【夢幻】潔血の忌子06
メサイアが内開きのドアを開けると、中からドン、と鈍い音がする。
何かに当たったような音だったので、彼は部屋に入って辺りを見回す。
するとメサイアの足元でちょっとした呻き声が漏れる。
「メサイア室長、ノックくらいお願いしますよ…。」
額を押さえてよろよろと立ち上がるその人は、栗色の髪に黄緑色の瞳をした美少女だった。
ノックをせずにそのまま指紋認証でドアを開けたため、ドア付近にいた彼女に激突してしまったらしい。
「まさかタイミングよく君がここにいるとは思わなかったからね。怪我はないか? 」
「はい、とりあえずは大丈夫そうです。まだ額がひりひりはしますけど…。」
ドアが激突したと思われる箇所が少し赤くなってしまっているが、当の本人は額をさすりながら笑みを浮かべる。
「申し訳ないです。
あ、立ち話もどうかと思いますし中に入りましょうか。
メサイア室長、ご案内いたしますよ。」
「ああ、この部屋の配置はすべて直近の部下たちに任せてしまったからね。
見物ついでに私も寄っていくことにするか。」
おそらく彼女がメサイアの言う精鋭部隊のメンバーなのだろうが、第一印象は実力のあるように見えない、だなんてセヴランは少し失礼なことを思っていた。
こんな美少女、青年班の中で噂にならないはずがないし、本当のところはどうなんだろうか。
セヴランだけが情報に取り残される形となってしまった。
彼女がメサイアとセヴランを連れて進んでいった先には広い居住スペースとなっていた。
「私が言うのもなんだか変な気分ですがどうぞ座ってください。」
「あ、ありがとうございます。」
セヴランとメサイアは同じソファーに腰掛け、それと向かい合うようにして彼女は二人掛けのソファーの真ん中に座る。
あらかじめ用意したあったお茶を彼女が淹れ、セヴランとメサイア、そして彼女自身の前に置く。
そして彼女はそのお茶に少し口をつけてから目の前にいるセヴランの様子を伺う。