【夢幻】潔血の忌子07
「あの、急に変なやつだと思われちゃうと思うんですけど…」
彼女はセヴランの顔を数秒間凝視する。
そのあとに彼女は少し状況の整理をするためにぶつぶつと独り言を言い始める。
セヴランがどうしたんですか? と言いかけた時、先に彼女が口を開いた。
「本当に人違いだったら恥ずかしいんですけど、セヴちゃん、だよね? 」
「え、はい、そうですけど…。どうして僕の名前を? 」
「青年班の中でも人のいい士官っていうので有名だけど、そうじゃなくって。
まだ小さい頃にセヴちゃんに助けてもらったことがあるんだ。
そのお礼にセヴちゃんに私の紫のリボンとお揃いの赤いリボンをあげたんだけど…。覚えてないかな? 」
彼女の髪にはおそらく同じものだと思われる紫のリボンが編みこまれている。
彼も同じように銀色の髪に赤いリボンを括り付けている。
確かにこの赤いリボンは昔大事な友達にもらった大切なものだ。
昔このリボンをもらった……
「ベルナデット! まさかベルなのか? 」
目の前の彼女はうなずいてセヴランの手を優しく握る。
「覚えていてくれたのね。
なんか大人っぽくなっちゃったから最初全然分からなかったけど、そのリボンでセヴちゃんだって分かったの。まだ着けていてくれたんだ! 」
「お前こそ全然違うから分からなかったよ。
ほんとに久しぶりだな!
あのあとベルがどうしているかなんて知らなかったけど、この軍に配属されてたんだな。」
ベルナデット・ファネル
彼女は【リュカ】と呼ばれるアストラに昔から定住していた先住民の血筋を持っている。
移民との戦いにおいて絶滅に近い民族ではあるが、ベルナデットは本家直系の血筋を持ち、特殊な能力を持っている。
ベルナデットの能力とセヴランの体質、そしてセヴランの二人の兄が持つ能力、ベルナデットには【女王蜂】、セヴランには【潔血】、二人の兄には【夢幻】、【朔望】とそれぞれ名前をつけた。メサイア自身にもこういった能力があり、彼の能力には【蝶乱】という名前がついている。
彼ら六人を総称して国外からは忌みの力の使い手、【忌子】と言われている。
今回の精鋭部隊発足のもうひとつの理由がこの【忌子】たちを集め、アストラの古典的な自衛を絶対的なものにするということであった