロールされているというのが実態である。
セヴランとベルナデットも同じようにどうして自分がここにいて戦っているかなんて普段考えもしなかった。
周りではこんなにも大きなことが動いているのに。
「責任重大なんだな…。俺なんかに務まるのかな? 」
「セヴちゃん大丈夫だよ。私たちにはできることをやるしかないんだからそんなに責任を感じていたらできることもできなくなっちゃうよ? 」
やり取りを見たメサイアはこれまでの重い空気を一転させる。
「セヴランのことはベルに任せておけば大丈夫だな。
それで事務連絡をなんだが、精鋭部隊の正式な発足は一週間後になる。
それまでにここに私物の移動を終わらせておくことと、戦闘のコンビネーションを合わせておくこと、そして第二部隊との顔合わせをしておくことがこの一週間の君たちの任務になるだろう。
詳しくはまた司令部の方から伝達がある。
今日はゆっくり休んで明日からまた軍のために従事するように。私からは以上だ。」
二人はメサイアに向かって敬礼をする。メサイアも二人に敬礼をしてすぐに部屋を出て行く。
「改めてだけど一緒の部隊に配属されたベルナデット・ファネル大尉です。
任務の時以外は堅苦しいことはなし、昔みたいにベルって呼んでくれていいからね。」
「同じく第一部隊に配属されたセヴラン・アクロイド中尉です。
同い年の女の子とか久しぶりすぎてめちゃくちゃ緊張してるけど、また一緒にいれて…いや、何でもない。
よろしくな、ベル。」
改めて彼らは握手を交わす。
実に七年ぶりの再会、互いに成長し、こうして再会を果たしたのだった。
これは偶然のように見えて、実は必然の出来事だったのだろうか。
彼らが出会ってもう三年ほどの月日が経つことになるのだが、アストラの対外情勢は日に日に悪化する一方だ。
―そしてアストラ暦六二七年九月二十七日の今日、事態は急速に動き出す。